2026年10月
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       海鮮居酒屋チェーン「磯丸水産」が苦境に陥っている。親会社のクリエイト・レストランツ・ホールディングスが発表した2026年3~8月期の決算では、営業利益が前年同期比16.6%減となり、磯丸水産の不振が減益要因の一つに挙げられた。

       かつて24時間営業と手ごろな価格で一大ブームを巻き起こした人気チェーンに、何が起きているのか。

    好立地と24時間営業がセールスポイントの磯丸水産

    好立地と24時間営業がセールスポイントの磯丸水産

    新業態「磯丸酒場」(クリエイト・レストランツ・ホールディングスの発表資料より)

    新業態「磯丸酒場」(クリエイト・レストランツ・ホールディングスの発表資料より)

    好立地と24時間営業がセールスポイントの磯丸水産

    新業態「磯丸酒場」(クリエイト・レストランツ・ホールディングスの発表資料より)

    2017年に155店舗→26年2月末時点で125店舗

       クリエイト・レストランツ・ホールディングスが26年10月14日に発表した中間決算では、売上収益が前年同期比3.5%増の860億9100万円だった一方、営業利益は16.6%減の41億2100万円、純利益は15.6%減の26億9700万円となった。

       磯丸水産などの路面店が苦戦したことが大きな要因としてあり、さらにグループ会社の合併に伴う費用などが利益を圧迫した。磯丸水産の不振は悪天候の影響もあったが、実はそれ以前から経営状況が厳しくなっていた。

       磯丸水産は09年、東京・吉祥寺に1号店を開業。店内の生けすで管理している魚介類や、それらを卓上コンロで焼く「浜焼き」など、海辺の磯料理屋を思わせるスタイルで人気を集めた。

       大きな特徴となったのが、駅前や繁華街を中心とした好立地と24時間営業だ。昼間から海鮮料理と酒を楽しみたいシニア層から、深夜に飲みたい若者層まで幅広いニーズを取り込み、2017年2月末には155店舗に拡大した。

       しかし、そのころをピークとして徐々に勢いに陰りが見え始め、2019年2月期には既存店売上高が前年割れとなり、24店舗を別業態に転換したことを公表。ブームの一巡や居酒屋市場の競争激化で変調が生じていたところに、コロナ禍が追い打ちをかけた。

       コロナ禍では深夜の飲食需要が激減し、24時間営業という強みが一転して重荷となった。コロナ収束後も深夜需要の回復は鈍く、現在は24時間営業ではない店舗も少なくない。

       駅前の好立地と長時間営業で集客する従来のビジネスモデルは、家賃や人件費、光熱費の上昇もあって採算を確保しにくくなった。店舗数も減り、26年2月末時点で125店舗と公表されている。

       さらに、物価高によるコスト上昇を受け、値上げが繰り返された。

       グランドメニュー掲載の価格を比べると、看板商品の「浜焼きセット」は22年6月時点の税込み2188円から、現在は2749円となり、約26%値上がりした。定番メニューの「蟹味噌甲羅焼」は593円から659円に上昇。生ビールも659円となっている。

       こうした値上げによって「磯丸水産は高くなった」という印象が広まり、手ごろな価格で浜焼きが楽しめるという魅力が薄れ、客離れの一因となったとみられる。

    一部店舗では訪日客が全体の7割を超えるケースも

       さらに、磯丸水産にとって大きな逆風となっているのが、中国人観光客の激減だ。

       磯丸水産は、自分で魚介を焼く日本らしい独特のスタイルが外国人観光客にも人気となり、インバウンド需要を積極的に取り込んできた。大阪・なんばエリアの一部店舗では、訪日客が全体の7割を超えるケースもあったという。

       外国人客はカニやウナギ、貝類など高価格帯メニューを好む傾向があり、客単価が日本人より高い。訪日客向けの特別セットを投入するなど、同社は大きな収益源として力を入れていた。その中でも、とりわけ重要な「お得意様」となっていたのが中国人観光客だった。

       ところが、25年11月、高市早苗首相の台湾有事を巡る発言に反発した中国政府が、国民に日本への渡航自粛を呼びかけたことで状況が一変。日本政府観光局によると、26年1~9月の中国人訪日客数は前年同期比55.5%減と半分以下に激減し、9月単月でも約43万人で、前年同月から44.5%も減少している。

       外国人観光客を大きな収益源としてきた繁華街の店舗では、中国人客の激減が大打撃になっているとみられる。

    ドリンク全品399円の新業態で巻き返しなるか

       こうした状況を打開すべく、同社が力を入れているのが低価格路線への転換だ。

       同社は26年3月、横浜市に新業態「磯丸酒場」の1号店をオープン。生ビールを含むドリンク全品を税込み399円均一に設定した。

       メニューを絞り、串揚げやつまみ寿司など、少人数でも気軽に楽しめる料理を充実させた。いか串は税込み175円、ガリさば巻きは同362円。従来の浜焼き中心の海鮮居酒屋から、手ごろな価格で飲食できる大衆酒場へとコンセプトを転換した。

       一方、磯丸水産の地方出店は好調で、親会社は都心の不振店を別業態に転換するとともに、地方への出店を強化している。従来のスタイルが地方では支持されていることは、明るい材料だといえる。

       かつてのように好立地と24時間営業、そして浜焼きのレジャー感だけで客を呼び込むことは難しくなった。中国人観光客の激減という逆風も続いている。磯丸水産で築いた知名度や店舗網を生かし、低価格路線を拡大して客を取り戻せるか。都市部での新業態への転換と地方エリアへの出店、その成否が再起の大きな鍵を握りそうだ。

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