金谷CEOは冒頭の通り、「既存株主で今回同意いただいた方には、期待に応えられず、本当に申し訳ない気持ちがあります」と話す。
その上で、足元のIPO市場では高い評価がつきにくい中、「どのタイミングで上場することがakippaの成長につながるのか」を既存株主と議論してきたという。
金谷CEOは、今回の評価額を正当化するのではなく、株主への責任に繰り返し言及した。現在の水準で上場することを受け入れた以上、その責任は上場後の成長で果たすという。
「一定の覚悟をした上での決断です。上場する目的は、あくまで成長するため。上場後にしっかりと事業を大きく成長させ、結果を出すことで、既存株主にも報いていく責任を果たしたい」
スタンダードを選んだ理由「100億円基準」は関係ない
撮影:土屋咲花
今回の上場には、もう一つ特徴的な点がある。上場先として、グロースではなくスタンダード市場を選んだことだ。
スタートアップの上場先としてはグロース市場が一般的だが、なぜスタンダードだったのか。
金谷CEOは「今後、成長戦略の中核となるM&Aを実行する上で、スタンダード市場の方が売り手からの信頼を得やすいと判断しました」と説明する。
akippaは上場後の成長戦略の一つとして、後継者不足や設備のデジタル化などに課題を抱える中小のコインパーキング事業者や不動産管理会社などを対象とした、ロールアップM&Aを掲げている。
コインパーキング事業者らと話す中で、市場区分に対する受け止めの違いを感じたという。
「グロースよりもスタンダードの方が安定感があり、信頼できるという認識を持っていることが分かりました。だとすれば、われわれの戦略を進める上では、スタンダードの方がいいのではないかと判断した」
実際、スタンダード市場は上場基準として直近1年で1億円以上の利益が求められるなど、成長性よりも安定性が重視されているといえる。
グロース市場をめぐっては、2030年から上場維持基準が厳格化される。上場から5年経過後に時価総額100億円以上であることが求められる。
この「100億円基準」が市場選択に影響した面はなかったのか。Business Insider Japanの取材に対し、金谷CEOは
「5年で100億円は当然超えていく前提だったため、その基準自体は市場選択の大きな議論にはなりませんでした」
と否定した。
「スモールIPO」から時価総額1000億円へ
では、上場後にどう成長していくのか。
akippaは長期ビジョン「Boost500」を掲げ、自社事業の成長とM&Aを組み合わせ、数年以内に国内売上高500億円を目指す。
自社事業では、これまで中心だった駐車場の「事前予約」から利用シーンを広げる。現地で空いている駐車場をすぐに利用できる「ドロップイン」や、月・週単位で利用するサブスクリプションを展開。将来的にはEV充電など周辺領域への拡大も視野に入れる。
さらに、M&Aによる非連続成長も狙う。後継者不足やデジタル化への対応に課題を抱える中小の駐車場事業者などを買収し、キャッシュレス決済やAIなどを導入して収益力を高める「ロールアップM&A」を進める方針だ。
目線は国内だけではない。まずは国内で売上高500億円規模まで成長させ、その先には海外展開も見据える。公開価格ベースの時価総額約36億円での上場となったが、金谷CEOが掲げる目標は時価総額1000億円だ。
金谷CEOは、昨今のスタートアップのEXITをめぐって「大きく上場するか、大企業のグループに入るか、二極化しているように感じる」と話す。その中で、今回の上場については「私たちは『スモールIPO』という選択肢を選びました」と自ら位置づける。
「私たちは成長のために、この選択肢を選びました。スタンダード市場とはいえ、大きく成長することで、まずは時価総額1000億円を目指していきたい。それを一つのロールモデルにできればと思っています」
