津波避難タワーに避難者を力づけるイラスト
シルバーウィークに合わせて「高齢者の避難」について考えます。南海トラフ巨大地震の被害想定で、最も高い大津波が想定されたのが高知県です。太平洋に面したのどかな街・高知県黒潮町を襲う大津波は最大約33m、到達まで最短8分とされます。このわずかな時間に安全な場所へ避難する必要があります。震度7の激しい揺れが約3分続いた後、避難場所に行くのです。健常者でも大変ですので、高齢者など要支援者はなおさら。そこで避難にかかる時間を短くするために考えだされたのが「玄関先まで訓練」です。※データは2025年高知県の想定に基づく
黒潮町には9基の津波避難タワーがあります。佐賀地区のタワーは8階建てで、階段とスロープで上がれるようになっています。各階ごとにイラストが掲示されていて、住人に危機感を伝え、また力づけるメッセージとイラストが描かれています。
このイラストは近くの中学校の生徒によるもので、どれも力作です。このイラストボードを見るだけで、黒潮町では町ぐるみ・地域ぐるみで南海トラフ巨大地震に立ち向かっていることがわかります。
日本一短い!? 避難訓練「玄関先まで訓練」には3つの仕掛け
南海トラフ巨大地震対策として黒潮町で行われている「玄関先まで訓練」は、高齢者が居室から玄関まで移動する訓練です。移動距離は約5m、「日本一短い」と言われます。
東日本大震災では、高齢者の中には「もう先も短いし、わざわざ避難しなくても」などと、ためらう方もいたそうです。また支援者が駆けつけても家の中に居ると、中に入り込んで連れ出す必要があり、避難開始まで時間がかかります。そこで考案されたのが「玄関先まで訓練」です。本人が玄関に出ていれば、道にいる避難者が声をかけ手を引いて避難を働きかけますし、駆け付けた支援者とすぐに避難所へ向かえます。
それには玄関先まで移動する”習慣”をつける必要があります。そこで訓練が必要になるのですが、黒潮町の訓練には仕掛けがあります。ここでも中学生が登場します。地元の中学生が、授業の一環で訓練に参加するのです。中学生が玄関で「訓練です。おばあちゃん玄関まで出て来てください」など呼びかけます。孫の世代の子どもたちの呼びかけです。居室にいた高齢者は玄関まで行かざるを得ません。
中学生は呼びかけだけでなく、移動距離・移動時間などを測ったり、移動する上での問題点を洗い出したりして、次の訓練や本番に役立つようにします。訓練は学校のカリキュラムに繰り込まれているので、毎年、行われます。これが2つ目の仕掛けです。訓練は継続的に行う必要がありますが、往々にして行われなくなっていきます。しかし、学校のカリキュラムに入っていれば大丈夫です。
さらに訓練に参加することで、中学生の防災・減災への意識が高まります。これが3つ目の仕掛けです。防災に取り組む人の高齢化と減少が各地で課題になっています。「玄関先まで訓練」は、防災の次世代を担う「若手の育成」と「すそ野の拡大」にも役立ちます。すごいシステムです。
