ゲームにおいては、特に欧米では生成AIの利用に風当たりが強い傾向もある。そうしたなかで、“企業が意図しないかたち”で生成AIの利用がおこなわれたとの報告が、物議を醸している。今回、Steamの人気街づくりゲーム『Timberborn』について、同作のAI製広告が勝手に配信された事例が共有された。
発端となったのは、9月14日に海外掲示板Redditに投稿されたとあるポストだ。投稿したユーザーは、『Timberborn』の広告用画像2枚を紹介。画像の左下にはそれぞれ「AI-generated」とのラベルもつけられており、いずれもAIによって作られた画像のようだ。投稿者によれば、これらは開発元であるMechanistryの公式TikTokアカウントから発信されていたものとのこと。すでに人気を確立している同作のマーケティング手法としては何か不自然に感じたとして、コミュニティに状況を共有した。
Mechanistryでコミュニケーションマネージャーを務めるMichał Amielańczyk氏はこの投稿を見て、驚きの反応を示した。同氏は、TikTok側が広告の仕組みを変更したようだと説明しており、これによってキャンペーンの一環としてAI広告が自動生成されるようになったという。同社はどうやら、従来のように広告キャンペーンで使用する素材として、本作のトレイラーを指定しただけだったそうだ。
これらの広告は意図せず勝手に配信されたものであり、配信前にMechanistryによる事前の確認や承認なども経ていなかったとのこと。同社はすでに広告は無効化済みだといい、今回の不注意を謝罪した。
TikTokによって意図しないAI広告が配信されたとする問題は過去にも報告されている。『Night in the Woods』や『TUNIC』などの作品のパブリッシャーとして知られるFinjiのCEO・Rebekah Saltsman氏は今年2月、同社の作品を宣伝するAI製広告が無断で配信されていることを、ユーザーのコメントをきっかけに知ったと明かしていた(IGN)。
特に、同社が今年10月に発売を予定する新作『Usual June』を扱った広告では、主人公Juneの公式アートが大きく改変され、黒人女性に関するステレオタイプを助長する表現が盛り込まれているとして波紋を広げていた。
*画像は『Usual June』公式スクリーンショット
なおIGNによれば、FinjiとTikTokのカスタマーサポートのやり取りの中では、FinjiのTikTokアカウントで「Smart Creative」や「Automate Creative」などのAI関連機能がそれぞれオフになっていることが確認されたという。具体的にどの機能が影響したかは判明していないものの、たとえばAutomate Creativeについては、TikTokの最新Symphony AI技術を活用し、アップロードしたクリエイティブアセットを自動で最適化するといった説明がなされている。問題となった表現がこれによって生成された可能性はあるだろう。同社はそもそもこれらの機能をオンにした覚えもないとしており、意図せずAI広告が配信されていたという点は『Timberborn』の事例と同様のようだ。
『Timberborn』
学習データの不透明性などから、昨今のゲーム業界では生成AIを巡ってユーザーの受け止め方も分かれている。勝手にAI広告が配信されることにより、その企業のAI利用に対する姿勢が意図しないかたちで判断される可能性はある。さらに前述したFinjiの事例のように、適切な監修を経ずに不適切と受け止められうる表現を含む広告が配信されれば、企業や作品の評判を損なう恐れもあるだろう。いずれにせよ、今回のMechanistryの説明やFinjiを巡る報道だけでは、原因や経緯の全容が明らかになっていない点には留意したい。今後、TikTok側による説明や原因の解明が期待される。
