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    スマホで手軽に、良い音で有線イヤフォン/ヘッドフォンを使いたい

    スマートフォンで音楽を聴くとき、有線でお気に入りのイヤフォンやヘッドフォンを使おうと思っても、イヤフォン端子が無い……。そんな時は、DAC付きポータブルアンプを使うのが手っ取り早い。ただ、大きなアンプをスマホと一緒に持ち歩くのは大変だ。今回紹介するNiPO「COCOM1」は、スマホの背面にマグネットで固定し、気軽に使える。

    薄型軽量、接続ケーブルもスマート。むしろ、ダランとぶら下がるスティック型DACよりも使い勝手は快適かもしれない。iPhone 17eを常用する筆者が使ってみたので、COCOM1の魅力をリポートする。

    NiPO「COCOM1」『より薄く』『より軽く』『より日常へ』

    NiPO COCOM1は、今年の6月から発売されており、価格はオープンで、実売は47,300円前後。

    NiPO(ライポ)は、スマホに組み合わせるDACアンプをメインに、DAPも開発している中国・深圳を拠点とするオーディオブランド。COCOM1は、以前レビューした上位機「A200PRO」(実売89,980円前後)の半分ほどの価格で、サイズも大幅に小さい。スマートフォンとの接続ケーブルは外付けではなく、本体と一体化した構造となっている。

    『より薄く』『より軽く』『より日常へ』を意識して開発され、装着していることを忘れそうな28gという重量と7mm以下の極薄ボディが目を引く。特殊なフレキシブルPCBを用いたOTGケーブルによって、接続端子部も極小化されている。

    特殊なフレキシブルPCBを用いたOTGケーブルが本体と一体化している

    「DACアンプを使う度に製品をカバンから探してスマートフォンに接続して……」というストレスは、従来のDACアンプに共通していた。スティック型にしろ、スマホの裏に重ねて使うタイプにしろ、常に付けっぱなしの運用できるサイズ感の製品は、なかなか無かったのが実態ではないだろうか。

    COCOM1なら、スマホに固定したままポケットに入れて持ち運べるほどのコンパクト。外寸は、最も長い辺が60mm、短い辺が41mmで、最薄部の厚さは6.3mmだ。

    スマホと重ねてもこの薄さ

    薄くて小さくて軽いのに、スペックは存外に頼もしい。フォーマットはPCM最大768kHz/32bit、DSDネイティブDSD 512まで対応する。ASIOの独自ドライバーは配布されていないため、DoP再生はDSD 256までとなり、DSD 512はUSB Audio Player PROやHiBy Music Playerで再生できるという。

    DSDネイティブDSD 512まで対応する(DoP再生はDSD256まで)

    出力は3.5mmと4.4mm端子を備え、0.22Ωの出力インピーダンスと最大500mW(32Ω負荷時)の駆動力を実現。3.5mmジャックからは、3.5mm 4極 to RCAの同軸デジタルケーブルを使ったデジタル出力も可能。電源はUSBバスパワーだ。

    上位機種にも採用される特許構造「CMMT」と、オペアンプにはデュアル「SGM8262」を採用。DACチップは「AK4493SEQ」を内蔵する。DACフィルターは全6種、EQは同じく6種類から選べる(OFFも可)。ゲインは、ローゲインとハイゲインの2種類。

    ユニークなUSB-C接続部分

    入力はUSB-C。実は、ここがユニークな仕様になっていて解説をしたいのだが、まずPCとスマートフォンのようなモバイル端末とでUSB入力が異なる。

    モバイル端末に接続するときは、端末と一体化されている独自開発のFPC OTGケーブルの出番だ。端末と一体化し続ける構造とし、抜き差しの頻度そのものを減らして物理的な摩耗を抑制。製品寿命を伸ばすことにも成功したそうだ。見た目が心配になる方もいるかもしれないが、特殊強化された内膜構造を採用し、コネクタの抜き差し1万回、ケーブルの折り曲げ2千回以上のテストをクリアしているという。

    出力は3.5mmと4.4mm端子スマホに接続したプラグの出っ張りも抑えられている

    一方、PCと接続するときは、本体側面のUSB-Cポートが使用できる。本体の駆動切替スイッチは、赤いカラーが見える側がPC。緑のカラーが見える側がモバイル端末となる。モバイル端末に接続しているときは、赤い側にスイッチを入れておくと、端末のバッテリーを無駄に使わずに済む。使うときだけ、緑側に切替えれば電源が入るという仕様だ。常にスマホと固定する前提の製品だけに、配慮が行き届いている。

    側面右端のスライドスイッチが駆動切り替え用。緑のカラーが見える側がモバイル端末接続用、赤がPC接続用だ

    PCとの接続時には、赤い側に切替えてUSBケーブルで接続すれば、PC側でオーディオデバイスとして認識する。Windowsの仕様で、サウンド設定の既定の形式は384kHz/32bitまでとなるが、Audirvāna Studioなどの排他モード対応アプリを使えば、768kHzまでの再生ができる。

    Windowsのサウンド設定では384kHz/32bitまでAudirvāna Studioなどの排他モード対応アプリを使えば、768kHzまでの再生ができる

    スマートフォンと接続中にUSB-Cポートから給電すると、最大PD60Wでパススルー充電することも可能だ。もちろん音楽再生も続行できる。

    スマートフォンとの接続時は、本体側に内蔵されたマグネットを利用してピタッとくっ付ける。N52グレードの高磁力ネオジウム磁石を使用しており、付属のメタルプレートを貼り付けたモバイル端末に貼り付けるように固定して使う。

    付属のメタルプレートをスマホに貼り付け、そのプレートにCOCOM1を磁力で固定する

    筆者は、MagSafe充電を想定してメタルリングをケースに貼り付けているため、COCOM1を磁力で固定はできたが、指で少し押すとずれてしまう。ただ、COCOM1自体が軽量なので、スマホを持っていて、COCOM1が落ちることはなかった。

    MagSafe充電用のメタルリング付きスマホケースでも固定はできた

    基本的な使い方は、メタルリング等が貼ってないケースにメタルプレートを貼り付けるか、ケース無しのスマートフォンにメタルプレートを貼り付けるかのどちらかだろう。

    実際に、ケースを外した状態のスマートフォンに本体を仮設置した写真はご覧の通り。実際にメタルプレートを貼り付ければ、指で押さえた写真のように隙間なくぴったりと固定できる。

    磁力は非常に強い。PCに接続した際には、PCを保持するアームスタンドの金属部にガッチリと固定した。これだけ強い磁力ならスマートフォンから勝手に外れてしまうとは考えにくい。

    PCに接続した際には、PCを保持するアームスタンドの金属部にガッチリと固定したクロックや電源にも配慮した音質重視の設計

    操作系は側面にまとまっている。前述した駆動切替スイッチ、ボリューム(+/-)、メニューボタンだ。メニューボタンとボリュームボタンの間にはマイクが配置されている。メニューへのアクセスや、選択・決定のフローはA200PROと同様で直ぐに慣れる簡便さ。ディスプレイは0.87インチのOLEDディスプレイを搭載。これが抜群に見やすい。写真では視認性の良さがまったく伝わらないのが歯がゆいくらいだ。

    OLEDディスプレイは視認性が良い

    一点気になったのは、画面の消灯が意図せず発生してしまうこと。メニューを操作する際、項目送りはメニューボタンを押すことで行なうのだが、そのテンポが速いと「二度押し」と判定され画面が消えてしまう。早く目的の設定項目にたどり着きたくてポンポンとメニューボタンを押していると画面が消えるという仕様は、できればファームウェアで改善してほしい。もう少し二度押し判定の間隔を縮めれば解消しそうではある。

    音質を高めるための工夫は多岐に渡る。まずクロックのこだわり。フェムト秒級超低位相デュアル水晶発振器Accusilicon製「AS318-Lite」と、独自のフルシンクロナス動作を組み合わせ、デジタル信号のタイミングを高精度に制御。クロックジッターを抑え込んだ。

    またバスパワー電源の影響にも配慮がされている。モバイル機器特有の電源ノイズや高周波干渉を徹底的にクリーン化。各回路へ個別に超低ノイズ電源ICを配し、安定化を目指したという。独立電源は9系統に及ぶ。

    この他にもパナソニック、およびVishay製の軍用規格コンデンサーを複数採用するなど、内部部品にも音質追求へのこだわりが見える。

    内部基板音を聴いてみる

    では、音を聴いていく。まずは、パソコンにUSBケーブルで繋げて、Audirvāna Studioを起動。同アプリで最も音質に優れるカーネルストリーミングを選択。デバイス名は「NiPO COCOM I」となっていた。1がIになっている理由は不明だ。

    モニターヘッドフォン「T3-03」で4.4mm接続を試す。Beagle Kickの768kHz/32bit音源「SUMMER VIBE」。アコースティックなジャズセッションをウルトラハイレートのレコーディングによってPCMの限界に迫る滑らかさを追求した一曲。エレキギターやアコースティックベースの肉厚な音像にまず惹かれた。トランペットのルームリバーブが部屋の空間を感じさせる。カホンのリズムは鋭くもたつかない。

    SuaraのDSD 11.2MHz音源「君のかわり」。しっとりした潤いを感じさせるボーカル。トランジェントの精密さと、DSDならではのデジタル臭さを排した質感が両立している。グランドピアノの有機的な質感も格別だ。

    ブラウザでABEMAを見てみる。アニメやバラエティ番組を視聴。帯域バランスに癖はなく、つとめてフラットだ。4.4mm/3.5mmとそれぞれケーブルを変えて試してみたが、3.5mmでは中低域の量感に若干物足りなさを感じた。4.4mmは量感が充分になるだけでなく、駆動力に余裕が出てたっぷり鳴らしている感じ。決して過剰ではなくバランスは崩さない点も好印象。

    また、左右のセパレーションは向上し、音場全体の混濁感が減少。分離も改善。バラエティ番組では、ルームリバーブがリアルになった。アニメでも空間表現力が向上した。

    外出先でもチェック。筆者は電車内で録画した番組をエアチェックする。SONYのVideo&TV SideViewに転送した番組をIE 400 PRO(3.5mm接続)で聴いた。

    外出先でも、スマートフォンとの固定に支障はない。ただし、筆者のスマートフォンのサイズと貼り付けたメタルリングの位置がたまたまCOCOM1の固定にとってセーフだったというのもあるので、基本的にはメタルプレートを貼り付けての運用を推奨する。

    持ち歩いた感触としては、大きさの点ではノーストレス。スマートフォンの裏に物体がある点については、最初は気になるかもしれないが、徐々に慣れるだろう。

    気になったといえば、重心のバランスが少し崩れたことだ。iPhone 17eが軽いスマートフォンだったのが一因であるが、本体がとても小さいために、接続した側だけが少し重くなり、手で持ったときに重心が変わったことが体感で分かるのだ。これも慣れだと思うが、参考までに触れておきたい。

    さて、Video&TV SideViewでの動画視聴である。普段は軽量小型のスティック型DACアンプで音を聴いている筆者。それと比べると、COCOM1の鮮明な音像と高いSN比にため息が出そうになった。

    上位機であるA200PROにサウンド傾向が近く、音像のディテール再現性や中低域の余裕でやや劣る面はあるものの、フラットで癖がなく、精細な描写力はサイズを疑ってしまうクオリティだ。解像感が期待を超えてきた反面、逆に圧縮音源特有のシャカシャカ音に電車内でも気付いてしまうほどだった。

    そして駆動力の余裕とダイナミクスへのリニアリティの高さは特筆したい。役者の演技がよりダイナミックで繊細に再現されていて、作品の世界にグッと没入できる。ダイナミクス表現に優れているため、音量を上げて、小さく細かい音も聴き取ってあげたくなる。SEなどの音像はより立体的に感じられ説得力も高まった。

    バスパワー機器でここまでの音が楽しめる。しかもずっとスマートフォンに付けっぱなしでもストレスが少ない機器というのは、非常に魅力的だと唸った。

    ぶっちゃけてしまうと、電車内の騒音を考えれば、そこまでエアチェックに音質は求めてこなかった。しかし、こんなにも手軽でストレスの少ない運用ができるなら、もうワンランク上の音も欲しくなってしまう。

    自宅に戻って、スマートフォンと組み合わせてのローカル音源、ストリーミング音源のチェックを行なう。

    なお、ここまでのPCと組み合わせた視聴、またスマートフォンと接続した試聴において、再生時の冒頭がわずかに欠ける事象があった。アプリやブラウザの種類を問わず発生し、その尺は0.5秒もない短いものから、アプリによっては1秒ちょっと欠けることも。同じサンプリングレートの楽曲を送れば頭欠けは発生しない。

    サンプリングレート切り替え時のノイズ防止の仕様と思われるが、ファームウェアアップデートでの改善を期待したい。

    ONKYO HF PlayerとQobuzで、本体に転送したローカル音源とダウンロード済み音源を試聴した。総じて、小型軽量ボディかつバスパワー電源にもかかわらず、高いパフォーマンスを示してくれた。音像の立体感や粒立ちに優れ、帯域バランスは実直なほどにナチュラル、4.4mmでは中低域の駆動力にいっそうの余裕を感じさせ、ダイナミクスの繊細さや活発さも描いてくれる。

    そして、音楽を聴いていて楽しくなれるような、質感表現もちょうどよくブレンドされている。ボーカルやアコースティック楽器のオーガニックな耳触りは、一見正確無比と思いがちな本機のサウンド傾向に潤いや安らぎをプラスしてくれた。

    上を見上げればキリが無いが、SN比については音数の少ない楽曲でもうひと越えほしいと感じたこともあった。また、音像のディテール表現力は、さらにシャープさを極めてもらうと、より楽器の細かやな表情が見えてきそうではあった。

    「FINAL FANTASY VII REBIRTH Orchestra World Tour LIVE」より「Concert: クイーンズ・ブラッド」。3.5mmと4.4mmを聴き比べてみる。

    3.5mmでも物足りないということはないのだが、4.4mmではいっそう音の厚みが充実し、いい意味での肉付き感がレベルアップ。中低域の駆動力に余裕が出ているためか、近い音量感でも中低域の瞬発力や馬力がアップしていて、演奏を聴いていてもワクワク感が違う。

    ドラムやパーカッションがホールに響く反響は、空間の広さを感じられるくらいにリアリティが向上した。本機の優れたクロックシステムのお陰もあって、なんだか音場が広いなぁではなく、録音されたシチュエーションまで自然と想像できるレベルに達している。

    TVアニメ『葬送のフリーレン』Season2 Original Soundtrackより「Ready Your Weapon」。DACフィルターを切替えてみる。音質の変化はわずかであるが、個人的には迷ったらAKMの新しい独自フィルター「Low-dispersion short Delay Filter(LDD)」がお勧め。

    LDDは、インパルス応答、位相特性、周波数特性をバランスよく整えたフィルターだ。立ち上がり・立ち下がりが明瞭で、分離もよくなり、空間再現性も上がる。

    左に定位する弦の音が適度にきらめきを帯びている。低音を轟かせるパーカッションやベースが迫力を演出。バスパワーでも腰抜けなサウンドでは決してない。ケルト風の楽曲を彩る民族楽器の独特な質感は、ちょうどいい温度感や暖かみを滲ませてくれるのも好みだった。

    Qobuzから、ナナヲアカリの「ぴ」を聴く。コーラスは解像感が高く、左右の耳をくすぐってくる。ポップなピコピコシンセとゴリゴリのベースが喧嘩せず同居。ボーカルの分離は非常に明瞭で、スーッと耳に入ってくる。

    再始動したSANOVAのデジタルシングルから「Jazz Standard ~Real Book Page 564~」。疾走感のあるジャズピアノは、音の粒建ちがいい感じ。跳ねるような勢いとキレの良さも兼ね備える。

    バンドネオン奏者・小松亮太のアルバム、ア・ラ・パリージャより「ボルベール(帰郷)」は、ギターとバンドネオンのデュオ。ギターの粒立ちが精細で聴き惚れる。バンドネオンは、小さく聴こえるボタンの音や蛇腹の伸縮音が埋もれずに生楽器の存在感を示しているし、いわゆる空気の音が目の前の楽器として感じられそうなリアルさだ。

    録音やミックスもいいはずだが、4.4mmのチャンネルセパレーションの良さも音像の立体感や空気感に寄与しているはず。駆動力の違いと合わせて、やはりバランス接続にはアドバンテージがある。可能なら4.4mmで接続して楽しんでもらいたい。

    付けっぱなしで快適、それでいて別次元のサウンド

    軽量コンパクトボディとフレキシブルなOTGケーブルのお陰で、常に付けっぱなしでも快適に使える新感覚のユーザビリティを実現したCOCOM1。

    付けっぱなしがストレスにならないよう、パススルー充電や電源OFFなど気が利く機能もしっかり搭載。本稿では試さなかったが、実はUAC1.0/2.0の切替えもできるので、ゲーム機の外部DACとして活用することもできる。

    音質面では、小さくてUSBバスパワーだからと侮るなかれ。安価なスティックDACアンプとは別次元のモバイルオーディオライフを楽しめる。それでいて常に付けっぱなしでも快適となれば、本格的に検討するのもありかもしれない。

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