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自分の年収が世間と比べて多いのか少ないのか、周りには聞きにくいものです。
国税庁が2026年9月29日に公表した「令和7年分民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者5163万人のうち、年間給与が800万円を超える人は650万人で、全体の12.6%にとどまりました。
ところが、この12.6%の層が納めた所得税は、全体の71.4%を占めています。平均給与だけでは見えにくい「給与の分布」と「税負担の偏り」を、最新の統計から整理しました。
1. 年間給与の分布は? 最も多いのは300万円台の15.5%
分布の対象は、令和7年の1月から12月まで引き続き勤務した「1年を通じて勤務した給与所得者」5163万人です。その平均給与は487万円ですが、人数が最も多い階級は平均とは別の場所にあります。
給与階級別にみると、最多は300万円超400万円以下の799万人(構成比15.5%)で、次いで400万円超500万円以下が792万人(15.3%)でした。
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出所:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査」をもとにLIMO編集部作成
男女計の給与階級別構成比を並べると、次のようになります。
100万円以下:7.2%
100万円超200万円以下:11.3%
200万円超300万円以下:13.1%
300万円超400万円以下:15.5%
400万円超500万円以下:15.3%
500万円超600万円以下:11.9%
600万円超700万円以下:7.8%
700万円超800万円以下:5.4%
800万円超900万円以下:3.6%
900万円超1000万円以下:2.5%
1000万円超1500万円以下:4.7%
1500万円超2000万円以下:1.2%
2000万円超2500万円以下:0.3%
2500万円超:0.4%
男女別にみると、ボリュームゾーンが異なるのが特徴的です。男性は400万円超500万円以下が487万人(16.6%)で最多となり、500万円超600万円以下の427万人(14.6%)が続きます。
一方の女性は、200万円超300万円以下の417万人(18.7%)が最多でした。100万円超200万円以下も413万人(18.5%)と、ほぼ並ぶ水準です。男性と女性では、ボリュームゾーンが2階級離れています。
2. 年間給与800万円超は何割? 所得税の約7割を負担
給与階級別に税額をみると、偏りがはっきりと現れる結果になりました。
年間給与800万円超の給与所得者は650万人で、全体の12.6%です。給与総額に占める割合は31.4%ですが、源泉徴収された所得税額は合計9兆2225億円で、全体の71.4%に達しています。
反対に、年間給与800万円以下の人は全体の87.4%を占めるものの、税額は3兆6916億円(28.6%)でした。
たとえば、人数が最も多い300万円超400万円以下の階級は799万人にのぼりますが、この階級の税額は4202億円で、全体の3.3%にとどまります。
なお、1年を通じて勤務した給与所得者5163万人のうち、源泉徴収により所得税を納税した人は4175万人(80.9%)でした。令和6年分は73.1%だったため、前年との単純な比較には注意が必要です。

統計の数字を見ると、つい「自分は多いほうか少ないほうか」と比べてしまう方も多いでしょう。ただ、給与階級別の分布を見ると、平均給与の487万円と、最も人数が多い300万円台とは、そもそも別の数字だと分かります。
平均は高い給与の人に引っ張られやすく、真ん中の実感からずれる例も少なくありません。今回の統計でも、人数が多いのは300万円台と400万円台で、平均の487万円は400万円台の上側に位置する形でした。年収の話題で「平均」と聞いたときは、分布のどのあたりに人が多いのかまで確認すると、印象が変わるかもしれません。
また、この統計の給与は額面の金額であり、手取りとは異なります。家計を考えるときは、税金や社会保険料が引かれたあとの金額で見直すことが大切です。数字は目安として、ご自身の家計と照らし合わせてみてください。
3. 民間給与の数字を読むときの注意点が3つあります
分布や税負担の数字を自分に当てはめる前に、次の3点を押さえておきましょう。
3.1 1.対象は「1年を通じて勤務した人」です
令和7年12月31日現在の給与所得者6080万人のうち、1年を通じて勤務した人は5163万人でした。差の917万人は、1年未満の勤続者にあたります。
平均給与や給与階級別の分布は、この5163万人が対象で、1年未満の勤続者は含まれません。
3.2 2.給与は額面で、手取りではありません
同調査でいう給与は、1年間に支給された給料・手当と賞与の合計額で、給与所得控除前の収入金額です。通勤手当などの非課税分は含まれていません。
年末調整を行った人のうち、社会保険料控除を受けたのは4126万人で、1人当たりの平均控除額は77万円でした。額面の給与からは、税金に加えてこうした社会保険料も差し引かれます。
3.3 3.複数の勤め先から受け取ると複数人として集計されます
同調査は、事業所が支払った給与に着目して集計しており、その個人の所得全体を示したものではありません。複数の事業所から給与を受け取っている人は、それぞれの事業所で調査対象になった場合、複数の給与所得者として数えられる仕組みです。
また、標本調査のため、他の税務統計の関連数値とは一致しない場合があります。副業がある人や、掛け持ちで働く人は、この点も頭に入れておくと安心です。
4. 勤め先の規模や業種で、給与はどう違う?
4.1 事業所の規模で150万円の差
1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与を事業所規模別にみると、従事員10人未満の事業所は398万円、5000人以上の事業所は548万円でした。差は150万円です。
企業規模別では、資本金2000万円未満の株式会社が416万円、資本金10億円以上の株式会社が692万円で、276万円の開きがあります。個人の事業所は289万円でした。
4.2 業種別では最高854万円、最低276万円
業種別の平均給与が最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の854万円で、次いで「金融業,保険業」の726万円です。最も低いのは「宿泊業,飲食サービス業」の276万円でした。最高と最低の差は578万円に及びます。
給与階級別では、「電気・ガス・熱供給・水道業」で800万円超の人が47.2%、「金融業,保険業」で31.7%と高い水準です。一方、「宿泊業,飲食サービス業」では100万円以下の人が27.9%で最も多くなっています。
4.3 現役時代の給与と、老後の家計をどうつなげる?
現役時代の給与を考えるときは、老後の家計もあわせて見ておきたいところです。総務省統計局が公表した「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の1か月平均は、実収入が25万4395円、実支出が29万6829円でした。
実支出の内訳は、消費支出が26万3979円、非消費支出が3万2850円です。実収入との差は、月4万2434円の不足になります。単純に12か月分を掛けると、年間で約50万9000円の不足です。
貯蓄はどうでしょうか。総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の貯蓄現在高は2494万円で、前年より66万円(2.6%)減っています。ただし、この区分は夫婦のみの無職世帯とは異なるため、単純には並べられません。
加えて、介護サービスの費用が別に必要になる場合があります。実際の老後の支出は、平均像を上回るケースもあるでしょう。
5. まとめにかえて|「平均」ではなく「分布」で自分の位置を確かめる
令和7年分の民間給与実態統計調査から、給与の分布と税負担の偏りが見えてきました。最も多い給与階級は300万円台の15.5%で、年間給与800万円超の12.6%が、所得税の71.4%を負担する構図でした。
勤め先の規模や業種によっても、平均給与には大きな差があります。まずは自分の給与が分布のどのあたりにあるのかを確かめ、手取りと将来の年金・貯蓄のバランスを見直すきっかけにしてみましょう。なお、税や社会保険の制度は今後変わる可能性があるため、最新の情報は国税庁や各制度の窓口でご確認ください。
6. 【筆者コメント】

民間給与の統計は、自分の立ち位置を知るための地図のようなものです。数字を見て一喜一憂するよりも、今の家計を見直すきっかけにしていただければと思います。
現役のうちに確認しておきたいのは、毎月の手取りと、将来の年金や貯蓄とのバランスです。老後の家計には月4万2434円の不足という平均像がありますが、これはあくまで平均であり、住まいや働き方、健康状態によって大きく変わります。家計の見直しは、大きな決断から始める必要はありません。
ねんきん定期便で受給見込額を確認し、毎月の支出を書き出すだけでも、備えの優先順位が見えてくるはずです。まずは今月の手取り額を書き出すところから、始めてみてはいかがでしょうか。今日できる小さな一歩から、少しずつ整えていきましょう。
参考資料
