2026年9月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  

    2024年の『BLUFF(ブラフ)』に続き東上主演2作目となる風間柚乃は、堂々とした存在感で魅せる

    9月13日に宝塚歌劇団・月組による『ミュージカル「稲妻開化譚-イナズマカイカタン-」』が、「兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール」(兵庫県西宮市)にて開幕した。

    主演は風間柚乃(かざま・ゆの)、この会場でのセンターを務めるのは初めてとなる。2014年に宝塚歌劇団入団後、早くから芝居巧者として注目を集め、悪役からコミカルなショーシーンまで自在にこなしてきた月組男役スターだ。

    近年月組と縁が深い、齋藤吉正作・演出のオリジナル作品。近代化が進む明治18年の帝都東京、昼は新聞記者、夜は謎多き怪盗「稲妻小僧」として暗躍する東瀬風馬役を、風間が魅力的に演じている。

    稲光とともに登場し、理不尽な明治の世を変えたいと心を燃やす姿は、まさに痛快活劇のヒーロー。政治家の醜聞を記事にして庶民の人気を集める表の顔も、役人や高官を狙う義賊としての裏の顔も、頼もしく格好いい。

    小さな新聞屋「新聞開花反」の主筆を務める東瀬風馬(中央)は、世直しのつもりで記事を書き続け、民衆の心をつかむ小さな新聞屋「新聞開花反」の主筆を務める東瀬風馬(中央)は、世直しのつもりで記事を書き続け、民衆の心をつかむ

    さらに戊辰の戦で二本松少年隊として戦った過去をしっかりと役柄に刻み、警視を務める父・東瀬想馬(英かおと/はなぶさ・かおと)との確執も、方言をまじえてリアリティーのある芝居に落とし込む。家族の再生が盛り込まれた人情劇の厚みを感じさせるのは、やはり風間をはじめ月組メンバーの芝居力があってこそ。

    風馬の記事に反発し、ケンカ腰で彼に絡む元気いっぱいの士族の娘・岩城麻里を演じているのが白河(しらかわ)りり。麻里は稲妻小僧の大ファンであり、ポップなリズムで「推し活!」と歌うシーンなど愛らしさも充満。少女漫画のヒロインのような麻里との、胸キュンな絡みを見せる風間がとても新鮮で、ふたりの歌唱力が重なり響き合うデュエットは、至福のひとときだった。

    風馬の裏の顔を知らない麻里(左)。ふたりの自然に惹かれ合う様子がテンポ良く描かれる風馬の裏の顔を知らない麻里(左)。ふたりの自然に惹かれ合う様子がテンポ良く描かれる

    風馬と同じく二本松少年隊の生き残りで、親友の仇を討つために裏街道を歩いてきた田丸信造を演じるのは、男役スターの彩海(あやみ)せら。陰のある雰囲気も醸し出す新境地を見せながら、根は純粋でまっすぐな男を好演した。旧友という間柄だからこそ感情をぶつけ合う、風間と彩海とのデュエットも聴かせる。

    風馬の裏の顔を知る日本の宰相・伊藤博文(佳城葵/かしろ・あおい)は、盗まれた黄金の飾り皿(ツィーアテラー)を奪い返してほしいと風馬に依頼する。飾り皿を盗んだ犯人は誰なのか。そこに隠された国家機密とは――。

    政治家たちの思惑がうごめく明治の世を舞台に、稲妻小僧の仲間や、麻里が主催する私塾「伊予松山義塾」に集まる若き才能たちの日常も生き生きと活写し、「移りゆくもの、変わらないもの」が描かれる。

    それは、急速に時代が進んでいる今の私たちにも響くメッセージだ。遊び心あふれる台詞や笑いも散りばめられ、体感速は短く感じられた。

    和装洋装を着こなして役を息づかせた月組メンバーが、フィナーレではきらびやかなロングの法被に身を包み、三味線ロックのような和テイストの音楽で踊り抜く。その格好良さは風間と白河のデュエットにも引き継がれ、最後は風間が一人で舞台を掌握する。このフィナーレの間、ミラーボールが回り続ける同劇場での初の宝塚歌劇公演。新鮮な「風」を運んでくる、明るく爽やかな舞台だ。

    迫力あるフィナーレの群舞を率いる彩海せら(中央)。精悍さが増し、生き生きとした表情を見せる迫力あるフィナーレの群舞を率いる彩海せら(中央)。精悍さが増し、生き生きとした表情を見せる

    『稲妻開化譚-イナズマカイカタン-』は、「兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール」で9月22日まで上演後、10月4日~10月10日に「KAAT神奈川芸術劇場」(神奈川県横浜市)で公演。9月21日15時公演はライブ配信がおこなわれる。

    取材・文/小野寺亜紀

    Share.

    Comments are closed.