石油備蓄を放出しても「ガソリン価格は下がらない」 半年後の家計負担を専門家が試算【きょうの深掘り】
イランでの戦闘勃発後、 レギュラーガソリンの全国平均小売価格が、一時1リットルあたり190.8円と過去最高を記録しました。政府は石油備蓄の放出や補助金支給で対応していますが、価格は今後どうなるのでしょうか。野村総合研究所の木内登英さんと”深掘り”します。
先月28日、イランで戦闘が勃発しました。その時点で1リットルあたり157円台で推移していたガソリンの全国平均小売価格が急騰。今月16日時点で1リットルあたり190.8円と、過去最高値を記録しました。
これを受け、政府は段階的な対応策を打ちます。
・16日:石油の民間備蓄を放出
・19日:ガソリン補助金の支給を開始
・26日:石油国家備蓄を放出
・今月中:産油国共同備蓄を放出予定
補助金の開始した後、23日時点での価格は1リットルあたり177.7円まで下がりました。それでも「高い」と感じる方は多いのではないでしょうか。スタジオのゲストも、「燃費の少し悪い大きい車(ハイオク)に乗っているので、満タン入れると1回2万円は超える」と実感を語っていました。
そもそも日本の石油備蓄には3種類あります。
・民間備蓄(1972年~):民間の石油会社が管理。オイルショックを受けた石油備蓄法の制定(1975年)以降は義務化。
・国家備蓄(1978年~):全国10カ所の基地などで政府が管理。
・産油国共同備蓄(2009年~):サウジアラビアやUAE、クウェートなどの国営石油会社に日本国内のタンクを貸与し、貯蔵。平時はアジア各国へ拠点として活用されている。有事の際は、日本が優先的に購入できる仕組み。
3種類のうち、なぜ民間備蓄が最初に放出されたのでしょうか。木内さんは「民間備蓄には、すでにガソリンなどに精製されたものが含まれているため」と説明します。
木内さん
「国家備蓄と産油国共同備蓄は原油の形で貯蔵しています。一方、民間備蓄にはすでにガソリンなどに精製された石油製品が含まれています。国家備蓄は石油会社に売って精製してもらう必要がある。それに時間がかかるため、まず民間備蓄から2週間程度先に放出しました。その後に国家備蓄、産油国共同備蓄を放出するという順番になりました」
では、国家備蓄の放出でガソリン価格は下がるのでしょうか。木内さんは「ガソリン価格は原油の国際価格で決まるため、備蓄放出では下がらない」といいます。
ガソリンの店頭価格が決まるまでの流れをみていきます。そもそも原油の価格は国際価格でおおよそ決められています。そこから元売り会社による輸入・精製・保管などのコスト、さらにガソリンスタンドでの人件費や光熱費などが積み上げられ、ガソリンの店頭価格が決まります。
木内さん
「ガソリンはコストを積み上げて価格を決める方式です。政府が原油備蓄を放出してガソリンの供給が増えても、ガソリン価格がどんどん下がるということはありません。『ガソリンがなくなるのではないか』という不安で一時的に価格が上がっていたところは落ち着くと思いますが、基本的には需給で決まっていないので、備蓄放出だけで価格は下がりません」
実際、WTI=原油先物取引価格は、戦闘勃発前の先月27日は66ドル台だったのが、今月26日時点で93ドル台に跳ね上がっています。国際価格が上がっている以上、備蓄放出だけでは価格を抑えることはできません。
そこで政府が打った手が「補助金」です。1リットルあたり170円程度に価格を抑えるため、元売り会社に補助金を支給する仕組みです。今月19日からは1リットルあたり30.2円で開始したのが、26日からは48.1円に補助額が引き上げられました。
この 補助金がなければ、価格は1リットルあたり220円程度になっていたかもしれません。しかし、補助金にも財源の限りがあります。
現在の財源は、専用の基金が約2800億円。さらに今月24日、長期化を見据えて予備費から新たに約8000億円が追加されました。ただこの財源、いつまでもつのでしょうか。木内さんは下記のように試算します。
・30.2円/Lの補助を続けた場合:7月上旬ごろまで
・48.1円/Lの補助を続けた場合:6月上旬ごろまで
財源が底をついたとしても、新年度予算の予備費や補正予算で補うことは可能です。しかし木内さんは、「国民のお金をどんどん使い続けるのは無理がある。どこかの時点で補助金を減らし、例えば180円や190円程度まで消費者に負担してもらうような見直しが行われるのではないか」とみています。
1973年の第1次オイルショックでは、第4次中東戦争をきっかけに国際原油価格が3カ月で約4倍に高騰。日曜日の自動車利用自粛、ネオンなどの電力利用自粛、深夜帯のテレビ放送停止といった規制が行われました。
現在の状況について、IEA(国際エネルギー機関)は「過去のオイルショックよりも深刻」と指摘。木内さんは「この状態が2カ月ほど続けば、規制を導入する可能性もある」と警告しています。
こうした中、今月24日、元売り会社が自民党の会議で需要を抑制する対策を例示しました。内容は、「在宅勤務の推奨」「自家用車の利用頻度を抑えること」「高速道路の速度制限を10キロ引き下げること」などです。
27日には運送業界3団体も政府に対し、「燃料価格の高騰で経営が厳しい」「軽油の安定確保に向けた環境整備を」と強く訴えました。
このままホルムズ海峡の封鎖が続けば、7月にも石油製品の供給制限が起こる可能性があると指摘されています。
木内さんが試算した「半年後の家計負担」を2つのケースで見てみましょう。
ケース1:ホルムズ海峡が封鎖されなくても原油輸送の支障が長期化(原油価格は1バレル87ドル想定)
・電気料金(2人以上世帯):半年後 3.5%増(月あたり1万3206円→1万3668円)
・卵(10個入り1パック):半年後 3.1%増(313円→323円)
・家庭用洗剤(1kgあたり):半年後 7.6%増(521円→561円)
・物価上昇による負担総額(2人以上世帯):半年後 1万8840円増
ケース2:ホルムズ海峡が完全封鎖(原油価格は1バレル140ドル想定)
・電気料金(2人以上世帯):半年後12.8%増(月あたり1万3206円→1万5489円)
・卵(10個入り1パック):半年後11.3%増(313円→348円)
・家庭用洗剤(1kgあたり):半年後27.9%増(521円→669円)
・物価上昇による負担総額(2人以上世帯):半年後 2万1478円増
電気料金は火力発電の燃料コスト上昇が反映され、家庭用洗剤は原油から作られるナフサ、さらにナフサから作られるエチレンを原材料とするため影響を受けます。卵も養鶏場の電気代や輸送コスト、プラスチックパックのコスト上昇が価格に波及します。
木内さんは「家庭用洗剤などは半年を待たず、もっと早く上がる可能性もある」と話します。
最後に木内さんは、今後の対応について、「政府は中東以外からの原油調達を増やすこと。そしてわれわれ消費者はエネルギーをできるだけ効率的に使い、節約を心がけることが求められる」と述べました。
すぐに大きな制限が始まるわけではありませんが、どんな状況になっても備えられるよう、さまざまなシミュレーションをしておく必要がありそうです。
(「newsおかえり」2026年3月28日放送分より)
4件のコメント
今はガソリンは節約しなければならない状況。備蓄がなくなったらどうするの?補助金(貴重な税金)使ってガソリンの消費を増やす(ガソリン価格が安くなるとやはり消費は増える)のは愚策でしかない。
色々聞くとアラスカからの輸入が1番現実的ですね。アラスカの港に小さいタンカーを入れて沖で大型タンカーに載せ替えて運ぶしか無いです。さらに持ってきてからの精製にも手間が掛かるみたいですけど、色々考えて何とか使える様にして欲しい。
国債を増やして、欲を満たす和人は少子老人化。
国債の信用度維持には、数十万人/年の移民が必要。
既に、日本はハワイ王国と同じ運命。
日本を潰す 計画ですよ