
2022/23シーズン、マンチェスター・ユナイテッドでともに過ごしたエリック・テン・ハフ監督とクリスティアーノ・ロナウド【写真:Getty Images】
「トップ選手はチームのために働かなければならない」。マンチェスター・ユナイテッド元監督のエリック・テン・ハフ氏が、クリスティアーノ・ロナウドについて語った言葉だ。練習への取り組みを巡る証言は、41歳となったスターの現在地にも重なる。昨季はサウジアラビアで28ゴールを挙げてリーグ優勝に貢献した一方、近年の主要国際大会では期待に応えきれていない。代表離脱騒動まで起きたいま、ロナウドに求められる「チームへの貢献」とは何か。
「トップ選手はチームのために働かなければならない」
かつての指揮官が、ロナウドの練習姿勢について厳しい証言を残した。
米スポーツ専門メディア『ジ・アスレチック』が10月20日に公開したインタビューで、テン・ハフ氏はユナイテッド時代のロナウドが練習から離脱することがあり、参加しても十分な運動強度に達していなかったと主張した。
2022年8月、ブレントフォードに0-4で大敗した後、選手たちに課したランニングでも、ロナウドは予定された3周のうち2周しか走らなかったという。
さらに同氏は、ロナウドがチームメートに対し、練習中に体力を温存するよう促していたことも明かした。
そのうえで、世界最高峰の選手とチームの関係について、こう語っている。
「どんなトップチームもトップ選手を受け入れなければならない。しかし、トップ選手もチームのために働かなければならない」
この言葉には、指揮官がロナウドに求めていたものが凝縮されている。
味方がゴール前までボールを運んでも、本人が適切な位置まで走れなければ得点には結びつかない。テン・ハフ氏によれば、ロナウドが攻守両面で十分に走れなかった原因は、プレスによる消耗ではなく、本人の準備不足にあった。
もちろん、これは元監督の視点から語られた証言だ。同メディアはロナウドの代理人に見解を求めたものの、掲載時点で回答は得られていない。
それでも、トップ選手が特別な待遇を受けることと、チームへの責任を果たさなくてよいことは別問題だろう。
41歳のロナウドは、結果で応えているのか
ロナウドの強烈な自尊心は、世界最高峰の選手へと上り詰めた原動力の一つだったはずだ。
誰よりもゴールを求め、自分こそが試合を決める存在だと信じ続ける。その絶対的な自信が、数々の栄光を生み出してきた。
そして、41歳となった現在も、その得点能力が完全に失われたわけではない。
昨季のサウジ・プロリーグでは28ゴールを挙げ、アル・ナスルの優勝に貢献した。年齢を考えれば、驚異的な数字である。
しかし、国際舞台に目を向けると、異なる現実が浮かび上がる。
EURO2024では23本のシュートを放ちながら無得点。データサイト『WhoScored』の集計では、ゴール期待値(xG)は3.52に達していた。
今夏の北中米ワールドカップでも3得点にとどまった。そのうち2得点はウズベキスタン戦、残る1得点はクロアチア戦で決めたPKによるものだ。
EURO2024と2026年W杯の2大会を通じて、強豪相手に流れの中から奪ったゴールは一つもない。
クラブでの得点力と、世界の強豪を相手にしたパフォーマンス。その差を考えたとき、かつてと同じような特別扱いが妥当なのかという疑問は避けられない。
偉大な選手だからこそ問われる責任
代表での立場も変わりつつある。
ロナウドは9月のUEFAネーションズリーグで、ノルウェー戦のウォーミングアップを命じられながら出場機会がなく、その後、代表合宿を離脱した。ジョルジ・ジェズス監督が約束を破ったと主張する一方、自身の行動については謝罪している。
10月19日には、ポルトガルサッカー連盟から30日間の出場停止処分と255ユーロの罰金が科されたことが明らかになった。
一方、ポルトガル代表は今季のネーションズリーグで、ロナウドが出場していない4試合にすべて勝利している。
もちろん、この結果だけでロナウドが不要だとは断定できない。対戦相手も試合展開も異なり、実際に彼がチームにもたらす影響を判断するには、より詳細な戦術的検証が必要だ。
ただ、ロナウドがいなくても勝利を重ねられるチームになっていることは確かだ。
英サッカー誌『フォーフォーツー』のヘンリー・ウィンター記者も10月5日の論評で、41歳のロナウドはかつての身体能力が衰えつつあり、心理面でも戦術面でも代表の足かせになっていると主張した。
長年、ポルトガル代表の象徴として君臨してきた存在に対して、ここまで厳しい意見が向けられるようになっている。
では、ロナウドは何を示すべきなのか。
私は、ゴールだけが答えではないと思う。
攻撃の局面で適切なポジションを取り、味方のために動き、守備でもチームに必要な役割を果たす。かつてのように圧倒的な得点力で違いを生み出せなくなったのなら、なおさらそうした貢献が求められる。
無論、2022年の練習姿勢に関する証言だけで、現在も同じ問題を抱えていると断定することはできない。
しかし、今回の代表離脱騒動まで含めれば、ロナウドがチームの中で自らの立場をどう受け止めるべきなのかという問題は、改めて考える必要がある。
偉大な選手が敬意を払われることに異論はない。だが、周囲の献身を求めるのであれば、本人もまたチームのために汗をかくべきだ。
テン・ハフ氏の言葉が突きつけているのは、まさにその原則だろう。
あれほど偉大な選手が、ピッチ上での貢献ではなく、自分の扱われ方を巡る騒動によって注目を集める。その姿は、見ていて悲しい。
ロナウドのキャリアを最後に評価するのは、本人がどれほど特別扱いされたかではない。チームのために何を残したかであるべきだ。
(文・内藤秀明)
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