米Apple傘下のBeatsが、オーバーイヤー型ヘッドフォン「Beats 360」を投入した。国内価格は5万9800円(税込)で、9月24日に発売する。

Beats 360
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スポーツ用途も視野に入れたモデルで、音質、ノイズキャンセリング、通話性能はいずれもトップクラス。IPX4の耐汗・耐水性能に加え、イヤーカップとヘッドバンドのクッションを付け替えられるモジュラー構造を採用した。有線接続や装着検知センサーなど、今どきのプレミアム機では珍しい「非対応」の機能もあるものの、総合的には筆者の予想を上回る出来だった。
4〜5年前、Appleが「AirPods Max」の軽量なスポーツ版を開発しているといううわさが流れたことがある。そのスポーツ版が世に出ることはなかった。だがAppleに買収されて10年以上たつBeatsは今回、本機をスポーツにも使えるヘッドフォンとして位置付けている。結局はBeatsブランドの製品という形になったが、当時のうわさにもいくらかの真実はあったのかもしれない。
実際、Beats 360には魅力的な点が多い。特に音質、ノイズキャンセリング、通話品質は優秀で、IPX4の耐汗・耐水性能も備える。クッションを付け替えて外観をカスタマイズできるのもユニークだ。一方、有線再生に対応しないなど、プレミアムなノイズキャンセリングヘッドフォンなら備えていてほしい機能がいくつか欠けている。それでも全体として、強く印象に残る製品だった。

Beats 360はIPX4規格の防滴・防汗性能を備えている(David Carnoy/CNET)
スポーツ志向のデザイン、IPX4防滴と”着せ替え”クッション
Beatsは以前から有名スポーツ選手との結び付きが深く、360も発表前からアスリートを起用して予告していた。スポーツ路線に振ってきたのは意外ではない。
Beats社長のOliver Schusser氏によれば、NBAのレブロン・ジェームズ選手をはじめとするブランドアンバサダーは、宣伝写真や動画に登場するだけの存在ではない。製品の設計や性能についてしばしば意見を寄せており、中には手厳しい指摘もあるという。しかし360については「これほど良い反応をもらったことはない」と同氏は語る。それはそうかもしれないが、筆者ほど多くのヘッドフォンを試してきたアスリートはいないだろう。
360はIPX4の耐汗・耐水仕様だ。イヤフォンでは珍しくないが、フルサイズのヘッドフォンが公式にこうした性能をうたう例はまだ少ない。最近はパワーリフターに限らず、ジムでオーバーイヤー型を使う人が増えており、AirPods Maxも例外ではない。ランニングに持ち出す人までいるほどだ。筆者自身は、特に暑い時期に着けて走るのは好まないが、寒い季節なら耳当て代わりになる。360は、そんな最近のトレンドを意識した製品といえる。
もう1つの大きな特徴が、イヤーカップとヘッドバンドのクッションを付け替えて外観をカスタマイズできることだ。本体色はブラック、クラウド、ピンク、スカイの4色。いずれも本体と同色のニット製「Performance Knit」クッションが付属する。別売りの「Beats 360クッションキット」は8800円……ではなく、国内価格は8900円(税込)だ。

Beats 360はクッションの組み合わせで多彩な色のバリエーションを作れる(David Carnoy/CNET)
Nothingの「CMF Headphone Pro」など、イヤーパッドを交換できるオーバーイヤー型はほかにもある。それでも、気軽に見た目を変えられること自体には魅力がある。Schusser氏は「クッションとヘッドバンドを1〜2セット買い足せば、全体としてヘッドフォンを2〜3台買ったような感覚になる」と話す。
ニット製イヤーカップは色のバリエーションが豊富だが、合成皮革の「UltraPlush」クッションも別売りで用意される。手触りは「Beats Studio Pro」のクッションに近い。UltraPlushはブラックとクラウドの2色だ。本体にはセンサーが内蔵されており、装着しているクッションの種類を認識して、音質、ノイズキャンセリング、外音取り込みモードを自動で調整する点も興味深い。
リーク写真や実物を初めて見たときは、少し安っぽく映った。だが手に取ってみると、見た目も質感も想像以上にプレミアムだ。重量は294.5gで、260gのStudio Proを上回る。ヨーク部分には滑らかな金属製スライダーを採用し、プラスチックのきしみもなく、造りは頑丈だ。イヤーカップは平らに回転するが、Studio Proのようには折りたためない。
FCバルセロナのラミン・ヤマル選手のように、360を高級ハンドバッグの外側にぶら下げてファッションの一部にしているアスリートもいる。同選手はハンドバッグのコレクターだという。ただ筆者は、付属するソフトタイプの持ち運び用ポーチを気に入っている。自分のバックパックにヘッドフォンを入れる際は、保護のためこれを使った。ポーチはファスナーではなく磁石で閉じる仕組みで、開け閉めもしやすい。
最初は側圧がやや強いと感じる人もいるだろうが、ヘッドバンドを少し広げるようになじませれば緩和できる。筆者は最終的に、Studio Proよりわずかに快適だと感じた。
ほかのBeats製ヘッドフォンと同様、360も物理ボタンで操作する。その点はありがたく、外観もすっきりしている。デザインで唯一気になったのは、イヤーカップ内側の一部に使われている柔らかなシリコン素材だ。見た目も触感も良いが、髪の毛やほこりが付きやすく、ときどき拭き取る必要がありそうだ。
汗を多くかいても、Beatsはニット製クッションを洗濯機で洗うことを推奨していない。筆者が直接確認したところ、そう回答された。とはいえ筆者は、布製の洗濯ネットに入れて洗濯機で洗い、自然乾燥させてみた。結果は問題なかった。ただし、繰り返し洗えば内部の低反発フォームが劣化するおそれはある。乾燥機には絶対に入れないほうがいい。
AppleのH2チップではなく、Beats独自チップを搭載
Studio ProなどほかのBeats製品と同様、360はAppleの「H2」チップを搭載していない。代わりにBluetooth 5.3対応のBeats独自設計チップを採用する。それでも、常時待機のSiri、ヘッドトラッキング付きのパーソナライズされた空間オーディオ、同じiCloudアカウントでサインインしたApple製デバイス間の自動切り替えなど、Appleユーザー向けの主要機能には対応している。同時に、Androidデバイスとの親和性も高い。
Apple製のヘッドフォンやイヤフォンと異なり、Beats製品はAndroid版「Beats」アプリと連携できる。高速ペアリングやファームウェア更新に加え、Android向けの「Find Hub」機能や、対応デバイス間の自動切り替えも利用できる。
一方、最新のAirPodsにある機能の一部は備えていない。たとえば「会話感知」は、話し始めると自動で音楽の音量を下げ、ノイズキャンセリングから外音取り込みモードへ切り替える機能だ。ヘッドフォンを外さずに会話できる便利な機能だが、360には搭載されていない。さらに、H2搭載AirPodsの「ライブ翻訳」をはじめとする複数の機能にも対応しない。

別売りのBeats 360クッションキット。国内価格は8900円(David Carnoy/CNET)
装着検知センサーもないため、ヘッドフォンを外しても音楽は自動停止しない。ただし、電源を入れたまま放置した場合に備えた自動電源オフ機能はある。筆者も何度かうっかり電源を入れっぱなしにしてしまった。オフになるまでの時間はモードによって異なり、ノイズキャンセリング有効時は7時間操作がないと電源が切れるとBeatsは説明している。
この7時間という設定は、頻繁に飛行機を利用する人を意識したものだ。音楽を流さず、ノイズキャンセリングだけをオンにして機内で眠る使い方を想定している。ソニーのヘッドフォンのように、自動オフまでの時間を設定で変えられればなお良かった。
先に触れたとおり、USB-Cケーブルや「USB-C – 3.5mm」ケーブルを使った有線再生にも対応しない。これは残念な点だ。Beatsによれば、360は完全ワイヤレスイヤフォンと同様、左右のイヤーカップそれぞれにバッテリーを内蔵する設計だという。これにより重量バランスを保ちながら、左右のカップを細い配線1本でつなぐ構造を実現している。
歴代Beatsで最高の音
欠けている機能への不満はさておき、音質は筆者がこれまで試したBeats製ヘッドフォンの中で最高だ。新開発のデュアルマグネット型ダイナミックドライバーとアンプを組み合わせ、出力はStudio Proより12dB高い。つまり、より大きな音量まで余裕を持って鳴らせる。
筆者のテストでは、Studio Proより音がクリアで解像感が高く、低音の輪郭もはっきりしていた。従来のBeats製ヘッドフォンに慣れた耳には、低音がやや控えめで、バランス重視に感じる場面もあるかもしれない。だが重低音の効いた曲をかければ、低音のエネルギーはしっかり出てくる。力強く、それでいてこもらない。

360は新設計のドライバーを搭載し、よりクリアで細部まで描き出す音を実現した(David Carnoy/CNET)
とはいえ、「AirPods Max 2」や筆者が試したほかのプレミアム機より音が良いとまでは言えない。主観の入る話だが、上位機種の中には、より自然で純度の高い音を鳴らし、奥行きや空気感でもわずかに勝るものがある。たとえば筆者は、国内価格6万9800円の新型「Sonos Ace Ultra」と聴き比べてみた。Sonosのほうが音質はわずかに上で、質感や豊かさでも一歩リードしていた。
今のBluetoothヘッドフォンは強力なデジタル処理を備えているが、それでも上質な有線アナログヘッドフォンと同等の音を出すのは難しく、肉薄することさえ容易ではない。AirPods Max 2も、Appleの「USB-C – 3.5mmオーディオケーブル」(7080円)で有線接続すると、音質がはっきり向上する。
それでも、Beats 360はこの価格帯のヘッドフォンに期待される音をきちんと届けてくれる。がっかりする人は多くないだろう。ただし、最新のAirPodsのように音を手動で調整する手段がない点には、不満を持つ人もいそうだ。Appleは「iOS 27」で、H2チップ搭載のAirPods向けに基本的な3バンドイコライザーを用意している。
ノイズキャンセリングはStudio Proから大幅改善
新しいマイクアレイと高性能なプロセッサーにより、360のノイズキャンセリング性能は大きく向上した。Beatsによると、その効果はStudio Proの1.75倍にあたるという。この改善で性能はトップクラスとなり、AirPods Max 2や「AirPods Pro 3」にかなり近づいた。
サンフランシスコからニューヨークへの機内では客室の騒音を見事に抑え、ニューヨークの街中や地下鉄でも周囲の音をしっかり低減した。人の声が集中する中音域から高音域の処理も上々だった。
自宅の空調がうるさい環境で試したところ、AirPods Pro 3とAirPods Max 2のほうがわずかに優れていた。Beats 360ではAirPodsにはない、かすかな「シュー」という音が聞こえ、ノイズキャンセリング性能には細かな差がある。
ランニングで使うなら、筆者はノイズキャンセリングを切って外音取り込みモードにするだろう。ノイズキャンセリングをオンにすると、自分の足音が気になりやすいからだ。外音取り込みモードの音はStudio Proより自然で、Appleの最新AirPodsに迫る品質だった。
通話性能もトップクラス
Beatsによれば、360には3基のマイクによるビームフォーミングシステムを搭載したほか、音声処理アーキテクチャも一新した。新しいSoCプラットフォームを基盤としており、その処理能力は前世代のBeats独自プラットフォームの2倍近い。さらに、AIで学習させた新アルゴリズムも組み合わせている。
結果は見事だった。騒がしいニューヨークの路上から通話したところ、相手からは背景音がほとんど聞こえず、筆者の声もおおむね明瞭に届いたという。風の強い環境でも健闘した。かすかな静電気のような風切り音は聞こえたものの、気になるほどではなかったという。通話性能では、筆者がこれまで試したヘッドフォンの中でも間違いなく最上位に入る。
総評
有線接続ができない点は、特に機内で使う際に不便になりうる。装着検知センサーがない点にも不満は残る。とはいえ、Beats 360はデザインと性能の両面で見どころが多い。優れた音質に加え、高水準のノイズキャンセリングとトップクラスの通話性能を備える。バッテリー持続時間も良好で、ノイズキャンセリング有効時に中程度の音量で最大32時間の再生をうたう。Studio Proより8時間長い。
5万9800円という価格は安くない。しかも現在、Beats Studio Proの国内価格は4万9800円で、価格差は1万円ある。ただ、最近のBeats製ヘッドフォンはセール対象になることも多く、360もいずれ実売価格が下がると筆者はみている。
別売りのクッションキットは国内では8900円。気軽に何色もそろえられる価格とは言いにくいが、着せ替えという360ならではの特徴を楽しむなら検討したいアクセサリーだ。本体についても、今後セールで価格が下がれば、さらに魅力的な選択肢になるだろう。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
