韓国「KIA(起亜)」が日本市場への参入を果たした。PV5は乗用の「パッセンジャー」と商用(1ナンバー)の「カーゴ」の2タイプ(写真はパッセンジャー)で、価格はパッセンジャーが679万円から769万円、カーゴは619万円と679万円
世界ですでに3万台売れた電動ミニバン
ヒュンデに続き、韓国のKIA(起亜)が日本市場への参入を果たしました。KIAは自転車の部品を扱うメーカーとして1944年に創業した京城精工という会社がはじまりとされ、1960年代にはマツダのノックダウン生産を開始。その後もプジョーやフォードなどのノックダウンを手掛け、1990年に起亜自動車に社名を変更、1999年に現代自動車(=ヒュンデ)の傘下に入り、現在に至っています。
日本へ導入されたPV5はEVのいわゆるミニバンで、商用と乗用の2タイプが用意されています。日本ではほとんど馴染みのないPV5ですが2025年6月の発売以来、現時点で50カ国以上に展開され、2026年の上半期における販売台数はすでに3万台を超えています。欧州におけるEVミニバンのシェアは、イギリスで54%、オランダで44%、ドイツで32%と堅実な実績も見られます。
画像は2025年2月の世界発表時のPV5 カーゴ
PV5に採用されているE-GMP.S(エレクトリック・グローバル・モジュール・プラットフォーム・フォー・サービス)と呼ばれるモジュラー・アーキテクチュアは、さまざまなボディ形状に対応可能なシャシー/バッテリーモジュール/パワートレインで構成されている点が最大の特徴です。
スケートボード型シャシーに近いフラットな構造のE-GMP.S。この上にさまざまなボディを構築できる
ボディはフレキシブル・ボディ・システムという、用途に応じてさまざまボディパネルを組み合わせる構造で、これが商用/乗用のいずれのニーズにも応えることを可能にしています。
バッテリー容量はスタンダードで51.5kWh、ロングレンジで71.2kWh、航続距離は乗用のスタンダードで377km、ロングレンジで521km、フロントに搭載された駆動用モーターの性能はスタンダードが89kW/250Nm、ロングレンジが120kW/250Nmとそれぞれ公表されています。
日本のCHAdeMO規格の急速充電が使えるほか、V2LやV2Hにも対応可能。アウトドアでの電化製品の使用や、停電/災害時の非常用電源としても活用できる
スタイリングは室内のスペースを最大限に確保するべく曲線の少ない角張った造形になっていること、ボンネットが最小限であること、ガラスエリアが広いこと、そしてフロアが低いこと(最低地上高は175mm)などが特徴です。
全長は約4.7m、全幅は1900mmを切っていて、最小回転半径が5.5mと、日本の道路事情には適したボディサイズと取り回し性を備えている
日本車のミニバンとはまったく異なる発想のデザインなので、実車を目にしてもとても新鮮に感じるし、大きなフロントグリルのないすっきりした顔も印象的です。
写真奥が商用のカーゴ、手前が乗用のパッセンジャー
ラゲッジルームの容量は2列目シートを使用した状態でも最大1330L、2列目の折り畳むと最大3615Lというとてつもなく広大なスペースが現れます。
カーゴのバックドアは観音開き式
パッセンジャーはハッチバック
ポップアップルーフをつけたアウトドア向けカスタマイズ例も
運転席周りは商用も兼ねていることもあり、極めて機能的に設計されています。7.5インチのメーターディスプレイには、運転に必要なインフォメーションが見やすいグラフィックで映し出され、その奥のダッシュボード上部には充電用のUSB-Cポートが設けられた大きな収納スペースを配置。
機能的なコクピット。シフトセレクターはステアリングポストに設置される回転式。運転席からの視界は極めて良好で、最低限の運転支援システムが標準装備される
センターには12.9インチのタッチ式ディスプレイが置かれています。フロントシートにはヒーターとベンチレーションが標準で装備されるなど、快適性への配慮もうかがえる仕様になっています。

想像以上の乗り心地とヘビーデューティーへの期待
KIAは自動車メーカーとしての歴史と実績があるので、PV5の走る/曲がる/止まるの基本性能はいずれもとてもしっかりしています。特に、ボディ剛性が高くサスペンションがよく動くので、乗り心地と操縦性に優れている点が想像以上でした。商用と乗用でアーキテクチュアを共有するということは、タフな使い方をされる商用でも問題のない耐久性を備えているということでもあり、乗用での経年劣化の少なさにも期待できそうです。
乗用でも商用でも、基本性能に不満はほとんどない。むしろ操縦性や乗り心地は期待を大きく超えるものだった。今後、オプションでフラットベッドが用意される予定だそうで、車中泊には最適なモデルになるかもしれない
いっぽうで、懸念されるのはKIAが今後も(撤退することなく)ずっと日本市場で商売を続けてくれるのかという点です。KIAジャパンは双日という商社の100%出資であり、本国100 %出資の現地法人ではありません。家電と異なり、クルマは定期点検や車検などの継続的なアフターサービスが不可欠な商品です。性能は問題ないとしても、購入後の日本のユーザーの不安をどれだけ解消できるのかが、このクルマとKIAというブランドの最大の課題でしょう。テスラはいまでこそ街中でよく見かけるようになりましたが、日本で販売をスタートしたのは2014年のこと。そこそこの信頼を得るまでには、最低でも10年以上は必要なのです。
KIA PV5 Passenger
全長×全幅×全高:4,695×1,895×1,925mm
ホイールベース:2,995mm
荷室寸法(長さ×幅×高さ):1,311×1,524×1,193mm
車両重量:2,140kg(71.2kWhモデル)、2,060kg(51.5kWhモデル)、1,990kg(51.5kWhモデル ベーシックグレード)
最高出力:120kW(71.2kWhモデル)、89kW(51.5kWhモデル)
最大トルク:250Nm
タイヤサイズ:215/65 R16
駆動方式:前輪駆動
乗車定員:5名
価格:679万円から769万円
KIA PV5 Cargo
全長×全幅×全高:4,695×1,895×1,925 mm
ホイールベース:2,995mm
荷室寸法(長さ×幅×高さ):2,255×1,450×1,520mm
車両重量:1,910kg(71.2kWhモデル)、1,830kg(51.5kWhモデル)
最高出力:120kW(71.2kWhモデル)、89kW(51.5kWhモデル)
最大トルク:250Nm
タイヤサイズ:215/65 R16
駆動方式:前輪駆動
乗車定員:2名
価格:619万円かから679万円
