フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・ホンダ)が、「今のグリッドの下位3分の1にいるドライバーたち」のレベルを「非常に低い」と評したことに、アレックス・アルボン(ウィリアムズ)らが異論を唱えた。
2026年F1第19戦メキシコGPの開幕を翌日に控えた10月29日(木)、波紋を呼んだ発言から4日を経て、アロンソが批判の姿勢を貫く一方、ライバルたちは現在のドライバーの水準を高く評価し、後方集団ならではの難しさを指摘した。
議論の発端は、前戦アメリカGPの1周目、ターン11でのアルボンとの接触だった。マシンに損傷を負ったアロンソは、レース後にグリッド後方のドライバー達について「レベルがかなり低い」と痛烈な言葉で批判した。
アロンソ「理解しがたい」アルボン反論で平行線
スペインのスポーツ紙『AS』によると、アロンソは「下位3分の1」という発言について、特定の人数を指したものではないと説明しつつ、一部のドライバーの走りはF1に求められる水準に達していないとの見方を維持した。
「今でも考えは変わらない。あれは避けられたはずのミスだった。今でも理解しがたいのは、あの瞬間、アレックスがどんなチャンスを見いだしていたのかということだ」とアロンソは語った。
「でも、オースティンだけの話じゃない。残念ながら今季はずっとあのあたりで走っているから、クルマの中からいろいろなものが見えてしまう」
「具体的に何人いるかを言ったわけじゃない。でも、誰のことを話しているのか、そして誰があの発言を自分に向けられたものだと受け止めたのかは、みんな分かっていると思う」
「あのドライバーたちは将来に向けてどんな野心を持っているのだろうか? 長くF1に残りたいのか、トップチームへ移籍するチャンスを得たいのか。それとも、クラッシュしているだけで満足なのか」
2度のF1王者は、競争力の低いマシンはグリップが乏しく、ミスが増えやすいこと自体は認めた。それでも、フロントウイングが飛散するようなレース開始直後の事故は不要だと主張。ポイント圏内から程遠い後方での争いで不必要にマシンを壊し、チームにコストキャップ面での負担をかけることを良しとするのであれば、「それはそれで構わない」と述べた。
一方のアルボンはレース直後と同様に、アロンソとの攻防を再び好意的に振り返り、接触についても、コース上での互いの位置を踏まえれば五分五分だったと説明した。
「改めて言うけど、フェルナンドのことは心から尊敬している。子どもの頃からずっと憧れていたドライバーだからね。だから、ああいうコメントを聞くのは、いろいろな意味で気分の良いものじゃない」とアルボンは語った。
「でも同時に、彼の意見には同意しない。それだけのことだよ。グリッドの上位から下位まで、ドライバーのレベルは高いと思っている」
さらに、10〜15年前の後方集団とは状況が異なり、「今はもう、資金を持ち込んでシートを得るようなペイドライバーはいない」とも指摘した。
サインツ、過去12年で質が最も高いのは「今年」
木曜の記者会見ではアロンソの発言を巡る質問が飛び交った。アルボンのチームメイトで、アロンソと同じスペイン出身のカルロス・サインツは、アロンソの批判を「厳しすぎる」と評した。
グリッド後方では前走車の乱気流の影響が大きく、減速に伴って集団が詰まる状況が頻発するほか、3台、4台が横並びでコーナーに進入する場面も多いため、先頭集団より接触の危険が高いと説明した。
「僕はF1に12年間いるけど、ドライバーの才能のレベルが最も高い年をひとつ挙げるなら、今年だと思う。F1に求められる水準に達していないドライバーは、ひとりも思い浮かばない」とサインツは語った。
アロンソの立場を代弁するつもりはないとしたうえで、自身も後方での戦いに強いもどかしさを感じていると説明。2024年にメキシコGPを制した自分が、今回はおそらく17番手からのスタートになると予想し、タイムシート上の順位とドライバーの能力を単純比較することに注意を促した。
「僕は2年前にここメキシコで優勝したのと同じドライバーだ。むしろ、2024年の自分より今のほうが優れていると思う」
オリバー・ベアマン(ハース)も、アロンソの批判は「少し厳しすぎる」とし、現在のグリッドの水準は非常に高いと評価。今季は上位4チームがトップ8をほぼ占めるため、後続のドライバーは限られた好機を逃すまいと仕掛ける必要があると指摘し、前戦でピエール・ガスリー(アルピーヌ)と接触した自身の例を挙げた。
「今年のようにタイム差が小さい状況では、ときにはチャンスを積極的に掴みにいかなきゃならない。そして、それが悲惨な結果につながることもある。先週の僕とピエールのようにね」
「ドライバーの質の問題だとは思わない。自分にできる限りのことをして、何とかチャンスを生み出そうとすることにより生じる問題なんだと思う」
ガスリー「昔の方が無謀」ルクレールらも同調
シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、アルボンについて「実は僕が憧れていたドライバーのひとりだったんだ。彼はいつも僕より1つか2つ上のカテゴリーで走っていたけど、並外れた存在だったよ」と評価した。
そのうえで、「グリッド後方であれ中団であれ先頭であっても、今のグリッドの水準がものすごく高いことは間違いないと思う。唯一違うのは、僕らがドライブしているクルマだけだ。でも、ドライバーの水準は非常に高い」と述べた。
ガスリーは、「僕は上位半分に入っているから、批判の対象から外れていてうれしいよ」と冗談を飛ばしつつ、自身はアロンソのレースを見ておらず、具体的に何を指しているかは分からないと断ったうえで、現在のグリッドの水準は自身のF1キャリアの中で「おそらく最高水準のひとつ」との見方を示した。自身がF1に参戦し始めた頃のほうが、今より「無謀なドライビング」を目にしたと振り返った。
さらに、「フェルナンドのああいう発言は、いかにも彼らしいよね。ドライバーとしての彼をものすごく尊敬しているけど、同時に彼は自分の意見をはっきり口にする人でもある」とも語った。
セルジオ・ペレス(キャデラック)も、後方と先頭でドライバーの水準に差はないと主張。「もし僕らがトップを走っているドライバーたちとクルマを交換したら、かなり似たような結果になるはずだ。その逆も同じだよ。これがF1の唯一の問題なんだ。ドライバーの実力は、クルマとチームの実力によって評価されてしまう」と述べた。
