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    9月9日(アメリカ時間)、アップルは「iPhone 18 Pro」をはじめとした新製品群を発表、12日から、大半の製品について予約を開始した。

    今年の新製品というと、折りたたみ型である「iPhone Duo」に注目が集まっている。それも当然だとは思う。

    一方で、今年のアップル製品で注目すべきはそこだけではない。出ていないものも含めて、考えるべきことは多い。

    僚誌・AV Watchで速報的な考察と解説は掲載しているが、ここではより幅広く考察してみたいと思う。

    「iPhone Duo」の売れ行きはどう評価すべきか

    今年のiPhoneでもっとも大きな注目といえば、折りたたみ型のiPhone Duoだろう。36万円台から、という価格も、別の意味で話題だ。

    iPhone Duoを発表する、アップルのジョン・ターナスCEO

    高価であることから「これは普及するのか、定着するのか」という議論がある。

    しかし筆者は、その方向性は少し的外れだ、と考えている。

    比率はおそらく、そこまで大きく変わらないだろう。折りたたみ型については、今年だけで言えば、世界のスマホ出荷全体の2%、日本でも1.5%程度と予想されている。これを大幅に超えるのは難しい。現状はシェアの多くをサムスンが占めており、そこに増加分としてアップルが加わることになるが、だとしても、アップルがサムスンのシェアを超えるかどうかは微妙だ。保守的に考えれば難しいだろう。

    では、だから意味がないのか、というとそんなことはない。

    こうした製品を買う人は付加価値を求めるファンだ。その数は少ないが、確実に一定数はいる。数を増やすには、ディスプレイを中心とした部材のコストを下げる必要があり、短期的には難しい。しかし、高付加価値な製品として評価が定まれば、それはそれでいい。Duoを含めた折りたたみ型の成功を評価する際の基準は、スマホ全体でのシェアが大きく拡大するかどうかではなく、製品自体が評価され、販売の絶対数が順調に増えるかどうか、という点になってくる。

    iPhone Duoの発売は10月23日だ。それまでに製品の評価がどうなるか、そして、発売日後、順調に売れていくかどうかを見定める必要がある。

    iPhone Duoスタンダードなき今秋のiPhone 価格上昇にどう対応するのか

    それ以上に、今年、特に現段階で問題となるのは「先行して発売されるのがProのみであること」「iPhone自体の価格が上がっていること」だ。

    毎年、アップルは「スタンダード」と「Pro」の両モデルを用意する。スタンダードというのは、昨年でいえば「iPhone 17」がそれに当たる。

    今年「iPhone 18」に当たるスタンダードモデルが出ていないのは、当然、アップルなりの判断あってのものだ。だがもちろん、アップルは理由についてコメントしていない。

    iPhone 18 Proシリーズ

    とはいえ、予想はできる。

    理由はおそらく「メモリー高騰による部材不足」だ。ご存知のように、昨年以降のメモリー高騰は緊急事態となっている。増産もまだ間に合わないし、価格も上がっている。

    アップルは毎年、この時期から大量のiPhoneを一気に出荷するわけだが、例年通りの台数を出荷できるだけのメモリーを調達するのは、価格的にも数量的にも難易度が高い。

    だとすれば、まずこの時期には、秋に販売数量が多い「Pro」などのハイエンドモデルに注力し、今後スタンダードモデルを投入する……という流れになるのだろう。スタンダードモデルがいつ発売になるのかはもちろん、現時点ではわからない。噂では「春」と言われているが、あくまで「確度の高い噂」と考えるべきだろう。

    いち早くハイエンドのiPhoneを買おうと予約日を待っているようなファンには、あまり影響はないと思われる。これは「高価ではあるがiPhone Duoに一定の支持が集まるだろう」という予測でもある。

    一方で、今年のiPhoneは全体に高価になっている。特に、携帯電話事業者を介して購入する場合、昨年との価格差はかなり大きい。

    それが結果として、どんな値段でも買うだろうファン「ではない」人には影響を与える。iPhoneの人気自体が下がっているとは思わないが、買い替えタイミングや買い替える機種について悩んでいる人は少なくないはずだ。このことが販売数量に与える影響の方が、「今のiPhone」にとっては大変な課題だ。

    総務省による規制はあるものの、MNPやゴールドカードとの組み合わせで割引が存在する。仕組みは複雑だが、毎月の支払額を減らすことは可能だ。一方、単純な売価であればアップルからの直販がもっとも安い。下取りや分割払いなどの組み合わせも検討してほしい。

    スタンダードモデルがないことの不利や、価格上昇の影響はアップルも織り込み済みだろう。その上で、カメラにこだわってバッテリー動作時間を長くしたProシリーズ+折りたたみのDuo、というハイエンドを軸にすることで、単価をアップして収益性を確保することを考えているのかもしれない。

    アップルの差別化点は常に「ソフト」

    重要になるのは、「アップルがどこを差別化点としているのか」ということだ。

    ハードウェアスペックで言えば、アップルはいつも先頭ランナーではない。今回もそうだ。

    可変絞りも、中国系メーカーのハイエンドでは定番。折りたたみはサムスンのお家芸だ。

    その上で「組み合わせた価値」、別の言い方をすれば、ソフトウェアから生まれる価値でいかに差別化するかがアップルの持ち味だ。UIの表示含め、コストをかけて違いを生み出していくのがアップルの狙いである。

    問題は、その狙いがちゃんと消費者に伝わるのか、という点だ。

    現状を見る限り、iPhone 18 Proの「カメラとバッテリー動作時間」という差別化は、まだ認知が弱いように見える。実際に使わないと価値が見えづらいところなので、発売前の今は無理からぬところがある。

    iPhone 18 Proは可変絞りを搭載

    iPhone 18 Proシリーズで採用される新しいSoCである「A20 Pro」シリーズには、性能の大幅な向上と、消費電力・発熱の低減が期待できる。アップルはカタログにビデオストリーミング再生時間の形でスペックを記載する。iPhone 17 Proシリーズと18 Proシリーズを比較した場合、iPhone 18 Proでは3時間、iPhone 18 Pro Maxでは6時間と大幅な増加が見込まれる。こうした部分は「だからすぐ買い替える」というよりも、「買い替えるタイミングで後押しする」ような効果と考えるべきかもしれない。

    新しいiPhoneに搭載される「A20 Pro」

    iPhone Duoについては、ある意味わかりやすい。機能以上に「どう見えるか」の部分で差別化されている。アップルがここまで、折りたたみ向けにiOSの中身を書き換えてくると予想した人は少ないのではないか。

    iPhone Duoでは、UIコンポーネントの一部を横に移動することで表示領域をカバーできるよう、OSが書き換えられている

    課題は、iPhone Duo向けにアプリを最適化する行為が、どれだけ加速するかという点だ。アップルは今年6月のWWDCの時点で、「アプリは画面サイズが可変になるように作る」ことをルールとして据えた。

    だから、ごくごく基本的な部分については、そこまで大きな負担なく対応もできるだろう。新たにアップデートしてApp Storeに登録するには必須の要素なので、「全く対応していない」アプリは減っていくことと思う。

    しかし、多様で複雑なiPhone Duoの画面構成に完全な最適化を行なうには相応の努力が必要になる。iPad向けの最適化すらしないところがある中で、同じく少数派であるiPhone Duoへの最適化を進めるアプリメーカーはどれだけあるだろうか? 一定数はいると思うが、楽観的に考えるべきではない。

    iOS 27以前向けに作られたアプリと、iPhone Duo用に作られたiOS 27.1向けのアプリでは見え方が大きく変わるiPhone DuoではUIが多彩なため、それぞれに合わせた動作検証と最適化は必要になる

    先行しているAndroidの場合でも、最適化はなかなか進まない。OSに細かな設定項目を追加し、最適化されていない部分をアプリごとにカスタマイズする、という対策が行なわれているが、アップルはどうだろう? おそらく、「OS内に大量の設定を新たにつける」判断はしないのではないだろうか。

    だとすると、アプリ開発者が「最適化したくなる」状況を整えることがなにより重要だ。アプリの販売実績でいえば、Androidよりもアップルの方が、有料アプリ販売量や、基本利用無料のアプリに追加課金をする顧客が多いことで知られている。その伝統が今回も生きて、対応アプリが増えることになるのだろうか。

    この部分は、少し長い目線で考える必要がある。アップルとしても、折りたたみ型は1世代で普及させるつもりもなければ、製品を終えてしまうつもりもないだろう。

    アップルはこれまでも、「やめないこと」で市場を制覇してきた。スマートウォッチもタブレットもそう。他社が撤退しても毎年製品を出し、ニーズを掘り起こしてヒットさせ、世界中で大きなシェアを確保するに至った。

    折りたたみ式についても、同じようなアプローチを考えているのではないだろうか。

    Apple Watchの「Audio Intelligence」に注目せよ

    筆者個人としては、iPhone以上に、Apple Watchに注目している。非常に大きなところに踏み出したと思うからだ。

    Apple Watch Series 12とApple Watch Ultra 4

    AV Watchの記事でも解説したことだが、改めて深く解説してみたい。

    今回のApple Watch新製品である「Apple Watch Series 12」「Apple Watch Ultra 4」では、今後大きなアップデートが行なわれる予定になっている。

    それが「Audio Intelligence」という機能だ。Apple Watchが捉えた周囲の音をオンデバイスAIが把握し、生活に活かしていくというアイデアである。

    「Apple Watch Series 12」「Apple Watch Ultra 4」に搭載される「Audio Intelligence」に注目

    例えば「サウンド認識」では、周囲でドアベルやアラーム、サイレンなどが鳴ると利用者に通知する。ただこの機能自体は、スマホやスマートスピーカーにもすでにあるものなので、そこまで珍しくはない。

    より大きいのは「Live Rewind」「Siri Recap」と呼ばれる機能だ。アメリカでは年内にベータ版として提供され、日本での提供はそのあとになる。

    Live Rewindでは、Apple WatchのDigital Crownを2回押し(ダブルプレス)すると、直近15秒分の会話を「テキストでApple Watchの上に表示」してくれる。また、そこからSiri AIに対して質問したり、記録をお願いしたりもできる。

    さらにSiri Recapでは、周囲の会話のログから自動的に、ミーティングなどの概要をまとめてくれる。

    会話を自動的にまとめるSiri Recap

    要はどちらも、周囲の会話をApple Watchが常に聞き取り、音声認識を行なった上で、そのテキストデータをAIが処理して提示する……というものだ。

    この種の機能は、アップルが初めて提案するわけではない。

    最近は「AI連動の常時録音デバイス」とでも言うべきものが増えてきた。「SwitchBot AIマインドクリップ」はその好例だ。

    昨年Metaが買収した「Limitless」も、そうしたデバイスを作っていた企業だ。

    他の録音系デバイスでも、ピン型で小さなものをつけっぱなしにする……というパターンは少なくない。

    自分が耳にしたはずの内容だが、人間は忘れてしまうことや聞き取れないことも多い。その部分を「耳を持ったAI」にカバーしてもらうことで生活をサポートしてもらおう……というのは、AI連携を考える上では基本的な発想と言ってもいい。

    アップルはそっと「AIデバイス時代」へと足を踏み出した

    では、アップルがやろうとしていることと他社のアプローチはどう違うのだろうか?

    ここで考えるべきは、「常にマイクが周囲を聴いている・録音しているとはどういうことか」という点だ。

    Live Rewindは、操作した時から録音・文字起こしが行なわれるわけではない。常にApple Watchのバッファに録音が行なわれていて、「Digital Crownをダブルプレスした時から15秒さかのぼる」形で文字起こしが表示される。Siri Recapでは、それが「会議」のように、長くまとまった会話の単位で行なわれる。

    どちらにしろ、Apple Watchは常に「音を聴いている」のだ。

    そして、ここで結果が「文字で残る」ことから、この機能について「ある種の盗聴になってしまうのでは」という指摘もある。

    それもわかる。

    もちろん、アップルはこの点で一定の配慮をしている。

    プライバシー配慮のため、Audio Intelligence系の処理には4つの基本原則がある

    まず、録音しているといっても、録音音声自体にはアクセスできない。取り出すこともできないし、聞くこともできない。

    次に、誰が話したかの認識・識別は行なわれない。

    そして、機能自体はオンデバイスAIで処理され、クラウドにデータは残らないし、AIの学習にも使われない。これはアップルのAIである「Apple Intelligence」の特徴であり、Audio Intelligenceもその一部ということになる。

    すなわち、Audio Intelligenceを介して記録される情報は「AIがマイクを耳として扱い、認識した後のテキスト」なのだ。多くの「常時録音デバイス」が、文字通り録音していることとは大きく異なる。

    この点は、アップルが「AIに目や耳を持たせる」上で引いた1つの線、と考えることができる。

    録音していつでも取り出せると、それは確かに盗聴的側面が出てくる。録音は相手の許可を得てすべきことであり、その原則を外れる可能性がある。

    一方で、AIが人間を助けるデバイスが増えていくには、AIが人間の状況を把握するため、目となり耳となるセンサーが必須になる。センサーとはマイクでありカメラだ。そこでの情報を処理するには、音声や画像の取得が必須となる。

    現在、カメラ搭載のスマートグラスでは、「どこでも無許可で撮影できてしまうし、撮影していることが分かりづらい」ことから、「盗撮的である」との批判がある。実際、アメリカのセレブリティが行くようなナイトクラブなどでは、スマートグラスを装着していると、セキュリティから入場を断られるという。

    では、「マイクやカメラをつけたデバイスは全てダメ」なのか? それもまた極端な話だろう。

    Amazonの「Echo」やGoogleの「Google Nest」、アップルの「HomePod」のようなスマートスピーカーは、ウェイクワードである「Alexa」や「ねえGoogle」、「Hey Siri」などの言葉を待ち受けている。

    待ち受けているということは「音を聴いている」ということであり、「スマートスピーカーは盗聴器だ」というような言い方をされたこともある。

    だが実際には、ウェイクワード以前の音声は、聴いているが認識されていないし記録もされていない。サービス改善のための録音などの扱いから「プライバシー侵害である」との訴えが起こされたこともあるが、存在自体を「盗聴である」と見なす人は減った。要は「社会的に受容された」わけだ。

    カメラで言えば、ヘッドマウントディスプレイには「周囲の位置を把握する」ためのイメージセンサーがある。画像は常に取得されているが、それを「カメラであり盗撮である」という人はいない。

    今後のAIデバイスでの「AIの目と耳」は、どう扱われるのだろうか?

    単純に記録するのではなく、一定の配慮は必要になってくる。

    アップルが今回提示したのは、「AIの耳としてのApple Watchでは、録音音声をユーザーが取り出して扱うのではなく、書き起こしだけを使うことで、プライバシー上の懸念に対処する」という形だ。

    もちろん、これでも「文字で誰かが話していたことが残る」ので、盗聴的であるという指摘はできる。Apple Watchをつけている人は多いので、「ピン型の録音デバイスと異なり、見分けることはできない」という指摘もあるだろう。

    アップルとしては、全員が常に「音声を記録している」状態にするのではなく、「指示した時だけ文字起こしをする」「その際、誰が言ったかは記録しない」ことで対応しようとしている。特にSiri Recapでは、Apple Watchからタッチ操作した時だけ動かす、ということも可能になっていて、「常に記録しているのではない」という建て付けを強調している。

    操作した時だけSiri Recapを動作させる設定も可能

    アップルの引いた「一線」がどう評価されるかは、機能が出てからどのような感想が出てくるかを確認する必要があるので、結論を語るのは時期尚早だ。

    しかし、AIデバイスが増えていく中、メーカーとして確実な「一線」は必要になってくる。他の大手プラットフォーマーより先にアップルがやってきた……というのもよくわかる。

    そして、Audio Intelligenceと似た議論は、「AIのためのカメラ」でも巻き起こることだろう。逆に言えば、「画像として記録するのではなく、画像からAIが認識したこと」として記録する可能性がある、ということではないかと考えている。

    AIデバイスは色々な企業が開発中であり、今後どんどん出てくるだろう。

    その中で「AIの目と耳」の問題は確実にクローズアップされる。そのための議論の一端を、今回アップルは、そっと投げかけているのではないだろうか。

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