命を守る津波避難の選択肢…海水浴場での警報「津波フラッグ」の重要性と地域の実情に合わせて広がる「車避難」の最新ルール【津波からの避難を考える】
青森県で最大震度6強を観測した6月の地震から1週間が過ぎました。全国各地で大きな地震が起き、備えの重要性が高まるなか、津波警報の伝え方や、津波避難の方法を見直す動きが出ています。
地震多発で考える津波避難
6月26日に海開きした「おたるドリームビーチ」。ライフセーバーが、海に向かって大きな旗を振りました。「津波フラッグ」です。
「津波の危険」を視覚的に知らせる旗で、津波に関する警報・注意報が発表された時に、沖にいる海水浴客や、聴覚に障害がある人に知らせます。
ライフセーバー(デモンストレーション)
「(逃げながら)逃げるぞ」
札幌管区気象台 浦谷純平 地震津波対策調整官
「この津波フラッグを見かけましたら、大きな声で津波の危険を知らせながら避難してほしい」
スマホが使えない沖では「緊急地震速報」も「津波の情報」も入りません。
地震が増えるなか、気象台などが積極的な活用を進め、道内20の自治体で導入されていますが…
海を訪れた人
「津波フラッグはらなかったです。泳ぎに来た人などは知っておかないと、何をやってんだろう?という感じになってしまう」
2025年7月、ロシア・カムチャツカ半島沖で起きたマグニチュード8.7の巨大地震では、日本海側に津波注意報が発表。
ドリームビーチでは「津波フラッグ」が振られ、海水浴客の避難に役立ちました。
札幌管区気象台 浦谷純平 地震津波対策調整官
「まだまだ認知度は低いと思っておりまして、これから上げてまいりたい」
各地で相次ぐ大きな地震。見直される「津波避難」をもうひとホリします。
見直される「車避難」と課題
防災無線(2025年7月 浦河町)
「海岸や河口には近づかないようにしてください」
日高地方の浦河町です。去年7月以降、これまでに3度「津波警報」が出されました。警報のたびに、町内で発生するのが…
HBC浦河福井秀一カメラマン(4月20日)
「町民の方が車で続々と押し寄せています」
道路の渋滞です。浦河町は、原則として徒歩で避難することを勧めていますが、多くの町民が、車を使うことが原因です。
浦河町 土井晋輔さん
「きれいに(車が道を)上がれるうちはいいが、(坂の)入り口がどんどん詰まり(左折で)曲がる車が列を作ると、こっちの車は入れないので…」
浦河町で会社を経営する、土井晋輔さんです。
避難の原則は徒歩と知りつつ、津波警報が発表された3回とも、海岸近くに住む高齢の両親を連れて車で避難しました。
浦河町 土井晋輔さん
「両親とも1回、足を手術しているので、歩くとなると困難、(避難が)数分遅れると命に関わるので、どうしても車を使わざるをえない」
岡田純ディレクター
「津波の避難に対応した避難所であるスポーツセンターまで徒歩で避難する場合、この坂道を歩いて登って行くことになります」
2025年12月の津波警報では、第1波が到達した後も渋滞が続き、緊急車両の通行に支障をきたす恐れがありました。
課題を受けて、浦河町は今年3月、地域防災計画を改定しました。
避難について「原則は徒歩」は変わりませんが、支援が必要な「高齢者や障害がある人」と「避難所までの距離が相当ある場合」は「車での避難」を明確にしました。
浦河町総務課危機管理係 大山晃係長
「車で避難する人の範囲を明確にすることで避難遅れを最小化する目的で改定しております。障害者や高齢者など自動車でしか避難できない人々を助けることに繋がりますので、住民も徒歩避難することで、渋滞に巻き込まれるリスクをなくせるため、今一度、徒歩避難を考えていただきたい」
「車避難」の範囲を明確化することで、「避難遅れ」を最小化するねらいがあります。
対象の町民にとっては安心材料ですが、ほかの町民も車は避難の選択肢として、持っておきたい手段です。
浦河町 土井晋一さん
「徒歩と車の『すみ分け』できればいいが、実際命を守ることが大事になって、1分1秒争うとなると、やっぱり車を使ってしまうだろう。夏ならまだしも、冬になったら車避難に頼ってしまう」
見直される「車避難」と課題
堀啓知キャスター
道内、この1年で津波警報3回出てますけれども、そのたびに我々もこう緊急放送しますけども、情報カメラ見たときにじわじわ渋滞が発生する、実際毎回起きてるんですけども。そのお気持ち本当によく分かるんですが、一方でその渋滞でかえって避難が遅れるリスクがあるというのも、これ、大きな課題だってことですね。
堀内大輝キャスター
道内で「車避難」というのを避難計画に盛り込んでいる自治体、他にもあるんです。
道南の福島町は防災計画で「原則は徒歩」としつつも、自力で避難できない方などは車避難を推奨しています。
道東の浜中町は道総研(北海道立総合研究機構)と協力して、徒歩と車の津波避難のシミュレーションをしまして、地区によって車の避難ルートを決めています。
「この道を通って向かいましょう」ということですね。2021年に完成した役所の新しい庁舎は高台に作られていて、町民の車避難を想定した駐車スペースも、広いところ、確保しています。
堀キャスター
原則は徒歩ということなんですけれども、地域の自治の実情によって車避難を認める町もありますので、これは、皆さんが住んでるお住まいの自治体がどういう対応を想定しているのかっていうことはちょっと確認したほうがいいですね。
堀内キャスター
そうですね。せっかく自治体がそうやって定めていても、それぞれの頭に入っていなければ行動に移せないってことになりますからね。
普段とは違う災害時のその車の避難について、防災が専門の日本赤十字北海道看護大学の根本教授に聞いています。
その車避難の「課題」なんですが、まず行政側の課題として2つ。まず1つが、住民としっかり討議をして理解を得る場を作ること。
それから2つ目が、実際にその車の避難を想定した防災の訓練を実際にやってみましょうというところです。
それから住民側の課題としても2つ。1つ目が、道路が液状化したり歩行者が多くいたりして、普段とは同じ状態ではないということをまず想定。
堀キャスター
そもそも道路が陥没してるとか、そういうこともあり得るわけですよね。
堀内キャスター
途中で車を放棄して高台に上がっていかなければならないってことも十分あり得ますから、この時は必ず皆さん、車の鍵はつけた状態で、残しておいてくださいってことです。
それからもう1つが、避難の際に支援される人と支援する人との理解、それから訓練を事前にすることが重要だと。やっぱり課題が多いっていうことですよね。
そして、その「津波型」災害への備えなんですが、住民の皆さんはまず、適切な情報を受信して情報を得たら自分の避難のスイッチ、これをオンにするということが大事だと言います。
やっぱり日頃から「想定外」を少なくして、すぐに行動が起こせるように、もう「津波避難は逃げるが勝ち」、これを覚えておいてほしいという、ことでした。
コメンテーター田村次郎さん
もう本当に、もうそれぞれが、もうちゃんとこういった避難のことを認識しておく必要もありますし、一方本当にね、ビーチのあるところは、お客様がこれからね、集まってくることもあると思いますし、人が増えたときに、じゃあどういった避難になっていくのかっていうのも想定しながら、こういったことに向き合っていきたいなっていうふうに思います。
コメンテーター保田隆明さん
難しいですよね。まあ今「避難は逃げるが勝ち」って話があって、「じゃあ、1秒でも早く逃げたいから車使いたい」と、やっぱ人間の心情的には思っちゃうわけですもんね。そういう意味ではその、「部分最適」と「全体最適」の話だと思うんですけど、個の利益を優先しようと思えば「車」ってなるんですけど、みんながそれやっちゃうと、全体が、ふん詰まりになっちゃうということで、やっぱ全体最適をするにはこういうデザインでやるんですよっていう、そういうものをいかに分かりやすくお伝えするか、ということなんだと思いますね。
堀キャスター
そうですね。事前の計画と実際、訓練をしてみるっていうことで。
堀内キャスター
街によってその対応もやっぱり違いますんで、そこもしっかり我々も頭に入れとかないといけないなというところですね。
