2026年11月
    月 火 水 木 金 土 日
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    30  

    前回、米国のデラウエア州で開催されたクアッド首脳会議(2024年9月21日、写真:AP/アフロ)

    クアッド(Quad)首脳会議、11月にフィリピンで開催

     日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による協力枠組み「クアッド(Quad)」の首脳会議が11月にフィリピンの首都マニラで開催される予定だ。

     米国のマルコ・ルビオ国務長官が10月20日、訪問先のインドで現地メディアのインタビューに応じて表明した。10月21日付の香港SCMPなどが伝えた。

     11月16日から18日にかけて開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会合に合わせて行われる予定で、実現すれば、2024年9月以来、約2年ぶり、第2次トランプ政権発足後では初のクアッド首脳会議となる。

     クアッド首脳会議は、2025年にはインドでの開催が予定されていたが、実現しなかった。

     当時は、インドによるロシア産原油の輸入などを巡って米印関係が悪化しており、クアッド首脳会議の開催にも不透明感が広がっていた。また、第2次トランプ政権の発足後は、トランプ大統領が多国間協力に選択的な姿勢をとっていることから、クアッドの今後を懸念する見方も出ていた。

     主な議題としては、南シナ海を含むインド太平洋地域の情勢、重要鉱物のサプライチェーンの強化、エネルギー安全保障を巡る協力などが取り沙汰されている。

     中でも、南シナ海の領有権問題を巡り、10年以上にわたってフィリピンと中国の間で緊張が続き、近年さらに高まっていることから、この地域情勢が主要議題の一つとなるのは間違いないだろう。

    中国とフィリピンの緊張・対立

     南シナ海では、数十年にわたり、中国と、同海の島嶼や海域に対して領有権・管轄権を主張する沿岸国との間で緊張が高まってきた。

     例えば、1974年には、中国軍が西沙諸島(パラセル諸島)を巡って南ベトナム軍と交戦し、同諸島の全域を支配下に置いた。また、1980年代には、南沙諸島を巡って中国海軍とベトナム海軍が武力衝突を起こした。

     中国は1980年代から南沙諸島への進出を進め、2010年代には、占拠した7カ所の岩礁などを埋め立てて人工島を造成し、軍事拠点化を進めた。

     このうち6カ所は1988年に中国が進出・占拠し、残るミスチーフ礁は1995年に占拠した。

     米軍が1991年にフィリピンのクラーク空軍基地から、1992年にスービック海軍基地から撤退し、「力の空白」が生じたことも、当時の地域情勢を考える上で重要な背景となっている。

     フィリピンと中国の間では、10年以上にわたって緊張が続いており、近年、その度合いは一段と高まっている。

     2012年、中国とフィリピンはスカボロー礁を巡って対立し、中国が同礁を事実上支配下に置いた。

     これに対し、フィリピンは2013年、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく仲裁手続きを開始した。2016年7月、仲裁裁判所は以下のような裁定を下し、中国の主張の多くを退けた。

    ・南シナ海の海洋資源に対する中国の「歴史的権利」の主張は、UNCLOSが定める海洋権益の範囲を超える部分について、同条約と両立しない。

    ・中国が南シナ海やその海洋資源を歴史的に排他的に支配してきたことを示す証拠はなく、「九段線」内の海域における「歴史的権利」の主張には、UNCLOSの下で法的根拠がない。

    ・南沙諸島の地形のうち、人工島造成の対象となった地形を含め、いずれも独自の排他的経済水域(EEZ)を生み出す資格を有しない。スービー礁とミスチーフ礁は低潮高地であり、それ自体では領海を有しない。また、スカボロー礁は「岩」に該当し、領海は有するものの、EEZや大陸棚を生み出す資格はない。

     つまり、仲裁裁判所は、中国の「九段線」に基づく歴史的権利の主張には法的根拠がないこと、さらに南沙諸島のいずれの地形も独自のEEZを生み出す資格を有しないことなどを裁定した。ただし、この裁定は島礁の領有権そのものを判断したものではない。

     このように、中国は仲裁判断で主要な主張を退けられたが、同裁定を不法・無効であり、価値のない「紙切れ」にすぎないとして、その受け入れを全面的に拒否している。

     他方、南沙諸島東部に位置するセカンド・トーマス礁は、フィリピンのEEZ内にある。同礁には、座礁したフィリピン海軍艦艇BRPシエラ・マドレを拠点として、海兵隊の分遣隊が駐留している。

     これは、フィリピンが同礁における拠点を維持し、周辺海域での主権的権利を守る上で重要な存在となっている。

     しかし、中国海警局と中国海上民兵は、中国海軍の支援を受けながら、スカボロー礁やセカンド・トーマス礁など南シナ海各地で、フィリピン沿岸警備隊の船舶や補給船、漁船などの活動を繰り返し妨害し、航行を阻止している。

     中国は南シナ海の広範囲に海洋権益を主張し、その実効性を高める行動を続けている。

     南シナ海は、世界の海上貿易の約5分の1から3分の1が通過すると推定される、世界有数の海上交通の要衝である。

     米エネルギー情報局(EIA)によれば、南シナ海には2023年時点で約36億バレルの石油などの液体燃料と約40兆立方フィートの天然ガスの確認・推定埋蔵量があるとされているほか、豊富な魚類資源やサンゴ礁、その他の海底資源も存在するとみられている。

     米国のみならず、日本、フィリピン、韓国、台湾、オーストラリアなどの同盟国・パートナー国も、貿易やエネルギー輸送の面でこの海域に大きく依存している。

     そのため、中国とフィリピンの緊張の高まりは、当事国であるフィリピンだけでなく、同盟国・パートナー国であるクアッド4カ国にも大きな影響を及ぼすことになる。

    Share.

    Comments are closed.