2026年9月
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    もちろん、そのような製品はまだ存在しない。とはいえ、ザッカーバーグは高性能なAIを誰もが制限なく使える世界こそ、理想的な未来だと考えていることが読み取れた。

    わたし自身は、AIが今後も進歩し、さらに役立つものになると楽観視している。しかし、それだけで人々のAIに対する見方が大きく変わるとは思えない。ザッカーバーグが思い描くような製品を人々に実際に使ってもらうには、それを開発する企業が人々から十分な信頼を得ている必要がある。しかし、現在の世論調査を見る限り、AI業界はまだそのような信頼を得られていないのだ。

    AIへの反発を巡る応酬

    また、ザッカーバーグはAnthropicの共同創設者であるダリオ・アモデイに対して、かなり露骨な批判を向けている。「AIを開発している多くの人々の議論が、これほど悲観論に満ちていることには驚かされます」と発言したのだ。テック投資家のギャビン・ベイカーは、SNSやポッドキャスト「All-In」への出演を通じてザッカーバーグの主張を繰り返し、さらにもう一歩踏み込んだ発言をした。「ダリオの発信は、米国内でデータセンターの建設を禁止しようとする動きを大いに後押ししました」と投稿したのである。ホワイトハウスのAI顧問で「All-In」の共同司会者でもあるデイヴィッド・サックスもこれに加わり、Anthropicの「言説ほど、人々の恐怖心をかき立てたものはありません」と書いている。

    こうした発言を受け、アモデイは珍しく公の場で反論した。SNSに長文の投稿をし、自身の発信がAIへの反発を招いた原因だという見方を否定したのである。

    「根本的な問題は、人々の信頼が失われていることだと思います」とアモデイは書いている。「一般の人々は企業や政府、テック業界を信用していません。わたしたちが、人々から搾取する新たな方法を考えているのではないかと常に疑っているのです。こうした不信感は何十年もかけて積み重なってきたもので、AIは、そうした不信感が向けられる新たな対象にすぎません」

    アモデイの最初の指摘は、かなり核心に近いと思う。だが、その後の主張には賛同できない。アモデイは続けて、「Anthropicを含むAI企業に対する最も的確な批判は、世界をよりよくするという大きな約束を、まだ実現できていないことです」と書いている。その例として挙げたのが、AIががんの治療法を見つけるという約束だ。アモデイは以前、それはAIの力で十分に実現が期待できる目標だと語っていた。

    本質を見落としている

    アモデイだけでなく、シリコンバレー全体も、木を見て森を見ずの状態に陥っているのかもしれない。AIへの反発が生まれたのは、テック企業のCEOが未来について恐ろしい警告を発していることでも、OpenAIやAnthropicがまだがんの治療法を見つけられていないからでもない。問題は、AIがすでに社会を変え始めており、多くの米国人が、その変化によって社会が悪い方向へ進むのではないかと懸念していることにある。

    テック企業は、データセンターという物理的な施設を一般の人々に受け入れてもらうため、多大な努力を重ねてきた。水を適切に利用すると約束し、クリーンエネルギーの活用を掲げ、地域社会への投資も進めている。しかし企業にとって残念なことに、データセンターの建設は、AIに対する人々の嫌悪感や、テック企業と地域社会とのかかわり方への不満を目に見える形で象徴するものになっていることを示す証拠が数多くある。

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