
【通達の数分後】若獅子たちの節目「10・1」の苦しみ それでも彼らは美しく去った
西武は10月1日、育成契約をしていたシンクレア投手(25)と奥村光一外野手(26)に、来季の契約を結ばないことを通達しました。もちろん、スーツを着てその場に現れた選手は2人だけではありません。夢を追いかけてきた若者たちの人生の節目になるかもしれない1日。記者もスーツを着て、通達された彼らを待ちました。
プロ野球2026.10.02 12:00
★奥村とシンクレアが語った主な内容
引退決意の奥村が明かした意外な「次の道」
カナダ出身シンクレア 家族との思い出と今後
広池本部長が奥村に伝えた最後の言葉
今年もこの時が来てしまった
静かな場所だ。誰もいない。風が抜けていく。少し緊張感が高まる。
静かな場所だから、車のドアを閉める音も遠くまで響く。スーツ姿の若者が遠くから歩いてくる。今年もこの時が来てしまった。鍛え上げた肉体が、スーツ越しでも分かる。
あなたとは来季の選手契約を結べません―。球団側だって誰もそんなことを言いたくないし、選手だって聞きたくもない。
ネット上では無責任で無粋な「戦力外予想」なんてものが出回っているけれど、そうやって勝手に名前を出される当事者の選手たちは皆、苦しい。クビになるかも―。瞬間的じゃなく、ずっと苦しい。
球団のある人は「1人の人間の人生がかかわっていること」と、この通達を表現する。その通りだ。自分事に置き換えれば分かる。もし今、雇用解除を言われたら。それがコミュニティー内にとどまらず、世間に広く周知されたら―。
想像するだけで苦しいことに、彼らは真っ向から向かう。指定された時間、指定された場所に背筋を伸ばして歩いて行く。だからこっちも、スーツを着る。

球団との面談にスーツ姿で訪れた選手たち
既に決めていた「次のステージ」
筋骨隆々の彼が球団との話を終えて、外に出てきた。表情は面談前と同じ。笑顔ではない。でも悲哀の表情でもない。言うなれば、真顔。強い真顔。
そんな奥村に話しかける。「歩きながら、少しいいですか?」と。記者は他に誰もいない。1対1で奥村の愛車へと歩く。
育成再契約をして、2年が過ぎた。2軍戦出場も少ない。外野手が多く加わってきた中で、奥村の立場はかなり苦しい。答えを悟りながら「球団からはどんなお話が?」と尋ねた。
「今年で現役を引退します。もう野球は。ちょっと前に球団の方にもお伝えはしていました」
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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。
