NVIDIAの「DLSS 5」を使用していたGeForce RTX 5090で、16ピン電源コネクターが溶損したとの報告が出た。GPU-Zには最大613.5Wの基板消費電力が記録され、所有者は610Wを超える状態が続いていたと説明している。
もっとも、613.5Wはグラフィックスカード全体の消費電力であり、16ピンコネクターだけを通過した電力ではない。DLSS 5が溶損を直接引き起こしたかどうかも、現時点では確認されていない。
■DLSS 5使用中に最大613.5Wを記録
障害が報告されたのは、MSIの「GeForce RTX 5090 32G GAMING TRIO OC」だ。海外フォーラムで「erek」のハンドルネームを使う所有者が、正式にDLSS 5へ対応した「NBA 2K27」でニューラルレンダリングを試していたところ、カードが動作しなくなったという。
所有者が公開したGPU-Zの画面には、基板消費電力の最大値として613.5Wが表示されていた。所有者は、DLSS 5を使用しない状態では消費電力が約450Wだったのに対し、有効化後は610Wを超える状態が続いたと説明している。ただし、公開された画面は最大値を示すものであり、電力の時間的な推移や継続時間を単独で確認できる記録ではない。
MSIが公表している同カードの消費電力は575Wで、補助電源は16ピンコネクター1基となっている。613.5Wは公称値を38.5W上回る計算だ。
カードが停止した後、所有者は焦げたような臭いに気付き、ケーブルを取り外すのが非常に困難だったと報告した。公開された写真では複数の端子周辺に熱による損傷が見られ、ケーブルとGPU側ソケットの樹脂が一部で融着していた。
使用されていたのは、MSIがコネクターの差し込み状態を確認しやすくするために採用している、先端部に黄色の目印を設けたケーブルだった。ただし、この目印から差し込みの深さを視覚的に判断できても、障害発生前の接触状態や端子ごとの電流を事後に特定することはできない。
■613.5Wはコネクター単体の電力ではない
GPU-Zの「Board Power Draw」は、グラフィックスカード全体の消費電力を示す。RTX 5090は16ピンの補助電源コネクターだけでなく、マザーボードのPCI Expressスロットからも給電を受けるため、613.5Wという表示値がそのままコネクターを通過した電力を意味するわけではない。
12V-2×6コネクターは最大600Wの電力供給に対応するが、今回公開されたGPU-Zの記録だけでは、コネクター経由の電力が600Wを超えていたかどうかは判断できない。溶損との関係を詳しく調べるには、補助電源とPCI Expressスロットからの給電を分けた測定に加え、各端子の電流、温度、接触抵抗などの情報が必要となる。
また、RTX 5090のコネクター溶損はDLSS 5の登場以前にも報告されている。このため、今回の事例はDLSS 5使用中に高い基板消費電力が観測された事例ではあるものの、DLSS 5を原因と断定する材料にはならない。接触抵抗の偏りやケーブルの状態など、ほかの要因が高負荷によって顕在化した可能性も残る。
■非公式MODの試験でも消費電力が増加
DLSS 5に伴う消費電力の増加については、Tom’s Hardwareも正式提供前に試験している。同媒体は、NBA 2K27から流出したDLSS 5関連ファイルと非公式ツール「OptiScaler」を使い、本来は対応していない複数のゲームで動作を検証した。
「Hogwarts Legacy」では、2基の12V-2×6コネクターと高い電力上限を備えるMSI GeForce RTX 5090 Lightning Zの消費電力が、DLSS 5相当の処理を有効にすると480Wから720Wへ増加した。「Control」では691Wから約802Wへ上昇した。
RTX 5090 Founders Editionでは、「Hogwarts Legacy」で417Wから547W、「Control」で563Wから575Wへ増加した。Founders Editionは設定された575Wの電力上限付近に達しており、ニューラルレンダリングの追加処理がカードの電力余力を大きく消費する可能性を示している。
ただし、この試験は正式対応ゲームに開発元が組み込んだ実装ではなく、非公式MODを利用したものだ。設定や処理経路も「NBA 2K27」の正式実装とは異なる可能性があり、各ゲームで得られた数値を今回の溶損事例へ直接当てはめることはできない。
■持続負荷と端子ごとの電流偏り
16ピンコネクターでは、複数の12V端子が電流を分担する。各端子へ電流が均等に流れれば負荷は分散されるが、接点の状態や経路の抵抗に差があると、一部の端子へ電流が偏る可能性がある。
ドイツのオーバークロッカー、der8auerが2025年にRTX 5090 Founders Editionを使って実施したFurMark試験では、カード全体が約570Wを消費する状況で、6本の12V線のうち1本に22Aを超える電流が流れた。電源ユニット側の接続部では、試験開始から約4分で150℃を超える箇所も観測された。
この結果は特定の試験環境と個体で得られたものであり、すべてのRTX 5090で同様の温度や電流になることを示すものではない。一方で、カード全体の消費電力が設定範囲内にあっても、端子ごとの電流分布によって局所的な発熱が生じ得ることを示している。
GPU全体の消費電力だけを監視しても、各端子の電流偏りや接触部の温度までは分からない。この点は、GPU-Zに613.5Wと表示された今回の事例を読み解くうえでも重要となる。
■DLSS 5は描画後に生成処理を加える
DLSS 5は、NVIDIAが「3D-Guided Neural Rendering」と呼ぶ生成型のニューラルレンダリング技術だ。「NBA 2K27」では、GeForce RTX 50シリーズを対象として2026年9月3日に正式提供が始まった。
NVIDIAの技術資料によると、DLSS 5はゲームが従来の方法でレンダリングしたフレームやモーションベクトルなどを入力として受け取り、1ステップのピクセル空間拡散モデルを使って最終的な映像表現を生成する。肌の表面下散乱、髪への光の当たり方、接触部分の影などを補いながら、ゲーム開発者が設定した形状や演出を維持する設計となっている。
従来のDLSSには、低い内部解像度から映像を再構成して描画負荷を抑える機能が含まれる。これに対し、DLSS 5の3D-Guided Neural Renderingは、従来のレンダリング結果に生成処理を追加する。Tensor Coreを使う推論処理がフレームごとに加わるため、設定や場面によってはGPUの消費電力が大きく増える可能性がある。
NVIDIAは、DLSS 5が同社にとって最も計算負荷の高いモデルであり、2026年3月の発表以降に処理性能を5倍に高めたと説明している。今後もRTX 50シリーズ向けの最適化とモデル更新を進め、その後にRTX 40シリーズへの正式対応へ取り組む方針だが、RTX 40シリーズ版の提供時期は示していない。
■利用時は高負荷の推移に注意
今回の事例から確認できるのは、DLSS 5を使用していたMSI製RTX 5090でコネクターが溶損し、その前後にカード全体の消費電力として最大613.5Wが記録されたことだ。DLSS 5の有効化と消費電力の上昇には時間的な関連がある一方、コネクターへ実際に流れた電力や端子ごとの状態は明らかになっていない。
「NBA 2K27」のDLSS 5は任意で有効にする機能であり、ゲームの映像設定から無効化できる。2Kの公式サポート情報では、動作負荷がプレイ体験に影響する場合、設定画面またはゲーム中のキー操作でニューラルレンダリングをオフにできるとしている。
GPU-Zによる監視は、カード全体の負荷がどのように変化するかを把握する手掛かりにはなる。ただし、600Wという数値だけをコネクターの安全性を判定する境界として扱うことはできず、コネクター内部の局所的な発熱を検知できるものでもない。
焦げた臭い、コネクター周辺の変色や変形、動作の異常などが見られる場合は使用を続けず、カードやケーブルのメーカーへ点検を依頼する必要がある。今回の個体についても、故障品の調査やNVIDIA、MSIからの説明がなければ、DLSS 5と溶損の因果関係を確定することはできない。
元記事: RTX 5090 Connector Melts During DLSS 5 Test: Correct Installation No Longer Enough
