カラーコピー廃止では救えない借金地獄、矛盾する「財政パフォーマンス」を検証する
![]()
松本 創
ノンフィクションライター
著者フォロー
フォロー中
2026.9.2(水)
兵庫県が起債許可団体となり、幹部会議で全庁一丸の改革と節約を呼びかける斎藤元彦知事=2026年8月28日(写真は筆者、以下も)
財政悪化に苦しむ兵庫県は、8月18日に県債発行に国の許可が必要な「起債許可団体」に転落した。斎藤元彦知事は、カラーコピーの原則廃止やペーパーレス化、出張費削減といった当面の経費節減策を示し、来年度からは公共投資の10%削減にも踏み切る方針だ。しかし、抜本的な改善にはほど遠く、県職員の人件費削減は避けられないとの見方も出ている。財政悪化の責任について斎藤は「前知事の負の遺産」とする。総務官僚出身で複数の自治体で財政課長を務めた経験から、“財政のプロ”とも称されてきた斎藤だが、2021年の初当選からはや5年。その間、何をしてきたのだろうか。
前知事体制の「闇」を強調、自らは改革者を演じる
〈兵庫県は、震災により大きな借金を負いましたが、その後、過大な公共投資、分収造林事業や基金集約など、不透明な財政運営や不適切な財政手法を重ねてきました。(略)その象徴が、総務省から地方財政法違反を指摘された用先債の事案です〉
県債の発行に国の許可が必要な「起債許可団体」となり、総務省に「公債費負担適正化計画」を提出した8月27日の夜、兵庫県の斎藤元彦知事はXにこう投稿した。翌28日に県庁で開いた幹部会議でも、全庁一丸の改革と節約を呼びかけた後、やはり用先債※1問題の検証と再発防止を強調した。
※1:公共用地先行取得等事業債。将来の事業に必要な用地を先行取得する目的で発行する地方債
この問題は、井戸敏三前知事時代に行われた不適切な会計処理のこと。県は用先債490億円を発行して土地を取得。その後に生じた売却収入338億円を返済に充てるべきだったが、返さずに490億円全額を借り換えていた。その資金を将来の借金返済に備える「県債管理基金」に積み立て、実質公債費比率※2を実際よりもよく見せていた、というもの。毎日新聞の取材で今年7月に発覚。これを是正すると同基金の残高が減り、実質公債費比率が最大0.8ポイント悪化する。
※2:自治体の収入に対する借金返済の割合を示す財政指標。3年平均で18%以上になると「起債許可団体」、25%以上で破綻一歩手前の「早期健全化団体」となる。兵庫県は2025年度決算で19.2%
兵庫県は、前知事時代の2007~11年度にも起債許可団体になっていた。その間の08年度から11年間にわたる大規模な行革を進め、職員3割削減、給与カット、公共投資や事務経費の抑制などを行った結果、実質公債費比率は改善した。だが、斎藤が就任した2021年度以降、再び悪化し続けている。
斎藤は、その原因が過去の「負の遺産」にあると繰り返し主張し、用先債問題こそが前県政の「不透明な財政運営や不適切な財政手法」の象徴だとして追及姿勢を強める。井戸への聴取も辞さない構えだ。
しかし実際は、用先債問題の財政への影響は限定的だ。それがなかったとしても、2032年度には実質公債費比率が25%を超え、破綻一歩手前の「早期健全化団体」になるという試算を県財政課が7月の県議会総務常任委員会で示している。当時は違法性の認識がなかったとも説明し、県の有識者会議も「過去の検証は一定必要だが、今後の行財政改革に重点を置くべき」と指摘する。つまり、不適切な処理があったにせよ、財政悪化の本質的要因ではないというわけだ。
それを過大に取り上げ、前知事の責任を追及する斎藤の主張は論点のすり替えであり、責任転嫁だろう。20年にわたった前知事体制の「闇」を強調し、これを暴く改革者を演じることで、自らの5年間の財政運営を正当化する。そんな意図が透けて見える。
