RTX Sparkを搭載するASUS「ProArt P16(H7607)」
NVIDIAの新SoCである「RTX Spark」が正式発表され、実機レビューも解禁となった。RTX Spark搭載機の用途は、ゲーム、クリエイティブ、AIと多岐に渡るのと、時間の都合で詳細な性能レビューは後日の掲載となる。ただ、ゲーム周りについて興味深いデータを取れたので、速報値としてお伝えする。
RTX Sparkは、MediaTekとの協業による最大20基のGrace CPUコアと、1PFLOPS(NVFP4時)の性能を持つ最大6,144基のBlackwell GPUコア、最大128GBの共有メモリを搭載するプロセッサだ。CPUコアはArmベースであるため、OSもArm版Windowsが動作する。そこで懸念されるのが互換性である。
ただゲーム(プログラム)を動かすだけなら、Windowsにはx86向けコードをArm CPUで動かすためのPrismというエミュレーターが用意されている。しかし、一部のゲームではカーネルレベルで動作するアンチチートプログラムを採用しており、これはユーザーレベルのコード変換しかできないPrismでは対応できない。つまり、Arm向けにアンチチートプログラムを移植する必要がある。
これについては、以前からQualcommがSnapdragon向けに各社に働きかけを行なうなどして、Fortnite向けのEasy Anti-Cheatを始めとして、徐々にArm対応が進んでいる。
また、元々ゲーム業界で強い影響力を持つNVIDIAも各ゲームメーカーに働きかけ、主要なアンチチートプログラムがArm対応を果たしつつある。具体的には、PUBG、Call of Duty、Valorant、およびEAのアンチチートなどが対応を図っている最中だ。
【表】すでにArmにネイティブ対応するアンチチート技術パブリッシャー/提供者アンチチート技術採用タイトル例AnybrainAnybrainARC Raiders、THE FINALSBattlEyeBattlEyeRainbow Six Siege、DayZ、War ThunderDenuvo/IrdetoDenuvo Anti-CheatARC Raiders、THE FINALS、Dead by Daylight(trial)EmbarkElytraTHE FINALS(trial)Epic GamesEasy Anti-CheatFortnite、Rocket League、Rust、Elden RingGaijinVikingWar ThunderHoYoverseHoYoKProtectZenless Zone ZeroINCA InternetnProtect GameGuardHELLDIVERS 2Microsoft/MojangBuilt-in(Bedrock)Minecraft(Bedrock)NetEase GamesNetEase Game SecurityMarvel RivalsNexonNexon Game SecurityMapleStoryRoblox/ByfronHyperionRobloxThe Indie StoneBuilt-in(server)Project ZomboidValveVACCounter-Strike 2、DOTA 2、Left 4 Dead 2WellbiaXIGNCODE3Black Desert(Steam, Russia/Turkey)【表】後日Armにネイティブ対応するアンチチート技術パブリッシャー/提供者アンチチート技術採用タイトル例ActivisionRICOCHETCall of Duty、Call of Duty: Modern Warfare 4BattlEyeBattlEyePUBG: BATTLEGROUNDSElectronic ArtsEAJavelinKraftonZakynthosPUBG: BATTLEGROUNDSRiot GamesVanguardVALORANT、League of LegendsTencentACE(Anti-Cheat Expert)Delta Force、Wuthering Waves、Arena Breakout: Infinite、Arknights: EndfieldWellbiaUNCHEATER(historical)PUBG: BATTLEGROUNDS
対応中のゲームについては完了を待つしかないのだが、すでに動作するゲームの性能はどうなのか?NVIDIAから借用したASUSのノートPC「ProArt P16(H7607)」で計測してみた。借用機はメモリが最大の128GBではなく64GBだが、SoCは128GBと同じ上位モデルを採用している。ディスプレイは2,880×1,800ドット/120Hz表示対応だ。
まず、ゲームではないし、アンチチートも関係ないが、ゲーム性能計測の標準ツールの1つである3DMarkは以前からArmにもネイティブ対応している。加えて、Prismでも動作させることができるので、いくつかのベンチを両方で計測した。
結果として、PrismでもArmネイティブでも誤差レベルの違いしか見られない。これは、今回実行したベンチマークがほぼGPUにのみ依存しているためだ。GPUドライバはArmネイティブで動作しているため、CPU依存度が低いベンチなら差が出ないのであって、ベンチ(ゲーム)をArmネイティブ化させても性能が上がらないということではない。
CPU処理が多数走る実際のゲームではどうなのか?先の表の通り、Marvel RivalsのアンチチートはすでにArm対応となっているのだが、ゲーム本体もArm対応(厳密にはArm64EC対応)版がベータ検証中となっている。今回そのベータ版を入手できたので、ゲーム内ベンチをPrismとArm版とで走らせてみた。
結果として、解像度はネイティブの2,880×1,800ドット、低画質、DLSS=性能優先、フレーム生成なしの設定においてPrismでは平均53fpsだったのが、Arm64ECでは平均78fpsと1.47倍にまで性能が向上した。3DMarkとは打って変わってArm対応の効果が劇的に表われている。
Marvel Rivalsの低画質、DLSS=性能優先、フレーム生成なしの設定でx86モードでは53fps
これをArm64EC版にすると78fpsにまで跳ね上がった
これだけでも大きなブーストだが、このゲームで重い処理である、グローバルイルミネーションと反射設定を両方ともオフにしたところ、Prismでは52fpsと特に変化がなかったが、Arm64ECでは92fps、つまり1.77倍にまで向上したのだ。
グローバルイルミネーションと反射設定を両方ともオフにしても、x86版はほとんど性能が変わらず52fps
これがArm64EC版にすると92fpsにまで伸びた
ゲームによってArm対応化がどれくらいの効果を及ぼすのかは変わってくるが、Marvel Rivalsの結果を見ると、今後各種ゲームがアンチチートだけでなくゲーム本体もArm対応することで、さらに快適にプレイできるようになることが期待される。
とはいえ、Prism動作でもProArt P16の性能であれば、多数のタイトルを十分な性能で遊べる。実際にサイバーパンク2077はゲーム内の機能で、ストリートファイター6と鬼武者 Way of the Swordはベンチマーク版を使って性能を測ってみた。
サイバーパンク2077は、2,880×1,800ドット/中画質で解像度スケーリングをDLSSに変更した状態で81fps。鬼武者 Way of the Swordは2,880×1,800ドット/中画質設定で67.15fps。ストリートファイター6は、1,920×1,080ドット/中画質で対戦時が59.92fps、ワールドツアーが100.12fpsという結果だった。
サイバーパンク2077のベンチ結果
鬼武者 Way of the Swordのベンチ結果
ストリートファイター6のベンチ結果
今回試用したProArt P16を含めRTX Spark PCは、構成にもよるが基本的に高価なのでゲーム用途だけで使うのには向いていない。だが、NVIDIAが参入したことで、Windows on Armでのゲームを取り巻く環境がさらに改善されつつあるのは事実。RTX Spark PCは今後、たとえば最新のAAA級ゲームを快適に動かしつつ、ローカルAIを補助的に使ったゲーム配信などで力を発揮しそうだ。
