アップル初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」の予約開始を目前に控え、サビ・カーン最高執行責任者(COO)が中国河南省鄭州のフォックスコン科技園を訪れ、新製品の生産ライン準備状況を実地視察した。折りたたみスマホの生産能力に対する外部の懸念に対し、カーン氏は「チームはアップルが一貫して求めてきた高水準の品質基準に沿って生産規模を拡大している」と明言した。
10月11日、カーン氏はフォックスコンテクノロジーグループ輪番CEO兼事業群総経理の蒋集恒氏の案内で、iPhone Duo生産ラインの主要工程、iPhone 18 Proリアカメラモジュール生産ライン、外装ミドルフレーム陽極酸化処理工場、SoCチップ表面スパッタリングスマート製造工場を視察した。
この日は日曜日だったが、鄭州フォックスコン園区は依然としてフル稼働だった。iPhone 18 Proシリーズは発売されたばかりで供給が逼迫しており、アップル初の折りたたみスマホであるiPhone Duoはフォックスコンの中国工場が独占的に組み立て生産を担う。予約開始を目前に控え、在庫確保のプレッシャーは言うまでもない。
視察後の取材でカーン氏は、鄭州園区はiPhoneを製造する最大の工場であり、世界でスマートフォンを製造する最大の工場と言っても過言ではないと述べた。ポケットから自身のiPhone Duoを取り出し、画面の開閉の滑らかさをその場で実演。「アップル史上最も挑戦的で、最も胸躍る製品の一つだ」と語った。
「ここには非常に強力な製造精度と設計能力がある。サプライヤーとの協力を通じてこの設計を実現している。製造プロセス全体は非常に複雑だが、ユーザーに届くのは極めてシンプルで直感的な体験だ」とカーン氏は述べた。
折りたたみ技術の製造上の難関突破
折りたたみスマホの核心的な課題は、ヒンジと画面の折り目制御にある。フォックスコン側の説明によると、iPhone Duoのヒンジは100以上の微小部品で構成され、サプライチェーンの異なる工程から供給される部品をボディ両側と精密にマッチングさせて初めて、スムーズな開閉と精緻な外観品質が実現する。
このため、アップルとフォックスコンのチームは関連工程を再設計し、カスタマイズされた自動化設備を開発した。生産ラインでは共焦点レーザースキャンで折りたたみ領域の微細形状を層ごとにマッピングし、機械学習アルゴリズムで動的充填プランをリアルタイム生成。最終的にマイクロメートル級3Dプリント技術で最大25層のカスタム光硬化ポリマーコーティングを形成し、平坦な画面支持基盤を構築する。フォックスコンはこの工程の映像を現場で公開したが、装置内部の生産プロセスは非公開とした。
生産能力の準備状況について問われたカーン氏は具体的な数字を示さず、「チームはこの革新的な製品のために製造開発を継続しており、現在はアップルが一貫して求める高水準の品質基準に沿って生産規模を拡大している」と述べた。「生産ラインの状況は皆さんもご覧の通りだ。ラインは非常に忙しく、全員が興奮している。一刻も早く製品を世界中に届けたいと思っている」と語った。
サプライチェーンの高度化と垂直統合
折りたたみ技術に加え、フォックスコン鄭州工場は半導体製造工程を完成品組み立てに導入する取り組みも披露した。SoCチップ表面に物理気相成長(PVD)スパッタリング工程を採用し、従来の金属シールドカバーを代替することで、モジュール厚を削減しつつ放熱性能を改善する。
蒋集恒氏は取材に対し、フォックスコンは従来の「世界の工場」という位置づけから、テクノロジー製造プラットフォームサービスプロバイダーへと段階的にアップグレードしていると述べた。その発展はAI駆動型製造とサプライチェーン垂直統合という2つの能力に支えられているという。SoCスパッタリングプロジェクトは、フォックスコンと鄭州航空港区国有資本プラットフォームとの合弁会社である河南宏創科技が手がける最初のプロジェクトで、今年7月に生産を開始し、現在はiPhone 18シリーズに採用されている。プロジェクトの進展に伴い、新たに1000億元規模の産業が形成されると見込まれる。
アップルサプライチェーンの現地集積効果も持続的に顕在化している。iPhoneのパッケージングを担当する中国の裕同科技は、鄭州近郊の許昌に工場を構え、1つのパッケージ箱に36の工程を要する。アップルと裕同科技が共同開発したスマート自動光学検査装置は、1.9秒で64枚の高精細画像を撮影し、全方向の品質検査を行う。さらに、両社が共同開発した水性コーティングがプラスチックラミネートを代替し、年間3000トン以上のプラスチック削減を実現している。
注目すべきは、カーン氏の今回の訪中が単独ではないことだ。アップル執行会長のティム・クック氏も同時期に中国を訪問している。アップル経営陣がiPhone Duoの予約開始を目前に中国サプライチェーンに集中的に姿を見せたことは、製造現場の集中的な点検であると同時に、新製品のプロモーションに向けた重要なシグナルと受け止められている。
新製品が直面する市場変数
iPhone Duoは折りたたみ市場へのアップル初の参入となるが、その市場見通しに懸念がないわけではない。
一方で、発売されたばかりのiPhone 18 Proシリーズは品質問題に直面している。韓国メディアの報道によると、一部ユーザーから使用中に突然シャットダウンして再起動する、いわゆる「panic full」現象が報告されている。アップルはFace ID認証に関連する強制再起動問題を修正するソフトウェアアップデートを配信済みだが、更新後も同様の症状が報告されている。韓国国会科学技術情報放送通信委員会所属の金章謙議員(音訳)がアップルコリアから入手した資料によると、9月18日から28日にかけて、韓国国内でこの問題による交換は約1500件、返金は約50件に上った。
他方、需要面の圧力も顕在化しつつある。日本経済新聞傘下の日経アジア(Nikkei Asia)は複数のサプライチェーン関係者の話として、アップルがiPhone 18 ProとPro Maxの10月の部品発注を当初計画から少なくとも15%削減し、一部サプライヤーでは削減幅が20%に達したと報じた。さらに、iPhone 18 Proシリーズの需要低迷がiPhone Duoでも再現される可能性があり、発売後に同程度の部品発注削減に直面する恐れがあると指摘している。
価格も無視できない要素だ。iPhone 18 Proシリーズの米国での開始価格は前世代より100ドル(約1.6万円)上昇し、1TBモデルでは300ドル(約4.7万円)もの値上げとなった。韓国市場ではiPhone Duoの開始価格が329万ウォン(約39万円、256GB)に設定され、通常のフラッグシップモデルを明確に上回るポジショニングとなっており、消費者の購買意欲を試すことになる。
とはいえ、アップルの製造面への投資は市場の雑音によって弱まってはいない。折りたたみヒンジのマイクロメートル級技術の難関突破から、SoCスパッタリングという半導体工程を完成品組み立てに導入する最先端の試み、パッケージングの徹底した品質管理と環境配慮型素材への代替まで、鄭州サプライチェーン体制はiPhone Duoの量産出荷に向けた最後の追い込みに入っている。カーン氏の今回の訪問は、製造能力の確認であると同時に、アップルがこの製品に寄せる自信を市場に伝える手段でもある。
