アンドレア・キミ・アントネッリが19番グリッドから2026年F1第13戦イタリアGPを制した裏で、メルセデスはバーチャル・セーフティーカー(VSC)下でアントネッリをピットインさせる一方、ジョージ・ラッセルをステイアウトさせた。
なぜメルセデスはラッセルをピットインさせなかったのか?
メルセデスはレース開始時から2台のタイヤ戦略を分けていた。アントネッリはハード、ラッセルはミディアムを履いてグリッドに着いた。
そして、シャルル・ルクレール(フェラーリ)のクラッシュに伴うレース開始直後の赤旗中断を利用し、タイヤ交換義務を消化すべく、アントネッリにミディアム、ラッセルにハードを履かせた。
分かれた判断:ラッセル続行もキミはピットへ
アントネッリはスタート直後から怒涛の勢いで順位を上げていった。特にミディアムでのペースは著しく、13周目には早くも表彰台圏内に浮上。ラッセルとの優勝争いに加わった。
レース展開が動いたのは27周目だった。ランス・ストロール(アストンマーティン・ホンダ)がコース上で停止したことでVSCが導入されると、メルセデスはアントネッリをピットインさせ、新品のミディアムに交換した。
当のアントネッリはタイヤ交換の必要性を感じていなかった。チーム代表のトト・ウォルフによれば、タイヤの状況を確認した際に「かなりいい」と答えていたという。それでも、同じミディアムを履いていたマクラーレンやフェラーリのタイヤに摩耗が確認されていたことから、メルセデスは交換を選んだ。
ウォルフは、アントネッリをピットインさせることに「議論は不要だった」と振り返る。一方、メルセデスはラッセルのタイヤを交換しなかった。
アントネッリは当時、ラッセルに0.580秒差まで迫っていたが、このピットストップによりそのギャップは14秒強にまで拡大した。ただ、新品タイヤのアドバンテージを生かし、残り4周でチームメイトをオーバーテイク。劇的な母国初勝利を手にした。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
イタリア国旗と優勝トロフィーを手に表彰台で喜ぶアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2026年9月6日(日) F1イタリアGP決勝(モンツァ・サーキット)
ラッセル先着を予測したシミュレーション
結果だけを見れば、アントネッリの戦略が正解だったように見える。だがウォルフによれば、VSCが出た時点でメルセデスの手元にあったシミュレーション結果は異なっていたという。
「どちらの戦略が良いのか、我々にも分かっていなかった。あの時点ではシステム上、1ストップのジョージが前でフィニッシュするという予測だった」とウォルフは語る。
「2ストップ[を採用したアントネッリ]については、終盤には[ラッセルに]かなり接近するものの、追いつくことはできない、というのがソフトウェア上の予測だった」
「どちらの戦略が優れているのかが分からなかった以上、戦略を分けたのは正しい判断だった。朝のミーティングでは、ハードは永遠に走れるだろうと話をしていたんだ。実際、ジョージは最後まで走り切った。ただ、ミディアムほどのパフォーマンスはなかった」
ラッセル「VSCには少し苛立った」
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
2位フィニッシュを経て報道陣の取材に応じるジョージ・ラッセル(メルセデス)、2026年9月6日(日) F1イタリアGP(モンツァ・サーキット)
ラッセル自身は、アントネッリと「同じ戦略でレースを続けたかった」と振り返り、その条件であればレースに勝てたはずだと示唆した。
「だって当時、僕自身は良い状況にあると感じていたからね。ポジションを守るためにエネルギーをどうマネジメントすべきか、そしていつ攻めて仕掛けるべきかも正確に分かっていた。このレースに向けて、その点ではかなり準備してきたんだ」
ラッセルはVSCのタイミングでピットインすることは「考えなかった」という。
「実際、僕の後ろの連中もステイアウトすると思ってたくらいだからね。ただ、ピットウォールの方は僕らのバトルをハラハラしながら見ていただろうし、僕らを別々の戦略にすることができてホッとしていたんじゃないかな」
「僕はハードタイヤで、キミはミディアムだった。だから、どちらかがピットインするとすればキミだった」
「それだけに、あのタイミングでのVSCには少し苛立ったよ。[VSCが導入されず、そのままレースが続いていれば]ミディアムの連中がハードタイヤの相手と競うのは厳しかったはずだから」
「でも、だからといってキミのドライビングの価値が下がるわけじゃない。ただ、VSCが出ていなかったら、レースはどんな展開になっていたのか。かなり興味深かっただろうね」
2026年F1第13戦イタリアGP決勝では、19番グリッドからスタートしたアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が逆転勝利を飾った。角田裕毅(レーシング・ブルズ)は10位フィニッシュを果たした。
マドリンクを舞台とする次戦スペインGPは、9月11日(金)のフリー走行1で幕を開ける。
