日本は火葬率が99%以上の火葬大国だ。それでも肉体を残したまま地中に葬られたいと願う人もいる。土葬墓地の建設計画で注目を集めるムスリムとは別の、日本人による日本での土葬。それを望む人たちは、何を思っているのだろうか。世界の動向や日本の今は。関係者の声を聞き、葬送のあり方を考えた。(文・写真:益田美樹/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
土葬希望、きっかけは「野糞」
「死んだら土葬してほしい」。東京大学名誉教授(科学哲学)の信原幸弘さん(72)は、そう願っている。宗教上の理由ではない。土葬が自分にとって一番しっくりくるからだ。
信原さんは2年ほど前、人間の排せつ物を最も簡単な方法で土に還す「野糞」を実践している人と、研究調査の一環で話す機会があった。「野糞」自体が強烈なインパクトだったが、虚心坦懐に彼から話を聞くうちに興味をそそられたという。
「自然からいただいた命を自然に返すという循環の考えに、強く共感したんです。遺体も循環させるんだ、と。その時からです、死んだら土葬にしてほしいと思うようになったのは」
ただ、自らの土葬希望を周りには詳しく話していない。
「強く希望すると、今の日本では社会的な混乱を招くリスクがあります。一人ひとりが選択肢を少しずつ広げていく形で、土葬が自然に受け入れられる社会に、ゆっくり進むのが適切ではないかと思います」
信原さんは2026年4月、東京都内で開かれた死をテーマにしたイベントで自らの考えを披露した。このイベントは延べ5000人以上が参加した6日間の催しで、信原さん登壇のトークセッションでは、質問の手は途切れず、土葬への関心と共感を感じたという。
「『私も土に還りたい』という声も聞きました。前向きに考える人たちが多かった印象です」
世界では火葬以外に関心 日本でも変化の兆し?
厚生労働省の資料によると、日本の火葬率は2000年代以降、99%以上で推移している。ただし、およそ100年前の大正初期は30%台だった。そこから徐々に上昇し、第2次世界大戦後は都市化の加速と連動する形でさらに増加。1979年には90%に達した。土葬はかつて人力で墓穴を掘っていたため、集落を挙げての葬送だったが、地域のつながりが薄れるにつれて衰退していったとみられている。火葬設備の急速な発達や都市部での土葬用地の不足なども影響しているようだ。
ただ、微妙な変化の様子も見える。
東京大学大学院人文社会系研究科の堀江宗正教授による死生観調査では、「地中への土葬を希望する」との項目に対し、「ややそう思う」「とてもそう思う」と答えた人は、2019年の14.2%から2024年には20.4%に増えた。2024年の調査対象1047人のうち、イスラム教の信奉者は0.2%に過ぎず、土葬志向はイスラム教徒だけでは説明できない。散骨や樹木葬、共同納骨などへの支持も広がっており、背景には宗教だけでなく、「家墓」の衰退、墓の継承負担、葬送の個人化という社会の変化があるとみられるという。
