2026年9月
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    FX3の上位機種というだけでなく、ハイエンドCineAltaカメラの機能も搭載されている新モデル・FX5。小型ボディでハイクオリティなシネマ表現が可能とあって、撮影現場の新定番として活躍しそうな予感だ。今回は、FX5で撮影した短編『A Thread of Life』で監督・脚本・編集を務めたMINAMIさんと、撮影監督・カラリストを務めた桑田吏功さんに、作品の企画・撮影・ポスプロについてを振り返ってもらった。

    構成:編集部 萩原 取材・文:山崎ヒロト 写真:盛 真弓 
    協力:ソニーマーケティング株式会社
    機材協力:Aputure、Capsule Rentals、TOYO RENTAL、平和精機工業株式会社、三友株式会社、株式会社RAID

    MINAMI Minami Noguchi
    Film Director
    2022年より映像クリエイティブチーム・GRAPHIXに監督として参画。美術セットに対する強いこだわりを持ち、繊細な映像づくりを得意とする。2024年にトロントでの活動を開始し、MVの監督としてグローバルな視点を広げる。2026年4月よりKASSENに監督として参画。

    桑田吏功 Riku Kuwada
    Director of Photography
    コロナ禍に映像制作を始め、2021年に撮影監督としてキャリアをスタート。のちにGRAPHIXを立ち上げる。2024年に新たな環境と多様な文化に触れるためトロントへ移住。滞在中に照明を用いた映像表現の手法を学び、日本には少ないDPスタイルの撮影監督として活動を再開。

    Short Film『A Thread of Life』

    妊娠を知っているのは、私と、お腹の中の小さな命だけ——。内省的かつおっとりとした性格で、うれしいことも不安なこともひとりで抱え込みやすい糸。新しい命を授かっていることを知った糸は、うまく言葉にはできない自分自身の感情と向き合うことになる。

    出演:与田祐希、三坂知絵子、伊藤 絃、江原璃莉 監督・脚本・編集:MINAMI プロデューサー:雨無麻友子、萩原 亮 脚本協力:Takanao Yamauchi 音楽:茂野雅道 撮影監督・カラリスト:桑田吏功 Gaffer:渡邉幸朔 録音:小畑智寛 整音:曽根大介 美術:中城日菜子 スタイリスト:村井素良 ヘアメイク:堀 奈津子 監督助手:渡邉裕也 撮影助手:山岸雄翔、大野正貴、渡邊有夢樹 照明助手:村上 岳、難波佑成、佐藤 快、小日向賢治 美術助手:青木美侑 制作:豊島理央、座間功介 技術・素材提供:bonbon homespun メイキング:遠藤 賢

    Behind the Scene

    撮影現場やキャスト・スタッフのインタビューを収めたBTSは、本編と同じくFX5で撮影。機動力の高いFX5のドキュメンタリー撮影との相性の良さも確認してほしい。

     

    ソニー ILME-FX5 XLR-H2(XLRハンドルユニット)同梱

    希望小売価格:900,900円(税込)
    ※2026年9月時点

    ソニー ILME-FX5B  XLR-H2(XLRハンドルユニット)非同梱

    希望小売価格:812,900円(税込)
    ※2026年9月時点

    ソニーCinema Lineの新商品として発売されたフルサイズイメージセンサー搭載レンズ交換式カメラ。FX3の上位モデルとして小型・軽量ボディでありながら、VENICE 2とBURANOに採用されているX-OCN(圧縮RAW)内部記録を実現している。

    POINT
    ●新開発された5Kフルサイズ積層型CMOSイメージセンサーによって広いラチチュードを実現 
    ●16bitシーンリニアRAWフォーマット・X-OCNのカメラ内部記録に対応 
    ●800/4000/12800の3つからベースISOを選択(スリー・ベースISO)。ノイズを抑えた映像表現が可能

    「明暗差のあるシーンも『FX5だから攻められる』と感じました」(MINAMI)

    ——『A Thread of Life』は“妊娠”がテーマになっています。この題材を選んだ理由を教えてください。

    M 私自身が妊娠適齢期に近づいてくるにあたって、子どもを産むということについて考える機会がすごく増えてきました。そのときにふと思ったのが、「現代に生きているからこそ感じることがすごく多い」ということ。昔だったら喜びであふれていたはずのものが、現代は喜びだけじゃない、いろんな感情がある。それを今回の作品を通して、みんなで考える時間を作れたら…と思ってこのテーマにしました。

    主人公・糸を演じた与田祐希について、MINAMI監督は「妊娠というテーマを扱うにあたって、同年代の与田さんと現場でいろいろ話しながら撮影できたのが良かった」と振り返る。

    ——今回は「FX5で撮る」という前提があるなかで、ルックの方向性はどのように決めましたか?

    桑 FX5にはスリー・ベースISOとデュアルゲイン撮影機能という新機能が搭載されていると聞いたので、あえてコントラストの強い環境で撮影したいと思いました。冒頭の糸がベッドに寝ているシーンも、外から一灯のライトで照らしているだけで、室内は特に明るさを持ち上げていません。明暗差が大きく、画の暗部の割合がかなり多いこのシーンは、あえてベースISO800で撮影しました。暗部を攻めていくとノイズが気になる場面もあるのですが、新しく追加されたデュアルゲイン撮影機能は暗部のノイズがかなり抑えられていたので良かったです。

    M 私は日頃からダークなシーンを撮ることが多いんです。だから今回も自分らしさとして、そういうシーンを入れたいという思いがありました。ただ、撮影ごとに「何のカメラを使うか」で、どれだけ攻められるかを考えてしまうんです。冒頭のシーンのようにハイライトを残しながら暗部もある画はなかなか撮ることが難しいんですけど、今回は「FX5だから攻められる」ということで挑戦してみました。完成した映像を見たときに、すごくきれいでクリーンなルックになっていて感動しましたね。

    ——撮影前にどんな準備をしましたか?

    桑 監督と撮影のムードボードを作っていくなかで、今回のルックはフィルムで撮影されているような質感にしたいなと思いました。現場でモニタリングしていたLUTも、リファレンスにしたフィルムのルックに近づくよう自分で作成したものを当てています。カメラ・レンズのテストでは、FX5と十数種類のレンズの組み合わせを試して、最終的にリハウジングされたオールドレンズのセットを使用することになりました。そのテスト撮影時の画を見たときに、FX3やFX6よりはVENICEやBURANOといった、よりハイエンドなモデルに近い質感の画だなと感じたんです。同時に、FX5を手にしたときの軽さも印象的でした。FX3やFX30と同じような軽量なモデルなので、使いやすいなと。

    ——小型・軽量という点は現場でどのように活きましたか?

    M カメラが大型になればなるほど、どうしても撮影にスピード感が出ないんですよね。そうすると、私も含めスタッフの意識が下がってきてしまいますし、なんだか疲れてくる…。カメラが小さいというだけで現場のみんなの負担が軽減されるように感じます。

    桑 撮影体制の面でも変わります。大型カメラを使用する際にはどうしても助手が2〜3人必要になりますけど、FX5であれば助手ひとり、なんならカメラマンのワンオペでも撮影ができる、と。小さいボディであることはいろんな恩恵があると感じています。

    ——各種設定画面やモニタリング機能で印象に残った点はありますか?

    桑 普段VENICE 2やBURANOを使用しているので、これらのカメラと同じUIになり、すごく使いやすかったです。FX5の個人的に好きなポイントはフォルスカラーが確認できること。僕は自分で照明を担当する、いわゆるDPスタイルで撮影することも多く、フォルスカラーを使う機会が現場でかなり多いので、そこはすごく魅力的でした。

    32bit floatの音声収録ができるXLRハンドルと
    撮影に没入できるチルト式ビューファインダー

    拡張性の高さによって撮影時の選択肢が広がるFX5。最大4chの音声入力に対応するXLRハンドルユニット・XLR-H2を使えば最大96kHz 32bit floatでカメラ内に音声収録することができる。OLEDビューファインダー・DVF-EL1はチルト機構を備えており、撮影のアングルに合わせて柔軟にモニタリングすることが可能だ。

    XLRハンドルユニット「XLR-H2」装着時

    OLEDビューファインダー「DVF-EL1」装着時

    「FX5はどんな現場でも輝けるカメラだと感じました」(桑田)

    ——FX5はソニー独自の圧縮RAWフォーマットであるX-OCNのカメラ内部記録が可能になりました。

    桑 FX3でRAW収録をしようとすると、外部モニターでの収録が必須になり、周辺機器のセッティングが大きくなってしまう傾向にありました。カラーグレーディングの幅を犠牲にせず、コンパクトなボディだけでRAW収録できるFX5は、少人数の現場やビデオグラファーの方にとって魅力的なカメラだと思います。

    M FX5はX-OCN LTに加え、X-OCN C1、X-OCN C2に新たに対応し、VENICE 2などと比べて軽いデータで記録できるのもうれしかったです。編集とカラコレでプロキシを使うことなく、そこまでスペックが高いわけではないマシンでもスムーズに作業ができました。

    ——桑田さんはVENICE 2とFX6を普段よく使われるそうですが、FX5のグレーディング耐性はいかがでしたか?

    桑 FX6はXAVC-Iが一番高画質のコーデックですけど、過度にグレーディングをしようとすると、色の境界線が分離することがあるんです。一方で、VENICE 2のX-OCNだとそれが起きにくい。今回のFX5のX-OCNも、色相などをかなりいじっても分離しなかったので、VENICE 2寄りだなと感じました。

    ——実際に使用してみて、FX5はどんな人、どんな現場におすすめのカメラだと感じましたか?

    桑 普段FX3を使用していてさらにステップアップしたい人、もしくはすでにVENICE 2やBURANOを使用していて、Bカメとして運用できる小型のカメラがほしい人が購入するのかな、と。FX5はオールラウンダーなカメラだと思います。FX3やFX30と似たようなサイズ感のボディなのでラン&ガンの撮影などにも適していますし、それでいてこれまでのFXシリーズ以上に色情報を残して収録できる。収録の幅もポスプロの幅も広がる、どんな現場でも輝けるカメラだと感じました。

    M 小型カメラの機動力を残しつつ、よりハイエンドなカメラに迫るクオリティがあるので、私も“どんな場面でも使える”というのがFX5のすごくいいところだと思います。小型だからできるカーマウントやすごく狭い部屋での特殊リグ撮影でも使ってみたいですし、全面読みだし(オープンゲート撮影)での撮影や、アナモフィックレンズでの撮影にも挑戦してみたい…。FX5を使ったからこそできる表現というのが、今後たくさん出てくるんじゃないかなと思います。

     

    5K/120p、4K/240pのハイフレームレート撮影は来年夏以降に対応予定

    来年8月以降にX-OCN記録時の最大240fpsハイフレームレート撮影が対応予定。繊細なスロー表現が求められたシーン(右画像)で試験的に使用されたが、別カメラを用意せずに演出の幅を広げられるのもFX5の強みだ。

    現場で求められる表示機能が凝縮したFX5の操作性

    CineAltaカメラで好評なUIを継承。ホーム画面には撮影中に確認したい情報を一目で把握できるBIG6を採用。

    さまざまな表示に対応したモニタリング画面は、各種情報が周囲にまとめられて視認しやすい。

    フォルスカラーを多用するという桑田さんが気に入ったのが、カメラ本体のみで可能なフォルスカラー表示。

    階調豊かな16bitシーンリニアRAWフォーマットのカラーグレーディング耐性

    主人公の糸が叔母の光を探すシーン。暗い室内と窓から差し込む強い日差しの明暗差が激しいカットだが、X-OCN LTの16bit RAWはハイライトからシャドウまで情報が豊富に残り、グレーディングの自由度は高かったという。これだけ暗部を攻めながらノイズが出ず、デノイズが不要だったことにも驚いたそうだ。輝度・彩度・色相の調整に加え、光の拡散処理やハレーション、フィルムブラーでフィルム的な質感へ。窓や天井はマスクを切って個別に追い込んでいる。

    グレーディング前(s709)

    グレーディング後

    FX5を軸にした『A Thread of Life』の使用機材

    Aputure STORM XT52 

    SmallHD Ultra 7(RAID)

    Mitomo TRUE NDフィルター 4×5.65インチ

    Libec Swift JB50 Kit 

    Ancient Optics Tamashii Prime (CAPSULE RENTALS)

     

     

    Monitor & Controlによるモニタリングと遠隔操作

    「今回の現場では小型のWi-FiルーターをFX5と有線LAN接続、Wi-Fiルーターを介してFX5とタブレットをワイヤレス接続し、ソニーのアプリ・Monitor & ControlでRECのオン・オフや設定変更をワイヤレスで操作するという方法を取りました。BURANOにおいても、このシステムは実践済みで、FX5でもトラブルなく使用できました。無線ルーターとの接続が安定しない環境においては、FX3 には搭載されていなかったLAN端子がFX5には搭載されているので有線LANを使用した運用も選択肢に入ることは魅力的です。今後ライブ撮影の現場などでも活躍すると思います」(撮影助手・山岸雄翔さん)


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