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    観測史上“最大級”の「超エルニーニョ」 経済的な損失は890兆円超? 食料もエネルギーも値上がりか

    観測史上“最大級”の「超エルニーニョ」 経済的な損失は890兆円超? 食料もエネルギーも値上がりか

    【要旨】
    ・世界各地で猛威を振るう観測史上最大規模のエルニーニョ現象
    ・インドの洪水やアフリカの干ばつなど、気候変動が被害を拡大
    ・パナマ運河の制限や農業打撃により、数兆ドルの世界経済損失へ

    観測史上最大級「エルニーニョ」がもたらす世界的脅威

    ヨーロッパを焼き尽くす山火事により、フランスやスペインでは30万人以上が自宅からの避難を余儀なくされました。

    さらに、インドやニューヨーク市を飲み込んだ壊滅的な洪水など、世界中で異常気象がより頻繁に、そして激しく発生するようになっています。

    これらの災害の背景にあるのが、周期的に発生する気象現象「エルニーニョ」の再来です。科学者たちが今回のエルニーニョに対して強い懸念を抱いているのには、2つの大きな理由があります。

    1つ目は、その「規模の大きさ」です。今回のエルニーニョは、観測史上最大級の威力を持つ可能性があります。

    そして2つ目は「発生時期」です。

    現在、人類が化石燃料を燃やして排出する温室効果ガスの影響により、地球全体の平均気温は産業革命前と比べてすでに1.4度上昇しています。

    この人為的な気候変動によってベースラインの気温が底上げされた世界で、強大なエルニーニョが発生しているという事実が、事態をより深刻なものにしているのです。

    TBS CROSS DIG with Bloomberg莫大な熱エネルギーと「終末的」な気候への影響

    エルニーニョは自然のサイクルの一部であり、太平洋赤道域の海洋振動に起因します。

    「監視海域3.4」と呼ばれるエリアの海面水温が平年より摂氏0.5度以上高くなると、エルニーニョ現象と認定されます。逆に水温が低い時期はラニーニャと呼ばれます。

    2026年のデータを見ると、秋に近づくにつれて前回のエルニーニョ時の水温を上回り、1991〜2020年の平均水温と比較しても海洋の温暖化は顕著です。

    今回のエルニーニョの特徴は、海面だけでなく深層の水温も上昇している点にあります。年末までに太平洋の水温を2度以上高めると予測されており、このわずかな差に見える温度上昇が、海に莫大なエネルギーを蓄積させます。

    海洋はまるで巨大なバッテリーのように機能し、熱の移動を促すだけでなく水分の蒸発の勢いを強め、エルニーニョの威力をさらに増大させるのです。

    エルニーニョ自体は気候変動が直接の原因ではありませんが、地球の気温をさらに0.2〜0.3度押し上げる効果があります。

    多くの気候学者は、今回のエルニーニョを未来の地球環境の「予行演習」だと指摘しています。

    緊急事態が宣言された西ヨーロッパの火災は「終末的」と描写されましたが、2027年までに訪れるとされる「史上最悪の猛暑」すらも、このまま気候変動が進めば、2035年の日常のほんの予告編に過ぎないのかもしれません。

    TBS CROSS DIG with Bloomberg食料供給とサプライチェーンを直撃

    異常気象の影響はすでに世界各地で顕在化しています。

    エルニーニョによる影響の多くは、世界有数の豊かな農地が広がり、農業を主な収入や食料源とする人々が最も多く暮らす熱帯地域で発生します。

    インドでは、前回のエルニーニョ以来最悪となるモンスーンに見舞われています。

    降水量が極端に不安定になり、観測史上5番目に雨の少ない6月を記録したかと思えば、続く7月にはたった1週間で1か月分に相当する大雨が降り、大規模な洪水が発生しました。

    農業経済に大きく依存する同国にとって、モンスーンの異常は死活問題です。

    影響はアフリカ大陸にも及んでいます。

    カカオ生産の一大拠点である西アフリカのコートジボワールでは、すでにカカオの生育や収穫量に影響が出始めています。

    2027年にかけてカカオの価格や品質に悪影響を及ぼし、今年の冬には板チョコやココアのさらなる値上がりが予想されます。

    また、ソマリアでは日照りから一転、過去最大級の大洪水に備えています。

    水位が通常時の1メートルから4メートル以上にまで達し、堤防を越えて畑を台無しにする恐れがあります。

    TBS CROSS DIG with Bloomberg数兆ドル規模の損失 異常気象が世界経済に突きつける代償

    エルニーニョがもたらすのは局地的な災害だけではありません。

    世界がグローバルなサプライチェーンで繋がっている以上、食料問題や農業への打撃は瞬く間に世界全体の問題へと拡大します。

    例えば、パナマではエルニーニョによる雨量の減少が深刻な干ばつを引き起こしています。

    前回のエルニーニョが起きた2024年にもパナマ運河で通船数が急減しましたが、現在も水資源を守るために貨物制限などの対策がとられています。

    この運河の航路規制は、液化天然ガス(LNG)の輸送に直接影響を与え、ひいては世界のエネルギー価格の高騰を招きます。

    これは消費者が最も痛切に影響を実感する部分です。

    エルニーニョの経済的コストは計り知れません。

    「サイエンス」誌に掲載された研究によると、1982〜83年のエルニーニョは長期的な影響を与え、世界の経済生産性を4.1兆ドル低下させました。

    1997〜98年の発生の際にも約5.7兆ドルの損害があったとされ、その影響は終息後5年間も続きました。

    専門家は、今回のエルニーニョでも数兆ドル規模の経済的損失が繰り返されると懸念しています。

    エルニーニョには、国際情勢や和平協定、悪化するインフレなど、現在の人類が抱える地政学的な問題は一切関係ありません。

    自然の無慈悲な周期に従って、世界が最も困るタイミングで発生し、私たちの生活基盤に甚大な打撃を与えます。

    海洋の温暖化と気候変動が重なり合う今、この巨大な自然の脅威に対して、世界はかつてない規模の対応を迫られているのです。

    TBS CROSS DIG with Bloomberg

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