北米で人気のバスケットボールシミュレーションシリーズの最新作「NBA 2K27」が,2026年9月4日に発売される。
本作には,NVIDIAが2026年3月に発表したゲームの高画質化技術「DLSS 5」が採用されており,NVIDIAは改めて同技術の利点をアピールしている。
NBA 2K27

NBA 2K27におけるDLSS 5のデモ映像より。左がDLSS 5オフ,右がオンの状態だ


DLSS 5は,GeForce RTX 50シリーズと,NVIDIAのクラウドゲームサービス「GeForce NOW」で利用できる技術だ。
本稿では,改めてDLSS 5とはいったい何かを説明しつつ,NVIDIAがアピールしているポイントをまとめてみよう。映画クオリティをゲームで実現する「3D-Guided Neural Rendering」
DLSS 5は,「ゲームで映画並みの映像を実現する技術」とアピールされている。だが,3月の発表時に公開されたデモ映像の中には,もとのゲーム映像とかけ離れて見えるものもあった。生成AIに対する根強い反発もあり,少なくない批判の声が上がったものだ。
NVIDIAとしては,最初の発表が批判を受けることも織り込み済みだったろう。DLSS 5に対する批判を意識してか,NBA 2K27の発売に合わせてNVIDIAは,次の2点を繰り返し強調している。
DLSS 5は「決定論的」に,クリエイターが意図した映像を出力する
DLSS 5が生成する映像は,アーティストが細かく制御できる
つまりNVIDIAの主張は,「DLSS 5はAIで映像を勝手に生成する技術ではない」ということだ。
通常の画像生成AIは,ランダムなノイズをもとにサンプリングを行うため,同じプロンプトを入力しても,同じ映像を出力するとは限らない。
つまり,入力に対して出力が一意に決まる「決定論的」な仕組みではない。だが,DLSS 5の中核をなす「3D-Guided Neural Rendering」は,画像生成AIと共通する技術を含むものの,本質的には別の仕組みだ。
一般的な画像生成AIでは,「Latent Diffusion Model」(LDM)と呼ばれる仕組みが使われている。
まず,生成する画像を圧縮した「潜在空間」と呼ばれる領域を用意し,そこをノイズ(砂嵐)で埋める。AIモデルは,あらかじめ学習した画像の特徴をもとに,たとえば砂浜の画像であれば,砂浜の絵に近づくようノイズを少しずつ取り除いていく。
この処理を繰り返して潜在空間上に画像を生成したあと,「Variational Auto Encoder」(VAE)デコーダーを使って,最終的な画像サイズに復元する。
このような仕組みのため,画像生成AIでは細部がぼやけたり,ノイズや不自然な描写が残ったりすることがある。
一方,ゲームでは前後のフレームと整合した画像を連続して生成する必要があるため,LDMのような手法をそのままでは使えない。
そこでDLSS 5では,「Pixel-Space Diffusion Transformer」というAI技術を採用している。NVIDIAではこれを,3D-Guided Neural Renderingと呼ぶ。
Diffusion Transformer(DiT)自体は,LDMでも使われているTransformerベースの拡散モデルだが,DLSS 5では従来のLDMと次の点が異なる。
潜在空間ではなく,レンダリング済みの画像からなるピクセル空間を使う
プロンプトではなく,ゲームエンジンから得た情報を使う
反復処理を行わず,1回の処理で出力する
3D-Guided Neural Renderingの処理の流れ図

先述のとおり,画像生成AIで細部がぼやけたり歪んだりする原因のひとつが,潜在空間から画像を復元する処理だ。これをゲーム映像にそのまま用いると,フレームごとにガタつきや揺らぎが生じる可能性がある。
そこでDLSS 5のDiTでは,潜在空間ではなくピクセル空間をAIが直接処理する。
DiTは,さまざまな画像を学習したTransformerベースのAIモデルだ。ゲームエンジンのレンダラーだけでは計算負荷が高すぎて表現できない,髪や肌の質感,自然な光の透過や影,よりリアルな大域照明などを生成する。
簡単にいえば,ゲームエンジンのレンダラーだけでは表現しきれない細部を,AIが拡散モデルによって補うイメージだ。
さらにDLSS 5のDiTでは,蒸留技術などを用いて最適化したAIモデルにより,わずか1回の順伝播でフレームを生成する。何十回もノイズ除去を繰り返すLDMとは異なり,1パスで処理を完了できるのが特徴だ。
これはDLSS 5を適用する前の画像だ。DiTは,人の肌やオブジェクト,光源など不足している表現を,拡散モデルと同じ手法を使って再現する

ここでNVIDIAが強調しているのが,3D-Guided Neural Renderingが決定論的に動作する点だ。つまり,DLSS 5のDiTに同じ入力を与えれば,常に1ピクセルの違いもない同一のフレームを出力するという。
言い換えれば,DiTがアーティストの意図に反する映像を勝手に生成することはない,ということになる。
またDLSS 5は,1フレームの入力に対して1フレームを一定時間内に出力する設計になっているという。
ゲームエンジンから得たモーションベクトルなどの情報を使って画像を生成するため,連続するフレームの一貫性も保ちやすい。そのため,ゲームエンジンのレンダリングパイプラインに組み込むのが容易であると,NVIDIAはアピールしている。
DLSS 5は,既存のDLSSに含まれるフレーム生成や超解像,「Ray Reconstruction」とは独立した技術だ。そのため必要に応じて,これらの技術と組み合わせて利用できるという。
DLSS 5のソフトウェア開発キット(SDK)には,生成映像をクリエイターが細かく制御するためのツールや,複数のAIモデルが含まれているという。クリエイターはDLSS 5のパラメータを調整し,意図した映像に仕上げられるそうだ。
SDKに含まれるツールの例

SDKに含まれる複数のAIモデルは,ゲーム全体に適用できるほか,シーンごとに異なるモデルを使い分けることもできるという。アーティストは,DLSS 5を適用した映像を確認しながら,シーンに適したAIモデルを選択できる。
3つのAIモデルを比較した画像。アーティストは,シーンの意図に合ったモデルを選んで適用できる

さらに,アンビエントオクルージョンや反射,サブサーフェススキャタリングといった各種パラメータの強度や,トーンを調整する機能も用意されているそうだ。
DLSS 5は,シーン内のキャラクタやオブジェクトを認識できるため,特定のオブジェクトを除外したり,逆に特定のオブジェクトだけを選択したりして,パラメータの強度やトーンを調整できるという。
キャラクタ(赤色の部分)を除外し,それ以外のパラメータだけを調整している例

つまりDLSS 5は,アーティストの意図を無視した映像を出力するのではなく,むしろ細かな調整によって,その意図を反映した映像を作れる技術だとNVIDIAは強調しているわけだ。4K解像度で200fpsを超える高フレームレートを叩き出す
GeForce RTX 50シリーズの「Tensor Core」を使って1パスで画像を生成するDLSS 5は,処理負荷も比較的軽いようだ。
NBA 2K27では,フレーム生成や超解像技術と併用することで,4K解像度でも200fpsを超えるフレームレートを実現できると,NVIDIAはアピールしている。
NBA 2K27で,解像度3840×2160ドット,DLSS 5を有効,Ultraプリセットを適用した場合のフレームレート

フルHD解像度なら,すべてのGeForce RTX 50シリーズで200fps以上を実現するという

NVIDIAは,DLSS 5のAIモデルを継続的にアップデートするそうで,今後も性能を大きく向上させるとしている。6か月ごとに5倍の性能向上を実現すると予告しており,今後の進化にも注目したい。
6か月で5倍の性能向上を実現すると予告している。ここでいう性能には,フレームレートや画質も含む

