ノートPCのメモリーやストレージを選択できるのは、もはや当たり前。モデルによっては、ディスクリートGPUの搭載、非搭載を選べる製品もある。
今回の「ASUS Zenbook 14 UX3480」シリーズは、インテル、AMD、クアルコムの3社のプロセッサーから選択可能。CPU性能、GPU性能、NPU性能、そして低消費電力性など、自分が重視する要素に合わせてプロセッサーを選べるわけだ。
今回は一番お買い求めやすい、クアルコムのプロセッサーを搭載する「ASUS Zenbook 14 UX3480QA」をASUSから借用した。本製品がどのような用途に向いたマシンなのか、使い勝手のチェックやベンチマークを通じて解説していこう。

ASUS「Zenbook 14 UX3480QA」18万9800円~
インテル、AMD、クアルコムのどれを選ぶ?
3モデルの違いを整理
「ASUS Zenbook 14 UX3480」シリーズで、まず理解しておきたいのがプロセッサーの違いだ。インテル版「UX3480AA」、AMD版「UX3480KA」、クアルコム版「UX3480QA」が用意されているが、単にプロセッサーのメーカーが異なるだけではない。
インテルとAMDは従来のWindows PCと同じx86系プロセッサーなのに対して、クアルコムのSnapdragon XはArmアーキテクチャーを採用している。この違いはCPUやGPUの性能だけでなく、アプリや周辺機器との互換性にも影響する。UX3480シリーズを選ぶ際には、まずこの3モデルの性格を把握しておきたい。
インテル版「UX3480AA」
性能と互換性を重視
◎Core Ultra 9 386H、Core Ultra 7 355、Core Ultra 5 325と選択肢が多い
◎最上位のCore Ultra 9 386Hは16コア16スレッドで、CPU性能を重視するなら最有力候補
◎x86系なので、従来のアプリや周辺機器との互換性が高い
○NPU性能はCore Ultra 9 386Hが50TOPS、Core Ultra 7 355が49TOPS、Core Ultra 5 325が47TOPS
○Thunderbolt 4を搭載
△公称バッテリー駆動時間は約29時間と、3モデルで最も短い
AMD版「UX3480KA」
性能、互換性、バッテリーのバランス型
◎Ryzen AI 7 345、Ryzen AI 5 330を用意
◎x86系なので、従来のアプリや周辺機器との互換性が高い
◎NPUはどちらも最大50TOPS
◎公称バッテリー駆動時間は約33時間と、3モデルで最も長い
○USB4を搭載
クアルコム版「UX3480QA」
軽さとモバイル性を重視
◎Snapdragon X X1-26-100(8コア、最大3.0GHz、NPUは最大45TOPS)のみを採用
◎約1.1kgと、3モデルで最も軽い
◎公称バッテリー駆動時間は約30時間
◎18万9800円からと3モデルで最も安価
△Arm系なので、x86/x64アプリはエミュレーション環境「Prism」で動作する
△ドライバーはエミュレーションできない。周辺機器や一部アプリはArm64対応を要確認
△Arm64非対応のアンチチートドライバーを利用するゲームは動作しない
Snapdragon X搭載のUX3480QAは
約1.1kgの軽量モバイルノート
今回試用した「ASUS Zenbook 14 UX3480QA」は、プロセッサーに「Snapdragon X X1-26-100」を採用。メモリーは16GB(LPDDR5X-8448)、ストレージは256GB(PCIe Gen3 x4接続 SSD)を搭載している。
ディスプレーは14型WUXGA有機EL(1920×1200ドット、60Hz)を装備。ディスプレー上部には207万画素の顔認証対応IRカメラを内蔵している。
インターフェースは、USB 3.2 Gen2 Type-C×2、USB 3.2 Gen1 Type-A×1、HDMI×1、3.5mmコンボジャック×1を装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3をサポートしている。
本体サイズは約311.1×215.8×13.9~16.9mm、重量は約1.1kg。50Whのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間は約30時間と謳われている。
カラーはコモドコーラルとアークティックブルーの2色が用意され、それぞれにOfficeなしモデルが18万9800円、Office付きモデルが20万9800円でラインナップされている。

「コモドコーラル」はピンク系ですね
なお、インテル版、AMD版との違いはプロセッサーだけではない。主な相違点をまとめると下記のようになる。

UX3480QAはほかの2モデルより約200g軽く、価格も最も安価。一方、SSD容量やUSB Type-Cの速度ではインテル版、AMD版のほうが有利だ。スペック的にはUX3480QAはエントリー寄りの位置付けと言えるだろう。

これはアークティックブルー

サイズは約311.1×215.8×13.9~16.9mm

ディスプレーは14型WUXGA有機EL(1920×1200ドット、60Hz)

キーボードは84キーの日本語配列

本体前面と背面

右側面にはUSB 3.2 Gen1 Type-A、左側面にはHDMI、USB 3.2 Gen2 Type-C×2、3.5mmコンボジャックを配置

同梱品一覧

ACアダプターのサイズは実測58×58×29mm。コード長は実測205cm

ACアダプターの型番は「AD2190320」。仕様は入力100-240V~1.5A、出力5V 3A、9V 3A、15V 3A、20V 3.4A、容量68W

本体の重量は実測1140g

ACアダプターの重量は実測207.5g
映像鑑賞から画像、動画編集まで活用できる
有機ELディスプレー
本シリーズ共通の売りのひとつが有機ELディスプレーだ。もっとも手ごろな価格のクアルコム版「UX3480QA」にも、14型WUXGA有機EL(1920×1200ドット、60Hz)が採用されており、映像や画像を鮮やかに表示できる。
DCI-P3カバー率100%の広色域表示に対応し、DisplayHDR True Black、TÜV Rheinlandのフリッカーフリー、ブルーライト低減に関する認証も取得している。実際に画面を見ても発色は非常に鮮やかで、映像鑑賞はもちろん、画像・動画編集などのクリエイティブワークにも活用できるだけのクオリティーを備えている。

14型WUXGA有機ELは映像や画像を鮮やかに表示できる

ディスプレーの最大展開角度は実測150度
キーピッチは実測19.2mm、キーストロークは実測1.5mm。キーには適度な反発力が備わっており、打鍵感は良好だ。底打ちするぐらい強く叩いても、「パタパタ」というよりは「トゥントゥン」というような低めの打鍵音で耳当たりがいい。
よほど強く底打ちしなければ周囲を気にする必要もなく、上質かつ静音性の高いキーボードに仕上がっていると言えるだろう。
個人的に気になるのは、英語キーボードのパネルを流用した日本語キーボードのキー配列だ。日本語入力時に多用するEnterキーやSpaceキーのすぐそばに、無変換、変換、閉じカッコなどのキーが密集しているのはやはり気になる。数が出にくいゲーミングノートPCなどで、英語キーボード用のパネルを流用することについては理解できる。しかし一般層向けのノートPCについては、日本語キーボードに最適化されたキーボードパネルを採用してほしいと筆者は考えている。

キーピッチは実測19.2mm

キーストロークは実測1.5mm

キーボードバックライトは明るさを3段階で調整できる

タッチパッドの面積は実測127×79mm
本製品には207万画素の顔認証対応IRカメラが採用されている。実際にウェブカメラを使用してみたが、室内灯下でも明るく自然な発色で撮影できた。やや細部の描写は甘く、髪の毛や背景などにはノイズ感も見られるが、全体としては良好な画質を備えている。ビデオ会議やビデオ通話用途であれば、十分すぎるぐらいの画質と言えるだろう。

ディスプレー上部には207万画素の顔認証対応IRカメラを内蔵

Windows 11の「カメラ」アプリで撮影
一般用途に十分な処理性能を発揮
バッテリーは20時間持続
最後にパフォーマンスをチェックしよう。比較対象には、「Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100」を搭載する「ASUS Zenbook SORA 16 UX3607OA」と「Surface Pro, 13 インチ(第12世代)」を用意した。
今回の「ASUS Zenbook 14 UX3480QA」が搭載する「Snapdragon X X1-26-100」は、8コア、最大3.0GHz、NPU 45TOPS。一方、比較機が搭載する次世代の「Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100」は18コア、最大4.7GHz、NPU 80TOPSと、世代もグレードも大きく異なる。そこで今回は、下位プロセッサーを搭載するUX3480QAが、上位プロセッサー搭載機にどこまで迫れるのかという視点から見てほしい。


試用機のスペックは、Snapdragon X X1-26-100/メモリー16GB(LPDDR5X-8448)/ストレージ256GB(PCIe Gen3 x4接続 SSD)

ベンチマークは「MyASUS」で、「パワー&パフォーマンス」のファンモードを「パフォーマンスモード」に設定して実施
CPUベンチマーク「CINEBENCH 2024」のCPU(Multi Core)は711pts、CPU(Single Core)は96pts、「CINEBENCH 2026」のCPU(Multiple Threads)は2948pts、CPU(Single Threads)は398ptsを記録した。
CPUコア数や最大動作クロックの違いがストレートに表われた結果だ。ただし、「Surface Pro」との差は「Zenbook SORA 16」ほど大きくない。タブレット端末であるSurface Proよりも、Zenbookの2機種のほうが冷却システムに余裕があり、高いパフォーマンスをより長く維持できている可能性がある。

「CINEBENCH 2024」のCPU(Multi Core)は711pts、CPU(Single Core)は96pts。「CINEBENCH 2026」のCPU(Multiple Threads)は2948pts、CPU(Single Threads)は398pts


「3DMark」のTime Spyは1065、Fire Strikeは3638、Wild Lifeは11877を記録。Port Royalは動作しなかった。
「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1920×1080ドット、標準品質、ノートPC)のスコアは7963(やや快適)、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(標準品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)のスコアは1555(動作困難)を記録した。
GPU性能についてもCPU性能と同じような差が表われている。それよりも気になるのが、Zenbook 14ではPort Royalが動作しなかったこと。同じレイトレーシング関連のSolar Bayは動作しているため、レイトレーシング機能自体に対応していないわけではないが、ゲームやAPIによっては動作しない可能性がある。ゲームを購入する際には、タイトルごとに対応状況を確認したほうがよいだろう。

「3DMark」のTime Spyは1065、Fire Strikeは3638、Wild Lifeは11877、Solar Bayは6133。


「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1920×1080ドット、標準品質、ノートPC)のスコアは7963(やや快適)。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(標準品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)のスコアは1555(動作困難)

ストレージはPCIe Gen3 x4接続SSD「TWSC TSC3AN256E2-F1T40S5」を搭載しており、「CrystalDiskMark 9」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は2427MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は2077MB/sを記録した。
ストレージ速度については、PCIe Gen3 x4接続とPCIe Gen4 x4接続の差がストレートに表われた結果だ。ただし、PCIe Gen3 x4接続SSDを搭載するZenbook 14のストレージが、OSやアプリの起動でボトルネックになるほど遅いわけではない。RAWファイルの現像や、動画書き出し後のファイル保存など、大容量データを扱う作業以外でストレージ速度に不満を覚える局面はほとんどないはずだ。

ストレージはPCIe Gen3 x4接続SSD「TWSC TSC3AN256E2-F1T40S5」を搭載。「CrystalDiskMark 9」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は2427MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は2077MB/s

AIベンチマーク「UL Procyon AI Computer Vision Benchmark」のNPU – Integerは2305を記録した。ここでも大差がついているが、これは「Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100」という相手が悪いとしか言いようがない。X2E-94-100のNPU性能は80TOPS。一方、「Snapdragon X X1-26-100」も45TOPSのNPUを備えており、Copilot+ PCの要件をクリアしている。現時点のCopilot+ PCのAI機能を利用していて、NPU性能に不満を感じることはないはずだ。

「UL Procyon AI Computer Vision Benchmark」のNPU – Integerは2305

バッテリー駆動時間については、ディスプレーとボリューム40%でYouTube動画を連続再生したところ、100%から50%に達するまで10時間7分57秒(36477秒)を要した。つまり単純計算でバッテリー残量0%まで動作させた場合、20時間15分動作することになる。
あくまでも計算上の数値だが、50Whのバッテリーでこれだけ動作するというのは、Snapdragonの省電力性能の高さを改めて実感できる結果である。
互換性重視ならインテル、AMD
価格と軽さ優先ならクアルコム版
インテル、AMD、クアルコムのプロセッサーを搭載したZenbook 14のうち、どれを購入するのかというのは非常に悩ましい。個人的には2万円という価格差であれば、x86系プロセッサーを搭載したインテル版、AMD版に魅力を感じる。互換性が高いからだ。
しかし、これから初めてパソコンを買うという人であれば、互換性の問題はあまりないと思う。特にメジャーなアプリを中心に使うのであれば、もはやArm系プロセッサーを使っていることに、買った本人も気づかないぐらいのレベルに互換性は達している。となると、約200g軽いという点は筆者にも魅力的に感じられる。本当に悩ましいのである。
今回クアルコム版を試用した筆者の結論としては、互換性を重視するのであればインテル版かAMD版がオススメだ。できるだけ安価に、そして軽量なモバイルノートPCを使いたいのであれば、クアルコム版がオススメと言えるだろう。
