アップルが、初のフォルダブルスマホ「iPhone Duo」を発表しました。例年とは異なり発売は10月23日と、まだ少し時間がありますが、その間にアプリの対応なども進んでいくものとみられます。開くと横長ディスプレイになるほか、iPadでおなじみのApple Pencilに対応する予定もあるなど、意欲的に新機能を取り込んでいます。
アップル初のフォルダブルスマホとなるiPhone Duoが、10月23日に発売される。この36万4800円という価格をひも解いていく
開いたときにフラットになるよう、初物ながら精緻に作り込まれたヒンジやディスプレイなども、アップルならではのこだわりと言えるでしょう。
一方で、その価格は最小構成でiPhone史上最高となる36万4800円~となってしまいました。最上位の2TB版に至っては、57万4800円になります。この価格をどう捉えればいいのかを読み解いていきます。
最上位モデルとして追加されたiPhone Duo、機能面は充実も36万超えに
一般的に、フォルダブルスマホは通常タイプのスマホと比べると高額になりがちです。理由の1つは、ハイエンドモデルとして開発されるためで、現時点では、そのメーカーのラインナップの中での最上位モデルに近いスペックを備えていることが多くなっています。
iPhone Duoも例外ではなく、チップセットには「iPhone 18 Pro」と同じ「A20 Pro」を採用。カメラは望遠に非対応、Proの可変絞りもなく、最上位とは言えないものの、処理能力は最上位クラスと言えます。
iPhone 18 Proシリーズと同じA20 Proを搭載しており、ゲームも滑らかに動く
それに加えて、通常のスマホとは異なり、フォルダブルスマホはたたんだ状態でも使えるよう、ディスプレイを内側と外側に2つ搭載しています。iPhone Duoも、アウターディスプレイとして5.4インチのディスプレイを搭載。セルフィーやビデオ会議などで使うカメラも、内側と外側の両方にあります。特にインカメラはディスプレイの描画を妨げないよう、ディスプレイ下に配置されており、ここでもコストがかかっています。
閉じたときには5.4インチのアウターディスプレイを利用できる。インカメラも内と外、両方のディスプレイに搭載
さらに、ディスプレイを折り曲げるのを支えるヒンジを組み込んだり、それがなるべくフラットに見えるようにチューニングしたりと、開発工程は従来のスマホ以上。しかもiPhone Duoの場合、フォルダブルスマホではまだ珍しいIP68等級の防水・防じんに対応しているため、ヒンジを保護するための機構がより複雑になっているはずです。
100以上の精密な部品を組み合わせて、滑らかな開閉を可能にするヒンジも、通常のiPhoneにはない部品。コストアップの要因になる
一方で、同時に発表されたiPhone 18 Proは256GB版が21万9800円、大画面モデルの「iPhone 18 Pro Max」でも23万9800円となっており、ついに20万円は突破してしまいましたが、30万円の“大台”は超えていません。iPhone Duoとの差額はiPhone 18 Proで14万5000円、18 Pro Maxで12万5000円もあり、「iPad mini」の256GB版が1台買えてしまう金額です。
iPhone Duoであれば1台にまとめてしまえて、かつポケットにも入り、半開きの状態で立てかけて使うことができるなど、iPhoneとiPadの2台持ち以上のメリットはあるものの、分散させておいたほうが冗長化も図れていざというときに安心です。集約できるメリットを取るか、分散して複数のデバイスを取るかは考え方にもよりますが、なかなか悩ましい価格設定と言えそうです。

折り曲げた状態で利用できるのは、これまでのiPhoneやiPadにはなかった魅力。2台持ちでも実現できない、フォルダブルならではの使い方だ円安傾向が反映された為替レート、1ドルは166円?
しかもアップルは、7月にiPhoneの価格を見直し、最新の為替レートを適用しています。昨今の円安が続く中、iPhone 17シリーズは、1ドル=160円超に再設定され、結果として日本での価格が上がってしまったのは、本連載で以前説明したとおりです。iPhone Duoにも、ここでの見直しを反映した為替レートが適用されています。
同モデルの256GB版は、米国だと1999ドル。1ドル差ですが、2000ドルを切った価格がつけられています。ただし、米国は州によって税率が異なるため、全米に提示するこの価格は税抜きです。日本での価格も条件をそろえて税抜きにすると約33万1637円(小数点以下は切り上げ)。1ドルあたり、約165.9円に設定されていることが分かります。
米国での価格は1999ドル。1ドルあたり約165.9円の設定だ
iPhone 17シリーズはおおむね160円台前半でしたが、iPhone Duoでは160円台半ばとなっており、より日本のユーザーには厳しい為替が適用されている格好。価格が高いと感じる要因の1つには、円安があることは間違いありません。
ただ、昨今では政府の対策が功を奏したのか、1ドルが150円台前半まで下がってきており、7月の価格改定時よりも円高に振れています。
そのレートより10円以上円安な為替レートが適用されていることも、iPhone Duoを高いと感じる理由の1つになっているかもしれません。本稿執筆時点の為替は、1ドル=154.78円。これを1999ドルにかけ、消費税を含めると、その価格は約34万円(百の位を切り捨て)になります。これでも高いことは高いのですが、いくぶん、競合他社のフォルダブルスマホには近づいているのも事実です。
現在、8月よりは円高が進んでいるため、iPhone Duoは必要以上に高くなってしまった感がある
価格に関しては、高騰するメモリ価格が反映されてしまっていることも考慮すべき点と言えるでしょう。実際、アップルは新たに投入するiPhone 18 Proや18 Pro Maxだけでなく、“現役”を継続した「iPhone 17」や「iPhone Air」などの価格も発表のタイミングで一律に値上げしています。
発表会などでの明確な説明はありませんでしたが、先のiPadやApple Watchの値上げと同様、これもメモリやストレージの価格高騰を反映したものと見て間違いありません。
ちなみに、iPhone 17は1万7000円、iPhone Airは1万2000円の値上げを行っています。今回の値上げは、日本だけでなく、米国などでも実施されているため、為替ではなく、部材費を反映したものと言えます。
iPhone 17やiPhone Airなどの既存モデルも、発表に合わせて値上げされた。メモリやストレージの影響とみられる他社はなぜ安い? 背景にある日本市場向けの特別価格
歴史にifはありませんが、仮にiPhone Duoが昨年登場していれば、為替レートは1ドル=145円程度、メモリやストレージの価格上昇もなかったため、米国での価格は1899ドル前後、日本円では30万円前後になっていたはずです。
スマホとしては高いものの、フォルダブルスマホとしては比較的見慣れた金額。その意味で、26年はスタートダッシュを切るのに、あまりよくないタイミングだったと言えるかもしれません。
とはいえ、ほかメーカーのフォルダブルスマホはこの状況下でも依然として30万円を下回っているのでは……と思われるかもしれません。実際、8月に発売されたサムスン電子の「Galaxy Z Fold8」は26万9880円、最上位モデルに位置づけられた「Galaxy Z Fold8 Ultra」でも29万6780円と、いずれも30万円を下回っています。
グーグルの「Pixel 11 Pro Fold」も27万9900円~。どちらも決して安くはありませんが、iPhone Duoの価格を見た後だと、割安に感じてしまうマジックがあります(笑)。
Galaxy Z Fold8は約27万円。iPhone Duoより9万5000円ほど安い
では、ほかのメーカーはフォルダブルスマホを安く作れているのかというと、決してそんなことはありません。むしろ、アップルと大きくは違わないことも分かります。そのうえで、サムスンやグーグルは、日本の市場環境を考慮し、あえて円での価格をこの金額に設定しています。日本市場攻略のため、利益を削ってでも価格を下げているというわけです。
米国での価格を比較すると、それがよく分かります。サムスン電子のGalaxy Z Fold8は約1900ドル、Z Fold8 Ultraは約2100ドル、Pixel 11 Pro Foldも約1900ドルです。Galaxy Z Fold8とPixel 11 Pro Foldに関してはiPhone Duoより約100ドル安く、Galaxy Z Fold8 Ultraに至っては、iPhone Duoよりも100ドルほど高く設定されています。
米国では、Galaxy Z Fold8 Ultraが2099.99ドルで、実はiPhone Duoより高い
本来であれば、3機種とも、iPhone Duo並みの価格になっていたとしても不思議ではありません。逆に言えば、サムスン電子、グーグルともに、日本ではある程度利益を度外視して、円安の影響を緩和していることが分かります。
また、サムスンに関しては本社が韓国で、ドル高の影響をダイレクトに受けにくいことも関係しているはずです(実際、韓国では2機種とも日本に近い価格で販売されています)。
こうした価格設定の違いも相まって、iPhone Duoが余計に高く見えてしまうのも事実。巧みに設計されたユーザーインターフェイスや、サムスンが捨ててしまったペン対応やアンダーディスプレイカメラなどを搭載しているのは魅力なものの、スマホに36万円超と聞くと二の足を踏んでしまう人がいても不思議ではありません。円安という逆風が吹く中、それを跳ね返せるだけの魅力があるかどうかが問われていると言えそうです。
