ザクセン・アンハルト州での大勝を受けて記者会見するAfDのアリス・ワイデル共同党首(9月7日、写真:AP/アフロ)
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2026年9月8日付)
ドイツの地方選挙が全世界で注目されることはめったにない。
だが、6日の東部ザクセン・アンハルト州議会選挙で見られた極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持急増は本当に世界的な意味を持つ出来事だ。
AfDのザクセン・アンハルト支部はドイツの国内情報機関から極右過激派と認定されている。同党の一部はナチス関連のイメージやスローガンを掲げたりする。
それにもかかわらず、ロシアと米国――ナチズムを倒すうえで自国が果たした役割に大きな誇りを持つ2カ国――の政府はAfDの台頭に喝采を送っている。
ロシアと米国の思惑
ウラジーミル・プーチンの取り巻きはザクセン・アンハルトでのAfDの躍進を待ちわびていた。
トランプ政権とロシアをつなぐ重要な仲介役のキリル・ドミトリエフは先月、興奮した様子で「ドイツは9月6日に目覚める」とX(旧ツイッター)に投稿した。言葉遣いと投稿の日付はいずれも意味を持つようだった。
「ドイツよ、目覚めよ」はナチスのスローガンだった。
ドミトリエフの投稿の日付は8月23日で、ナチスドイツとソビエト連邦が1939年のモロトフ・リッベントロップ協定(独ソ不可侵条約)に調印した記念日だ。
これは単に残念な偶然の一致だったのかもしれない。あるいは偶然ではなかったのかもしれない。いずれにせよ、ロシアにはAfDを支援する具体的な理由がある。
同党はウクライナに対するドイツの援助を打ち切り、ロシアとの経済的関係を修復し、ドイツの学校でのロシア語教育を増やすことを求めて活動している。
ザクセン・アンハルト州のある党幹部は、事務所にあるロシア軍のマグカップに記者が気づいた時、狼狽した様子を見せた。
ドミトリエフはAfDの応援団であることに加え、クレムリンとホワイトハウスの仲介役でもある。
プーチンが6日、トランプ政権の和平交渉担当特使を務めるスティーブ・ウィットコフをモスクワに迎えた時、円卓を囲んだ5人の主要人物の1人がドミトリエフだった。
クレムリンと同様、トランプ政権もドイツ極右と精力的に関与してきた。昨年のミュンヘン安全保障会議では、米国副大統領のJ・D・バンスがAfD共同党首のアリス・ワイデルと会談した。
それも、あてつけのように当時ドイツ首相だったオラフ・ショルツとは会う時間がないと言いながら、だ。
昨年暮れに公表された米国の国家安全保障戦略(NSS)は、主に大量移民への寛容さのために欧州が「文明の消滅」に直面していると主張していた。
2015年の難民危機で当時のドイツ首相のアンゲラ・メルケルが対応をひどく誤ったことには疑問の余地がない(筆者は当時もそう書いた)。移民流入の急増はAfDへの支持を伸ばすうえで大きな役割を果たした。
AfDの党幹部は今、「再移住」を掲げて政治活動を展開している。これは不法移民の送還から移民の系譜に連なるドイツ市民の追放に至るまであらゆることを意味しうる、都合のいい曖昧な言葉だ。
