アップルの2026年モデル「Apple Watch Series 12」を、発売前から約2週間使ってみた手応えをレポートします。
2025年発売のSeries 11から外観は大きく変わっていませんが、身体の状態をより細かく捉える新しいヘルスセンシングシステムと「Apple S11」チップを搭載したSeries 12は、毎日の健康管理を重視する人にとっては見逃せないスマートウォッチです。
↑Apple Watch Series 12を約2週間試してわかった「買い」の理由をレポートします
安価で軽いアルミニウムケースがおすすめ
Series 12のケースサイズは42mmと46mm。素材はアルミニウム、チタニウム、セラミックの3種類があります。アルミニウムのケースは軽く、3種類の中でもっとも価格が手頃な選択肢で、日常使いや運動、睡眠記録まで幅広くこなしたい人におすすめです。アルミニウムのカラーはダークブロンズ、ライトゴールド、ブラック、スペースグレイの4色です。
チタニウムは煌びやかで高級感があふれています。久しぶりに復活したセラミックケースは自然な光沢仕上げとしています。どちらのケースも、アルミニウムに比べると重量が少し重くなっています。
↑Series 12、チタニウムケースの「ラディアントゴールド」
↑Series 12、セラミックケースの「ナイトブルー」
アルミニウムケースのGPSモデルは71,800円から購入できます。Series 11の価格は64,800円だったので、7,000円値上がりした計算です。この後に説明する進化の内容を踏まえれば納得できるのではないかと思いますが、決して気軽に購入できる価格ではないのも事実でしょう。
ちなみに通知、決済、基本的な運動・睡眠記録といった基礎的な機能が目的なら、41,800円から購入できるスタンダードモデルの「Apple Watch SE 3」が販売を継続しています。また長時間のアウトドア使用にも耐える電池持ちの良さを最優先するならば、今年の新モデルである「Apple Watch Ultra 4」も選択肢に入るはずです。
とは言え、ケースが薄く、長時間着けやすいことと、最新の健康・AI機能が両立するバランスの良さといった要素を考えると、筆者の一押しはSeries 12です。筆者が本機を勧める理由は大きく3つあります。
↑Series 12のアルミニウムモデルは9.7mmの薄型ケース。睡眠サイクルのトラッキング中も比較的快適に身に着けられます
理由1:身体の変化をより細かく把握できる
最も大きな理由は、Series 12とUltra 4が新しい「ヘルスセンシングシステム」を搭載しているからです。
バックグラウンドの心拍数は5秒ごと、ストレスや回復の目安になる心拍変動(HRV)は最短5分ごとに測定します。測定頻度はSeries 11に比べて、それぞれ約60倍、最大24倍に高まりました。
↑新規に開発したヘルスセンシングシステムを、Series 12とUltra 4が搭載しました。よりきめ細かな生体データの計測に対応しています
スペックが向上しただけではありません。心拍数アプリでは変化を細かなグラフで追うことが可能になり、バイタルアプリには日中の安静時心拍数とHRVを確認する表示も加わりました。寝ている間だけでなく、仕事やワークアウトをしながらウォッチを装着して過ごしている、日中の変化も計測して表示できます。
アルミニウムモデルのカバーガラスは従来のIon-XからCeramic Shield 2に変わり、強度も60%向上しています。
↑アルミニウムモデルのカバーガラスは耐傷性能の高いCeramic Shield 2に。2000nitsの高輝度により、屋外でも高い視認性を確保しています
アルミニウムとチタニウムは9.7mm、セラミックは9.85mmのスリムケースを採用。就寝中に身に着けていても邪魔になりにくく、睡眠トラッキングも安定します。着けやすさと丈夫さも、実は健康機能を支える大切な性能です。
Apple Watchが記録した健康データは、ユーザーが許可した範囲でHealthKit対応のアプリにも活用できます。高頻度に計測されるデータのすべてが外部のデベロッパーに開放されたわけではありませんが、HealthKitを介して、将来のヘルスケアやフィットネス系のサービス向上、医学研究の前進といった可能性も広がります。
理由2:Apple Intelligenceの新しい体験を待つ楽しみ
アップルはアメリカで、2026年内の提供に向けて、Apple Intelligenceを組み込んだヘルスケアアプリの刷新を予定しています。
より長期的にユーザーの健康傾向を分析し、生体データをわかりやすいアドバイスに変える構想が9月の発表会でも紹介されました。Apple Intelligenceがユーザーの睡眠や心拍数、運動、バイタルなどのデータを横断的に分析し、健康状態の変化や生活習慣を改善するためのヒントを、ヘルスケアアプリ上でわかりやすく提示してくれるイメージです。
↑9月の新製品発表会では、Apple Intelligenceがユーザーの健康に関するヒントを教えてくれるといった機能の追加が予定されていることが明らかになりました。まずはアメリカからアップデートが提供される予定です
日本での提供時期は残念ながら未定です。Apple Intelligenceを組み込んだ新しいヘルスケアアプリはSeries 12、Ultra 4専用の機能ではありません。ただし、最新モデルなら高頻度の心拍数・HRV測定や準備度など、より詳細なデータを新しい健康体験に活かすことが期待できます。
一方で、Series 12とUltra 4から搭載が始まるApple Intelligenceの新しい機能群があります。それが「Audio Intelligence」です。
Audio Intelligenceは、ウォッチに内蔵する高性能マイクとApple S11チップ、オンデバイスおよびクラウドのAIを組み合わせて周囲の音を理解することで、以下4つの機能を実現します。
サイレンやドアベルなどを知らせる「サウンド認識」、周囲の曲を自動で見つける「Shazam」、聞き逃した直前15秒の会話をテキストで確認する「Live Rewind」、そして日常の会話から要点を抽出し、あとで振り返れる短い要約を自動生成する「Siri Recap」です。
↑聴き逃した15秒の会話をテキストで確認できる「Live Rewind」。音声はApple Watchに記録されません
日本ではサウンド認識とShazamが利用できます。筆者もSeries 12でShazamによる楽曲検索をカフェで試しました。気になる音楽が聞こえてきたら、ダブルタップでスマートスタックを起動すると、Shazamのウィジェットが自動的に起動して即座に楽曲を認識しました。Shazam自体は既存の機能ですが、従来はウォッチでアプリを起動する手間がかかっていたので、これからは「探そうとしたのに、Shazamの起動が間に合わなかった!」という失敗から解放されそうです。
↑Shazamによる楽曲検索もすばやくできるようになります
Live RewindとSiri RecapはApple Intelligenceが会話の理解や要約を担います。2026年後半に英語からベータ版が始まりますが、日本語対応は未定。どちらもボイスレコーダー的な使い方を想定している機能ではないため、音声は録音・保存されません。必要なテキストはSiriアプリに保存して、あとから見返すことができます。Apple S11チップを構成するSecure Exclaveのコンポーネントにより、プライバシーを保護しながら処理する設計も重要です。
Siri AI自体はベータ版として2026年10月から日本語にも対応します。Apple IntelligenceがSiriをより自然でパーソナルな体験をつくり出せるのか、Audio Intelligenceの日本語対応も含めて「伸びしろ」を期待できるところにもSeries 12の魅力があると思います。
↑Siri AIもまもなく日本語に対応する予定です
理由3:新しい準備度アプリで毎日の元気をチェック
ヘルスセンシングシステムを搭載するSeries 12とUltra 4には、「準備度」という新しいアプリが搭載されています。
準備度はユーザーの活動量、睡眠、バイタルを分析し、その日にどれほどアクティブに動ける(あるいは休息が必要な)状態なのかを、0〜10までのスコアに「休養」「無理せずに」「準備完了」「絶好調」という評価を添えて提示します。
準備度を利用するにはユーザー独自の「基準値」を把握するため、Series 12の試用を開始してから、少なくとも7晩はApple Watchを装着して眠り、睡眠と夜間バイタル値を記録する必要がありました。
↑準備度を確認するためには49日の間に7晩、睡眠時のバイタル計測によりデータを蓄積する必要があります
筆者の場合、最初のスコアが表示されたのは計測開始から12日目でした。就寝中に本体の装着位置がずれたり、海外出張でタイムゾーンが変わったりしたため、有効な夜間データがなかなか揃わなかったからです。
眠っている間も、Apple Watchの背面にあるヘルスセンシングシステムを手首に密着させることが、正確なデータを記録するためのコツです。「Nikeスポーツループ」のように、きめ細かなフィット調節ができて、手首への密着度を高められるバンドがおすすめです。
↑寝起きに準備度スコアをチェック。スコアがいいと「頑張ろう!」と気合いが入り、反対にイマイチなスコアの場合は無理せずに身体を休める方向に意識が向かいます
高いスコアが表示された日は気分も上向き、朝から積極的に体を動かしたくなります。反対に睡眠不足などが影響して「無理せずに」と表示された朝には、ペースを落として身体をいたわるきっかけになります。
スコアは日中の運動やバイタル値に応じて変化するため、朝に一度確認して終わる“占い”のようなものではありません。一方、医学的な診断を行う機能でもなく、その日をどう過ごすかを最終的に決めるのはユーザー自身です。準備度はその判断を支え、生活のリズムを整えるためのアドバイザーとして役立つ機能だと思います。
↑ウォッチを身体に密着できるバンドがおすすめです
watchOS 27非対応なSeries 8以前からの買い換えが吉
ほかにも、Apple Watch Series 12では細かな使い勝手が向上していました。2024年からSeries 10を使ってきた筆者の感覚では、指を合わせるダブルタップ、手首フリックなど「ジェスチャー操作」への反応が速く、判定も安定していると感じます。片手がふさがっている時に、通知を閉じたりスマートスタックを呼び出したりする操作が失敗しないので、とても軽快です。
↑指を重ね合わせるタップジェスチャー操作への反応が安定しました
アップルが発表しているスペックのバッテリー駆動時間はSeries 11と同じ最大24時間ですが、充電は高速化しました。筆者の使い方では、就寝前に残量が20%前後でも、入浴や寝支度をする約30分の間にバッテリー残量を約70%まで戻せました。公称では15分間の充電で最大12時間使えます。睡眠計測を行う直前に、バッテリーの残量が足りないことに気が付いても、すぐにチャージできるので安心です。
Series 10やSeries 11を不満なく使っているユーザーにとって、Series 12への買い替えは必須ではないと思います。一方で、初めてのApple Watchを手に入れたい方や、9月にリリースされた最新のwatchOS 27に非対応となってしまったSeries 8以前(初代UltraとSE 2以前を含む)のモデルからの買い換えを検討している方は、これからSiri AIと一緒に、よりスマートに進化するSeries 12の「新しさ」を満喫できると思います。
