【StraightTalk】議会を迂回する大統領令と強引な法解釈、上智大学教授・前嶋和弘氏が読み解く米政治の行方
選挙集会に参加したトランプ大統領とその支持者(写真:ロイター/アフロ)
11月3日に米中間選挙が行われる。選挙が終わるまでは原油価格を上げないようにトランプ大統領もイラン攻撃を控えているが、選挙後に激しい行動に出る可能性もある。中間選挙の結果はトランプ政権の今後にどのような影響を与える可能性があるのか。現代アメリカ政治外交が専門の上智大学・総合グローバル学部・総合グローバル学科教授の前嶋和弘氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──米中間選挙まではイランに対して表立った攻撃を控えていますが、中間選挙が終わってしまえばどうなるかわかりません。選挙後、トランプ政権の言動が激しくなる恐れはありませんか?
前嶋和弘氏(以下、前嶋):中間選挙後、トランプ政権に大きな変化が出るとは思いません。これまで共和党が上下両院で多数派を占めていますが、実質的にはレームダック状態だからです。
現状、下院が共和党218議席、民主党214議席(欠員3議席)、上院は共和党53議席、民主党47議席です。この議席数では、政権与党は議会を動かして物事を決めていくことができません。
一つだけ例外を挙げると、2025年7月のトランプ減税の恒久化(One Big Beautiful Bill Act)だけは、上院の特別ルールを使って実現しました。
上院は100人で、フィリバスターを考えると、60票なければ安定的に物事を決めることができません。ただ、財政調整措置(Budget Reconciliation)という特例を使えば、基本的に年に1回、財政関係の法案を単純過半数の51票で通すことができます。これを使いました。
トランプ減税の恒久化は大きなことでしたが、それ以外の主要政策については、議会を通じた実現が難しかった。そのため、トランプ政権は最初から議会を無視し、大統領令で強引に物事を決めてきました。
たとえば、関税です。アメリカの憲法では、関税は議会が作ると書かれています。そこで、トランプ政権は国際緊急経済権限法(IEEPA)を拡大解釈して関税をかけました。ただ、やはり問題なので、米連邦最高裁は今年2月、IEEPAは大統領に関税を課す権限を与えていないと判断し、同法を根拠とする関税措置を認めませんでした。
移民に関しては、1798年に制定された敵性外国人法(Alien Enemies Act of 1798)を使って移民の強制送還を強引に進めました。つまり、かなり強引な法解釈でやりたいことを実現してきたわけです。そもそも議会を無視しているので、中間選挙で議席を減らしても状況は変わらないでしょう。
