
近年は特に先進国における出生率低下が著しく、多くの国では合計特殊出生率が人口を維持するのに必要な「2.1」を下回っています。そんな中、フィンランドのヘルシンキ大学が主導した研究では、「出産した回数」が母親の寿命に影響を与える可能性があることがわかりました。
Epigenetic aging and lifespan reflect reproductive history in the Finnish Twin Cohort | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-025-67798-y
Number and timing of children linked to biological aging | University of Helsinki
https://www.helsinki.fi/en/news/public-health/number-and-timing-children-linked-biological-aging
The Number of Kids You Have May Affect Your Lifespan, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/the-number-of-kids-you-have-may-affect-your-lifespan-study-finds
人間をはじめとするほとんどの動物にとって、生物学的な老化は避けられないものとなっています。20世紀後半に提唱されたDisposable soma theory(使い捨ての体理論)では、生物が老化するのは成長や生殖、そしてDNAの修復・維持による進化的なトレードオフだと主張されています。
生物がさまざまな細胞プロセスに割り当てられる資源は有限であるため、成長や生殖に資源が割り当てられるとその分だけDNAの修復・維持に回される資源が減り、細胞損傷が増加したりテロメアが短くなったりして老化が加速するというわけです。
フィンランドの研究チームは、1957年以前に生まれた双子の女性を調査対象にしたフィンランド双生児コホートのデータを用いて、人生における出産歴と死亡率について分析しました。また、被験者のうち1054人については採取した血液サンプルから生物学的老化の指標を算出しました。

被験者を出産した子どもの数と出産時期に応じて7つのグループに分けて分析した結果、「生涯で2~3人の子どもを出産した女性」が最も長生きする傾向があると判明しました。妊娠の時期も重要であり、24~38歳の妊娠がより良好な生物学的加齢と長寿につながることも示されました。
一方、4人以上の子どもを出産することは、寿命の短縮および生物学的老化の加速に関連していることもわかりました。論文の筆頭著者であり、ヘルシンキ大学の博士課程に在籍するミカエラ・フッカネン氏は、「進化生物学の観点から見ると、生物は時間やエネルギーといった限られた資源しか持っていません。生殖に大量のエネルギーを費やすと、身体の維持や修復に使われるエネルギーが減り、寿命が短くなる可能性があります」と述べています。
この研究では、子どもを出産しなかった女性も寿命が短く、生物学的老化が早い傾向がみられました。使い捨ての体理論では、子どもを出産しなかった女性はその分だけ身体維持に使えるエネルギーが多くなるはずであり、やや意外な結果といえます。
なお、より若い年齢で出産した女性は生物学的な老化が早く、寿命が短い傾向が見られました。しかしこの関連性は、アルコール摂取量やボディマス指数(BMI)といった他の要因を考慮すると、その差はほぼ消失したとのことです。

論文の共著者であるミーナ・オリカイネン博士は、「暦年齢よりも生物学的年齢が高い人は死亡リスクが高くなります。私たちの研究結果は、人生における選択が老齢期よりもずっと前から、測定可能で永続的な生物学的痕跡を残すことを示しています」と述べました。
なお、今回の研究でみられた関連性はあくまで集団レベルのものであり、因果関係を証明したわけでもないことから、女性はこの結果を受けて家族計画に修正を加えるべきではないと研究チームはアドバイスしています。
