宇宙戦争RTS(リアルタイムストラテジー)『Sins of a Solar Empire II』の種族追加DLC「Harbinger」が、2026年9月3日に発売されました。背景設定でほのめかした第4勢力が明らかとなり、長年のファンが両手を挙げて喜んでいるでしょう。このDLCに先駆け、ファンのひとりとしてシリーズの魅力を紹介します(以降、シリーズ略称「Sins」)。では、まずは昔話を――
宇宙4Xゲームファンにとって前作Sins1(2008年)は衝撃でした。同時期の『Galactic Civilizations II』、『Sword of the Stars』に比肩するディテールで、圧倒的ビジュアル品質の宇宙艦隊戦を操作できたのですから、10年先から未来のゲームがやってきた印象を覚えました。キャンペーンがなくスカーミッシュのみというスパルタンな内容であるにもかかわらず、当時のゲームメディア(リンク:GameSpot GotY 2008)でGotY部門賞を受賞した、伝説的ストラテジーゲームです。
また、RTSの歴史においてもSins1は語られるべき例外です。当時は古典RTS『StarCraft』と国家RTS『Age of Empires III』がプレイヤー人口で大勢を占め、アクション・パー・ミニッツ(APM)を競い合うeスポーツ傾向が激化したジャンルでした。そこに、1マッチ1時間超というスローテンポなゲームを発売したのです。APMではなく戦略と戦術を重視したRTS、メーカー公称「RT4X」(リアルタイム4Xゲーム)の斬新さはストラテジーファンに受け入れられました(リンク: 4Gamer インプレッション)。
『Sins of a Solar Empire: Rebellion』(2012) 前作Sins1の最終拡張パック
こうしたゼロ年代の話を現代ゲーマーが耳にしてもピンとこないでしょう。それは喜ばしいことです。宇宙4X-RTSに絞っても大人気作『Stellaris』があるとおり、このジャンルは発展してきたのですから。同ジャンル作として『Distant Worlds』『Star Ruler 2』も挙げておきます。一方、本シリーズは現行のSins2が2024年に発売されるまで10年以上も大型拡張パックが途絶えていました。時代を先取りしたSinsは、その時代に追いつかれてしまったのです。
斬新さは風化したものの、Sinsの魅力が薄れることはありません。むしろ、Sins2がシリーズを現代化改修したことで、いまだにオンリーワンの魅力を持つと気付かされました。シリーズ歴が長い筆者にとって盲点でしたが、Sins2から始めた現代ゲーマーたちがその魅力を今風に例えています。その声とは――
対戦に特化した『Stellaris』ですって!?
――たしかに。そのとおり。1対1やTvE、対人戦や対AI戦を問いません。勝てば喜び、負ければ学ぶ「上達の楽しさ」が根底にあるのです。この観点に立って、Sins1が発売した2008年当時の対戦ゲーム気風が色濃く残る宇宙ストラテジーだと紹介します。対戦の奥深さを知ってもらえたなら、新種族DLC「Harbinger」に向ける期待を酌んでもらえるでしょう。
ヒーローベースのスペースバトル
Sins2は『Stellaris』でバチバチに対戦したい人向けのゲームです。母星1つからスタートし、近隣惑星に入植して国力を高めていきます。ここまでは同じですが、『Stellaris』がその国力を統治に用いるのに対し、本作はすべて戦争にそそぎ込む。マップ上のすべての中立惑星に原住民の防衛艦隊が駐在するので、最初から最後まで宇宙艦隊戦が続きます。

序盤の主役は「キャピタルシップ」です。最初から1隻無料で建造できる大型軍艦で『League of Legends』のチャンピオンに相当します。レベルアップでアビリティを得て、4つのアイテムスロットに装備品をつける。このビルドが対戦の肝となります。

中盤では艦隊指揮の比重が増します。火力が高いミサイル艦や軽空母、それらに対処する対空艦といった軍艦の種類や数がそろうからです。宇宙要塞戦は中盤の山場となるでしょう。終盤では巨大戦艦「タイタンシップ」も登場し、国家存亡をかけた決戦に華を添えます。

決戦時には200隻を超える戦場を、秀逸なビジュアルが彩ります。艦船操作は平面ですが、自動で立体的な多段横列を組み、宇宙戦争らしい3次元戦闘を作りあげます。ゲーム側が簡単操作で豪華な演出を提供してくれるので、あとはプレイヤーが戦場を派手にしましょう。

先に挙げたキャピタルシップの2隻目以降、多彩な軍艦、宇宙要塞やタイタンシップは、プレイヤーが国を大きくして開発・建造するのです。戦闘指揮と並行し、国家拡大の手際よさも競うことになります。
絶滅戦争のための国を作ろう
一番分かりやすい勝ち方は、敵国よりも強力なユニットを多数作ることです。艦隊運用という戦術を超え、富国強兵の国家戦略のもと、激しく戦争します。国力強化と艦隊増強の中心には技術研究があり、本作の3つの種族は技術が大きく違います。

テックツリー(技術研究リスト)は、研究所を建てて技術レベルを上げ、その後に個別の技術を研究します。技術ジャンルは内政と戦闘の2種類です。内政技術は特殊惑星への入植や惑星産業を強化します。戦闘技術は艦船のアンロックやユニット上限の拡張です。前者が富国、後者が強兵にあたります。

本作に登場する3種族は、それぞれ固有のテックツリーを持ちます。つまり富国強兵の流れが違うのです。さらに、各種族は思想的に分断した2派閥に別れて長所を際立たせました。合計6つの国家それぞれが持つ長所を活かす、対戦ゲームで言う「キャラ性能」を引き出すには、テックツリーからシナジーを見つけなくてはなりません。
4Xゲームの説明。公式サイトより転載。
資源を早く集めるように、マップを探索して惑星に入植する。接敵に備えて富国強兵を急ぎ、領土を開拓し技術を開発する。そして接敵から決戦まで勝利を積み重ね、敵国を滅ぼす。このゲーム展開は探索・拡張・開発・殲滅の頭文字から4Xと呼ばれます。4Xゲームの代表作『Sid Meier’s Civilization』はターンベースでしたが、本作はリアルタイムで宇宙艦隊戦と並行します。しかも複数の星系をまたにかけた超巨大マップで。戦術と戦略に比重を置いた濃厚なストラテジー体験だと請け合いましょう。
ミクロとマクロの宇宙をつらぬいて
惑星軌道上で200隻の軍艦が入り乱れる戦場を指揮し、複数の星系をまたにかけた宇宙帝国を拡張する。しかもリアルタイムで。この現実離れしたストラテジーを、極めて秀逸なユーザーインターフェース(以下、UI)で実現しました。

まずは表示画面のシームレスな拡縮機能です。ミクロな戦場マップからマクロな恒星マップまで直感的に扱えます。次は艦隊リストです。艦隊や惑星を画面左側リストにピン止めでき、画面外でも戦闘状況の表示、カメラジャンプ、さらに選択・命令も可能にしました。艦隊の増強指示も、造船所への生産配分と集合移動が自動化され、煩わしくありません。

上記のUIに加え、マップ構造も宇宙戦争の要約に一役買っています。天体周囲の宙域をフェーズレーン(FTL航路)でつなげた網目構造が、前線や防衛拠点になる天体を自ずと作る仕組みです。「ゲームテンポの遅さ」も本作では長所となります。艦船や施設の建造、惑星産業の強化、艦船ジャンプに要する時間が長く、操作量の優劣が表れにくくなっています。艦隊指揮に没頭しても富国強兵の効率に影響が出にくいのです。

ミクロのタクティカルコンバットとマクロの4Xゲームを並行処理できるよう、UIとゲームテンポで宇宙戦争の要所をまとめてあります。艦隊リストの活用や開幕展開の定石化といった修練を要しますが、ほどなくして次のステップに移れるでしょう。敵国の弱みに自国の強みをぶつけるよう、戦闘、領土拡張、技術開発を考えるステップです。各国家の相性、いわゆるキャラ差をぶつけるにはどうすれば良いか。考えた戦略・戦術を実戦で披露しましょう。勝てば喜び、負ければ学ぶ。「上達の楽しみ」が始まります。
やったぜ! 18年ぶりの「新キャラ」だ
『Sins of a Solar Empire II』は宇宙国家戦争というエピックスケールで、競技用RTSと4Xゲームのプレイ感を両立した唯一無二のタイトルです。誰でもすぐに対戦を楽しめるという作りではなく、ディープなストラテジーゲームを習得した先に対戦の楽しさが待っています。「対戦に特化した『Stellaris』」は、まさにオンリーワンの魅力を言い表した例えでしょう。

ここまで話せば、9月3日に発売した種族追加DLCが対戦ゲームにどの程度影響を与えるか分かるはずです。新種族の攻略を進める楽しさだけでなく、既存の種族でいかに戦うかを考える楽しさも加わります。シリーズ18年目でついに「格闘ゲームで言うところのシーズン2」を迎えるのですから、長年のファンとしては逸る気持ちを抑えることができません。この高ぶりを共有したい! 本稿を読んで興味を持たれた方は、是非この機会に遊んでください。
最後にシリーズの今後を紹介します。前作からの欠点であったストーリーは拡張DLC「Times of War」でキャンペーンモードを実装予定です。公式サイトやフォーラムで断片的に語られたシリーズ史の全貌が明らかとなり、これまた長年のファンが待ち望んでいたものです。そのストーリーDLCが新規プレイヤーの増加を見込めるほど豪華な出来映えになることを祈ります。
