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     米Arctic Wolf Networks(アークティック・ウルフ)は9月9日、日本およびグローバルにおけるAIとサイバーセキュリティの現状に関する最新の調査結果を発表した。発表には同社アドバーサリー・リサーチ(攻撃者調査)担当ディレクターのJustin Moore(ジャスティン・ムーア)氏が登壇し、日本市場の特有の動向と課題について解説した。

     調査は世界17カ国、1350人のセキュリティおよびITリーダー(経営幹部、オーナー、バイスプレジデントなど)を対象に実施されたもので、日本からは75人が回答している。

    さまざまな市場における共通の懸念点
    さまざまな市場における共通の懸念点

     日本の組織におけるサイバーセキュリティ上の最大の懸念事項は、「マルウェア/ランサムウェア、およびデータ窃取/恐喝」で37%に達し、世界平均の25%を12ポイント上回った。また、「ビジネスメール詐欺(BEC)」への懸念も8%(世界平均5%)と高く、差し迫った具体的な脅威を強く意識していることがうかがえる。一方で、「クラウドアクセスと設定ミス」に対するリスク懸念は4%(同10%)にとどまった。

     重大なサイバーセキュリティインシデントの経験について、日本の組織の56%が「過去12カ月に被害を受けた」と回答した(同63%)。そのうち78%が「時間または生産性の損失」という実害を被っている。

     この56%の内訳を見ると、28%が「確実にサイバーセキュリティインシデントを経験している」としているが、残りの28%は「インシデントを経験したであろうが、詳細は分からない」という回答になっている。特筆すべきは、「検知されていないサイバーセキュリティインシデントが発生していた可能性がある」と答えた割合が日本市場では19%に上り、世界平均の7%と比較して12ポイントもの開きが存在する点だ。 Moore氏は「自分が全てを見ることができていないと正直に認識しているリーダーが多い。しかし、そうした認識を持つリーダー自身が、その改善を求めている」と指摘する。

     加えて同氏は、「最も心配しているのは、すごく自信を持っている組織。その自信の裏付けを一度もしたことのない組織だ」と話す。さまざまなシステムを監視していても、リーダーが現状を正しく受け止め、不明確な要素があることを認識しなければ監視の意味がなくなる。

     日本ではランサムウェアに対するサイバーセキュリティの懸念が高い一方で、インシデント発生後の影響が継続する期間は世界平均より長く、この部分がビジビリティー(可視性)のギャップになっていると指摘した。日本では50%の組織が法的義務に基づいてサイバーインシデントを開示しており、これは世界平均の45%を5ポイント上回った。また、国内のサイバーセキュリティ規制および義務的な報告要件を全面的または大部分において厳格に順守している日本の組織は88%に上った。この結果について同氏は、「日本はコンプライアンスは確立しているが、レジリエンスについてまだキャッチアップしている状況だ」と分析している。

     今後12カ月の間でサイバーセキュリティ戦略を推進する主な要因として、世界では「データ変革と安全なAI導入(41%)」や「急速なAIの進化への対応(35%)」が上位に挙げられた一方、日本では「セキュリティ意識の文化の醸成」が48%と最も多く、世界平均の26%を大幅に上回る結果となった。

    サイバーセキュリティ戦略を推進する要因
    サイバーセキュリティ戦略を推進する要因

     大規模言語モデル(LLM)の導入において、日本の組織の89%が何らかの利用ポリシーや制限を設けて承認・管理を行っている(世界平均95%)が、「組織として正式な取り組み方針を定めていない」と回答した日本企業は7%で、世界平均の1%を上回っている。

     他方、セキュリティ運用戦略の中核にAIを据えていると答えた日本企業は21%(世界平均14%)で、「複数のセキュリティワークフローにAIを組み込んでいる」と回答したのは13%(世界平均20%)となり、限定的な領域でAIが使われていることが分かった。

     また、AIに対する進化の期待においては、日本と世界で「検知能力の改善」「データの相関分析と解析」「アラートや誤検知の削減」などが挙げられたが、「AIの導入によって、セキュリティ担当者の離職や疲弊を軽減できる」と期待する日本の組織は53%で、世界平均の66%を13ポイント下回った。同氏は、「日本のリーダーは、AIを活用して業務処理能力の向上を図っており、現行の担当者の疲弊や離職への対応にAIを活用することは考えていない」と分析する。

     「脅威の特定」においては、AIが人間より優れていると考える割合は日本で55%となり、世界平均(72%)より17ポイント低い。アラートの集約やデータ処理といった大量のタスクではAIの処理能力が高く評価される一方、背景情報の解説や最終的な意思決定・判断に関しては、人間によるコンテキスト理解への信頼が依然として高い。

    AIの能力に対する信頼
    AIの能力に対する信頼

     深刻なサイバーセキュリティ人材不足への対応策として、グローバルでは「手作業による業務負荷を軽減するための自動化やAIへの投資(59%)」や「社内トレーニングや資格取得への投資(57%)」が主流となっている。一方、日本企業では「アウトソーシングやマネージドサービスの活用(57%)」が最も多く挙げられ、世界平均の39%を大きく上回った。

     実際に、日本企業の57%が人材不足への対応としてアウトソーシングやマネージドサービスを利用している。背景には、24時間体制の監視能力を自社単独で維持できない組織が9%(世界平均3%)存在することに加え、脅威への対応能力に十分な自信を持てていない組織が19%(同4%)に上ることがある。

      Moore氏は、アウトソーシングには「自社のデータやセキュリティ運用を外部に委ねることへの懸念が伴う」としながらも、そうした不安は客観的な指標に基づいて評価すべきだと指摘する。具体的には、インシデントの検知に要する時間や対応完了までの時間、監視範囲(カバレッジ)などを継続的に測定し、その成果を基に判断することが重要だという。その上で同氏は、信頼できる外部パートナーとの協力体制を構築することが、成熟したセキュリティ戦略につながるとの見方を示した。

    サイバーセキュリティ人材不足への対応
    サイバーセキュリティ人材不足への対応

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