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    小野哲史

    2026/10/09

    (最終更新:2026/10/09)

    順天堂大のエース・田島愛理(すべて撮影・小野哲史)

    全日本大学女子駅伝の関東地区予選を兼ねた関東大学女子駅伝が10月3日に千葉県印西市千葉ニュータウン周回コースで行われ、順天堂大学がチーム過去最高順位タイとなる2位に輝いた。全国の強豪がひしめくシード校の牙城がじょうに風穴を開け、チーム目標だった「シード校にインパクトを残す」を見事に体現。その中心にいたのが、大学女子中距離界の頂点に君臨するエース・田島愛理(4年、静岡サレジオ)だ。

    エースとして悔しさ残すも、チームは躍進の準優勝

    秋晴れのもと、強い日差しが照りつけたコースで順天堂大は1区から先頭争いに加わり、安定したレース運びで上位をキープした。仲村明駅伝監督も「これくらいの順位でつないでいって、結果的に3番以内に入れればというイメージ通り。1区からその通りの流れになりました」と目を細める快走劇だった。

    だが、7.3kmの5区を任され、23分53秒の区間2位で走った田島は自身のパフォーマンスに満足していなかった。「チームとしては目標にしていた順位以上でゴールできたのでうれしいですが、自分の走りとしてはうまく流れに乗れなかった。設定していたタイムよりも全然遅かったです」

    約1週間前の日体大長距離競技会1500mで4分10秒85をマークし、自身の持つ日本学生記録を0.17秒塗り替えたばかり。その直後の駅伝出走に加え、急激な気温上昇が体力を奪った。「前週の疲労がこの暑さで一気にどっと出てしまって、身体がなかなか追いつかないきついレースになってしまいました。みんなが良い走りをしてくれた分、自分はふがいない走りになってしまった。もっと頑張らないといけないなと思いました」

    そんなエースの反省とは裏腹に、チームにとっては大きな収穫を手にしたレースとなった。この日出走した6人のうち、4人が1年生。大学駅伝初舞台のルーキーたちが物おじせず攻めの走りを貫いた。仲村監督も「1年生ですけど、それぞれ腹が据わっている子が多いので不安はなかった。そこに4年生2人がきっちりと控えていたので、安心して走らせることができました」と振り返る。

    田島は同じ最上級生としてチームを引っ張った石上栞理(4年、順天)の走りを真っ先にたたえた。「最上級生として本当に力強い走りをしてくれました。あの区間に4年生を配置できたことが、1年生にとっても大きかったと思います」。後輩たちが勢いをもたらし、4年生がどっしりと支える。悔しさをかみ締めながらも、チームの確固たる結束を田島は肌で感じていた。

    石上栞理(左)からたすきを受け取る田島

    地道に力を蓄え、大学3年目に大きく飛躍

    いまや大学女子中長距離界の顔となった田島愛理だが、順風満帆なエリート街道を歩んできたわけではない。

    静岡県島田市出身。中学時代はバスケットボール部に所属し、島田市代表として出場した市町対抗駅伝の時、勧誘を受けたことがきっかけで高校から本格的に陸上を始めた。高校では800mや1500mでインターハイに出場するなど着実に実績を積み上げたが、全国のトップ争いに常に名を連ねるような華々しい存在ではなかった。

    ターニングポイントとなったのは昨年、順天堂大に進学して迎えた3年目のシーズンだった。持ち味のスピードに一段と磨きがかかり、自身が「トラックでは自分の思った以上の成績を残せて驚きました」と振り返るように、6月の日本インカレを制すと、7月の日本選手権(4分12秒53)、8月のベルギーでのレース(4分11秒02)と2カ月連続で日本学生新記録を樹立。その才能は秋のロードで一気に開花した。

    昨年の全日本大学女子駅伝で、田島は各校のエースが集う最長区間(9.2km)の5区に起用された。中距離を主戦場とする選手にとって9km超のアップダウンは未知の領域とも言えたが、田島の力強い走りは最後まで衰えることなく、堂々の区間3位。16位だったチームをシード圏内まであと2秒の9位へと押し上げた。

    「昨年は駅伝でも初めて長い区間を任されて、単独走になっても最後まで行き切ることができました。あの経験が自分の大きな自信と強みにつながっていった気がします」。中距離特有のスピードを、いかに駅伝の長距離走へと結びつけるか。練習と実戦を重ねる中で「中間走の走り」を確立させた田島は、スピードランナーの枠を超えた万能型のエースへと急成長遂げた。

    昨年がターニングポイントとなり、急成長を遂げた

    1500mの日本学生記録樹立と、指揮官が語る田島評

    大学ラストイヤーとなった今年度も、田島の進化はとどまるところを知らない。

    7月の日本選手権1500mでは、並み居る実業団のトップ選手を相手に2年連続となる3位で表彰台に上がった。9月の日本インカレでは1500mで圧巻の2連覇を達成し、さらに5000mとの2冠を達成。そして極めつきは、前述した9月27日の日体大長距離競技会1500mでの自身3度目となる日本学生新記録の樹立だ。

    突出したスピードと安定して結果を残し続ける田島を指揮官はどう見ているのか。その強さの秘訣ひけつを問うと、仲村監督は表情を緩めてこう語った。

    「オンとオフのメリハリをつけられる選手です。日常生活では『ふわーっ』としていますが、いざ練習やレースになるとキュッとスイッチが入って、集中力がぐっと高まる。こちらが提示した練習メニューもそつなくこなしますし、大事な練習や本番を外すことがほとんどない。あんなに信頼感を持てる選手には、なかなか出会えないですね」

    さらに興味深いのは、田島の類いまれな才能をスポイルしないための育成方針だ。駅伝シーズンに入っても、過度な長距離練習を課すことはないという。

    「トラックの短い距離をベースにして、駅伝の長い距離に関してはペースランニングのような感覚です。『8割くらいの力で走って、それが良い練習になればいいね』というスタンスで送り出しています。もっと距離を踏ませれば駅伝のタイムも伸びるんでしょうが、それではけがのリスクが増えてくる。実業団に行ってもまだまだ活躍してほしい選手ですから、〝伸びしろ〟を持たせた状態で育てていきたいと思っています」

    監督の温かいまなざしとクレバーな育成のもと、田島は自らの武器であるスピードを研ぎ澄まし続けている。

    仲村監督の評は「オンとオフのメリハリをつけられる選手です」

    杜の都で初のシード権へ、そして世界へ

    関東での戦いを終え、次なる戦いの舞台は約2週間後に迫る全日本大学女子駅伝だ。チームは決戦に向けて、「5位以内・初シード権の獲得」を目標に掲げた。

    順天堂大は1995年の全日本で4位に入った他、90年代後半を中心に6位や7位に入った実績がある。しかし、それはシード制度が導入される以前のこと。現在のシード権(上位8校)が設けられて以降、チームは一度もシード権を手にしたことがない。前回はシードまで21秒届かず、9位に終わっている。

    だからこそ田島は、強い決意を口にする。「全日本では、チームとして5位以内を目指しています。どの区間を任されたとしても、しっかり先頭を目指す走りをしたい。去年は長い区間を走って自分でも納得のいく走りができたので、またしっかり調子を合わせて、みんなで笑って終われる駅伝にしたいです」

    仲村監督も「今回は外れた者も含めたメンバーで、誰が走っても結果を出せるようにしっかり詰めていきたい」と語り、杜もりの都での初シード獲得へ視界は良好だ。

    全日本の先には、年末の富士山女子駅伝も控える。富士山を望みつつ、高低差が激しい過酷なコースに対し、田島は「特殊な区間が多いからこそ、自分たちの強みを生かせる。全日本以上の3位以内を目指したい」と力を込める。

    そして、大学卒業後の自身も「1500mを主戦場として、トラックで世界と戦える選手になりたいです」と、イメージができている。ただ、まずは大学生活最後となる駅伝シーズンに全精力を注ぐ。「大学ラストイヤーなので、どんな走りをしてもこれが最後。悔いの残らないよう、自分を追い込む走りをしていきたいです」

    頼もしい後輩たちと、苦楽を共にしてきた同期とともに。順大のエース・田島愛理の熱い挑戦は、ここからクライマックスへと突入する。

    関東大学女子駅伝で2位となり、チームメートとともに笑顔を見せる

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