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    (C)GIRLS und PANZER Finale Projekt

    10月9日より劇場上映開始した「ガールズ&パンツァー 最終章」第5話。上映に先駆けて1日に開催された「公開直前ティーチイン付きDolby Cinema試写会」のイベントレポートが到着した。

    イベントには、シリーズの音響監督を務める岩浪美和と、Dolby Cinema版の映像制作に携わったシニア・スーパーバイザー/カラリストの庄司光裕が登壇。

    さらに、「ガールズ&パンツァー」を長年取材し、オフィシャルライターも務める公森直樹がMCを務め、「Dolby Cinemaで『ガルパン』を観ると、何がどう変わるのか?」をテーマに、映像と音響の両面から、その魅力と制作の舞台裏を徹底解説した。

    岩浪美和氏(左)、庄司光裕氏(右)

    第5話のDolby Cinema版上映を終えたばかりの会場で、まず話題となったのは、そもそも「Dolby Cinema」とはどのようなものなのかということ。

    映像面について庄司は、Dolby Cinemaで採用されている「Dolby Vision」の大きな特徴として、“黒”の表現力について、通常の劇場上映では、スクリーンに投影することでどうしても黒がわずかに浮いて見えてしまうことがある一方、Dolby Cinemaでは、「0%の黒が、ちゃんと0%の黒で出る」と説明。

    黒がより深く表現されることによって、暗い場所に隠れていた細かなディテールまで、損なわれることなく見ることができるという。さらにHDRによって、従来以上の明るさや色彩、色域を表現することが可能に。

    庄司は、これによって「演出で表現できる幅が増える」と語り、よりドラマチックで没入感のある映像を生み出せることが、Dolby Cinemaならではの魅力だと語った。

    続いて話題は、“音”も大きな魅力のひとつである「ガールズ&パンツァー」と、Dolby Atmosの関係へ。

    長年にわたり映画音響の主流だった5.1chから大きく進化し、前後左右だけでなく、天井を含めた三次元空間に音を配置できるDolby Atmos。岩浪音響監督は2013年頃、Dolby Atmosで制作された作品を初めて体験した際、「これはもう、日本の映画音響業界は10年遅れたな」と大きな衝撃を受けたことを明かす。

    もともとエンジニアでもある岩浪は、「最高のフォーマットで音を作りたい」という思いから、その後さまざまな挑戦を重ねてきたそう。そして2015年、「ガールズ&パンツァー 劇場版」が公開。音響にこだわった劇場上映が大きな盛り上がりを見せた当時を振り返り、岩浪は、「映画館へ“音を聴きに行く”というムーブメントが、おそらくそこから日本で初めて生まれたのでは」と、「ガルパン」が映画館での音響体験にもたらした変化についての手ごたえを語った。

    Dolby Atmosでは、劇場の前後左右に加え、天井にもスピーカーが設置される。制作時には、音をXYZの三次元座標上に配置し、「どの場所から鳴り、どの方向へ動いていくのか」まで設計することができると岩浪。

    今回上映を行なった試写室と比べても、実際のDolby Cinemaの劇場はより広く、天井にも高さがあることから、「今日ご覧になったものよりも、何倍も没入感があると思います」と太鼓判。戦車の走行音や砲撃音、キャラクターたちを取り巻くさまざまな音が劇場空間を縦横無尽に駆け巡る、「ガルパン」とDolby Atmosだからこその“没入型”の映画体験への期待をアピールした。

    続いて、話題は「最終章」第5話のDolby Cinema版を作り上げるために行なわれた映像面での作業へ。庄司は、Dolby Cinema化にあたり、まず4K化の作業を行なったことを説明。「ガールズ&パンツァー 劇場版」で培った技術をベースに、さらに技術的なブラッシュアップを重ね、戦車をはじめとする繊細なディテールをより鮮明に表現していったという。

    アップコンバートにはAI技術も活用。AIによる画像解析と処理で補完。それで完成するわけではなく、「最終的には人間の目で見て、作成、調整しています」と庄司。最新技術を活用しながらも、最後はスタッフ自身の目で細部まで確認し、丁寧に修正を重ねることで、今回のDolby Cinema版を完成させたことを明かした。

    さらに庄司は、Dolby Atmos環境で作品を聴くと、通常の環境では気づかなかったような音まで聞こえてくることがあると説明。それを踏まえ、今回の映像調整では、「微かな火花があったら、そこは見逃しちゃダメなんだ」というほど細かな部分にまで目を配ったと話す。

    特に「ガルパン」の代名詞ともいえる戦車戦では、画面の奥で起きている攻撃など、映像上ではわずかな変化であっても、そこには確かに“音”が存在しているため、音だけが聞こえて映像側の情報が埋もれてしまわないよう、音響をイメージしながら明るさやディテールを細かく調整。映像と音が互いを引き立て合うように作り込まれていることが語られた。

    では、第5話のDolby Cinema化で最も大変だったところは? と岩浪から問われた庄司は、「一番大変なのは、もう、試合が始まってから全部です(笑)」と即答。具体的な内容はネタバレになるため明かせないものの、第5話の戦闘では明暗が激しく変化するシークエンスが続くといい、長いカットの中でも一律に同じ調整を施すことはできなかったそう。

    そのため、「このコマは白を立てる」「ここでは黒を落とす」など、なんとコマ単位で調整。特に昼間の戦闘シーンでは、明るい背景の中でも砲弾の光がしっかりと映えるよう、バランスを調整する難しさもあったとのこと砲弾の動きを追いかけながら、「このコマでは白を伸ばし、砲弾が抜けたら戻す」といった細かな作業を重ね、演出に合わせた映像を作り上げたことを明かした。何気なく目にしている一瞬の砲撃、そのわずかな光の裏側にも、驚くほど緻密な調整が施されてた。

    一方、音響面でも「ガルパン」ならではの知られざるこだわりも。例えば、戦車同士が激しくぶつかり合う戦闘シーンでは、砲撃音、走行音、金属音など、さまざまな音が同時に存在するが、岩浪によると、すべての音を聞かせればいいわけではないという。

    「このカットの狙いは何なのか」「どこを見てほしいのか」を考えながら音を整理し、「いらない音は捨てる」という作業を行っていることを明かした。音を増やし続けるのではなく、本当に聞かせたい音を選ぶ。

    さらに、その音によって観客に「どこを見てほしいのか」まで補完していくのだといい、音の分離に優れるDolby Atmosだからこそ、こうした演出意図もより明確に伝わり、観客を物語の中へ引き込む“没入感”につながっていると解説。

    イベント後半では、第5話前半の日常シーンから、後半の戦闘シーンへと移り変わる中での音響設計についても質問が。岩浪が大切にしているのは、映画ならではの「ダイナミックレンジ」。「静かなところは静かに聴かせる。派手なところは派手に聴かせる」というメリハリを意識して音を設計していると話す。

    さらに、配信や商品化の際には、それぞれの視聴環境に対応するため、ダイナミックレンジを圧縮した別の素材を制作していることも明かし、「配信になったら音は変わるんですよ。だから映画館で観てほしい。そこは書いてください(笑)」と、報道陣に猛アピール。劇場という空間だからこそ味わえる『ガルパン』の“音”を、ぜひスクリーンで体験してほしいと呼びかけた。

    2013年頃からDolby Atmosというフォーマットに魅了され、挑戦を続けてきた岩浪。今回、「最終章」第5話をDolby Cinemaをはじめとするラージフォーマットで届けられることについて、「13年前に思い描いていた世界」と感慨深げに語り、「『ガルパン』という作品だから、こういう環境が生まれたと思います」と、長年にわたって映像と音響の可能性に挑戦し続けてきたシリーズへの思いを口にした。

    また、現在考えられる最高峰のフォーマットで作品を残しておくことは、未来の映像・音響技術につながる“アーカイブ”という意味でも重要だと語り、映画のさらなる進化にも期待を寄せた。

    イベントの最後には、公開を心待ちにしているファンへメッセージを求められ、Dolby Cinemaは上映できるスクリーンが限られていることから、岩浪は、「できるだけ早く、たくさんの方に観ていただきたい」と呼びかけた。

    そして庄司も、「とにかく、今の日本で最高峰の映像と音響を確かめていただきたいですね」と力強くコメントした。

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