(ブルームバーグ):世界で大型企業の上場が続く中、日本の新規株式公開(IPO)市場が低迷している。東京証券取引所による上場維持基準引き上げの影響や、国内にAI関連の上場候補が少ないことが背景にある。
ブルームバーグのデータによると、1-9月のIPO件数は32社と、この期間として2012年以来の低水準に落ち込んだ。資金調達額は4年ぶりの少なさだった。日本を除くアジア太平洋でIPOによる調達が急増したのとは対照的だ。
今年はタクシー配車のGOなどが上場
世界ではAIのサプライチェーン(供給網)を担う企業がIPO市場をけん引しているが、日本は中国などと異なり、テクノロジー分野で投資家の関心を集めるスタートアップが相次ぎ誕生する状況にはなっていない。さらに、東証がグロース市場の改革に着手し、上場維持基準を厳格化する方針を示したことで、上場をためらう企業が出ている。
みずほ証券の渡邊仁人公開引受部長は、最短でも2-3年かけて上場を準備する中、新たな基準が示されたことで「上場は今ではないと判断をする企業も多い」と話す。
東証はこれまで「上場から10年経過後に時価総額40億円以上」としていた上場維持の基準を、30年3月以降は「5年経過後に100億円以上」に見直す。
こうした変更は未公開株市場におけるスタートアップの資金調達力にも影響を及ぼしている。主要な出口戦略であるIPOの不透明感が増し、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドが投資に慎重になる可能性が高まるためだ。
スタートアップなどに投資するShiza Venturesの松田怜佳氏は、「東証の条件をクリアできるだけでなく、上場後も成長していける企業を証券会社も選別している」と言う。
再上場
一部の引き受け関係者や投資家は投資ファンドの再上場案件などが短期的に日本のIPO市場を支えるとみており、必ずしも悲観一色というわけではない。
米ベインキャピタルの投資先でイトーヨーカ堂などを傘下に持つヨーク・ホールディングスは2年以内の上場に向け準備を進めており、米KKR傘下のロジスティード(旧日立物流)は27年にも再上場する可能性がある。複数の関係者によると、日本産業パートナーズ(JIP)傘下の東芝は最短で28年度の再上場を想定している。
大和証券の白埜宏明プライベート・キャピタルソリューション部長は、再上場案件を踏まえ、IPO市場は「調達金額の面では相応の規模になる」との見方を示す。従来のような年間100社の上場ペースに戻るとは考えていないとしつつ、「IPOを目指す企業が必ずしも減っているわけではなく、上場件数は徐々に回復する」と予想している。
今年の主要な国内IPOはタクシー配車のGOや、自動運転のティアフォーにとどまっている。事情に詳しい関係者によると、人事労務ソフトを手掛けるSmartHR(スマートHR)は、時価総額を巡り投資家との目線が一致しなかったことから、年内に目指していた上場を延期した。
一方、中国では半導体メモリー大手、長鑫存儲技術(CXMT)を傘下に置く長鑫科技集団(CXMT Corp.)が7月に上場。光通信機器メーカーの中際旭創も1兆円規模のIPOで香港に重複上場した。今後もムーンショットAI(月之暗面)やAIスタートアップのDeepSeek(ディープシーク)が27年の上場を目指している。
DGベンチャーズの磯部融輝投資部長は、「生成AI関連の大型ラウンドへ資金が集中する傾向は続いている」と指摘。この結果、3-4年前と比べ、AI以外の非上場企業による資金調達ラウンドに参加する投資家は少なくなっている印象だと述べた。
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