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記事のポイント
国際船舶の脱炭素化を巡る交渉で、日本が評判を落としている
IMOの国際合意案は、昨年のトランプ政権による強硬な反対で先送りされた
その後、日本が出した提案は「トランプに同調」と各国から冷ややかな視線も
国際船舶による温室効果ガス(GHG)排出量は、日本一国分とほぼ同程度だ。船舶の脱炭素化を巡っては、国際海事機関(IMO)が進める国際交渉の中で2025年、画期的な合意案が採択される直前で、トランプ政権の強硬な反対姿勢によって先送りとなった。その後、日本政府は修正案を提出したが、多くの支持を得られず、「トランプ政権の後ろ向きの行動に同調」と評判を落としている。(ニュースルーム「PLANET-ing」)
横浜港に停泊中の大型クルーズ船。
国際航路の船からの温室効果ガスの排出はパリ協定の対象になっていない
(写真:2024年11月4日撮影・井田徹治)
■船舶の脱炭素化、トランプが「ちゃぶ台返し」
国際船舶からの温室効果ガスの排出を、大型船舶からの排出量に応じて課金をして排出量を減らすことなどを盛り込んだ国際海事機関(IMO)の新制度に関する国際交渉で、日本政府が対策の中心となる義務的な課金制度や基金の設立などを合意案から削除するよう求める提案を行ったことが分かった。
船舶からの排出量に応じた支払いを義務づけ、それを発展途上国支援などに回す制度の2027年からの導入には、2025年4月の海洋環境保護委員会で日本を含めたIMO加盟国が合意。「外航海運は国際カーボンプライシングが導入される最初の業界となる」として「歴史的合意」と賞賛された。課金はIMOの基金に入れられ、各国の取り組みを支援する資金として還付される仕組みだ。
合意は2025年10月の会議で正式に採択される見通しだったが、米国のトランプ政権が一転して採択に強硬に反対する姿勢を表明、サウジアラビアなどの産油国も反対に回ったため、正式合意が先送りになっている。
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■日本の「骨抜き」案にも各国から冷ややかな視線
国内外の複数の交渉関係者によると、日本政府の提案はこの事態を受けて合意の採択を再検討する会合に向けて行ったもの。合意案から大型船舶への義務的な課金制度を削除するとともに、一度は合意した排出削減目標の見直しなども提案している。基金も設立せずに各国が自主的な拠出によって、IMOが認めた支援プロジェクトを実施する。
課金制度を支持する交渉筋からは「トランプ政権の後ろ向きの行動に同調するものだ」との批判が出ている。
日本政府は2026年4月27日から5月1日まで英国で開かれたIMOの海洋環境保全委員会に修正案を提案したが、各国の多くの支持は得られなかったという。
この委員会でも結論は得られず、合意は2026年11月末から12月にかけて開く委員会に持ち越された。日本はこの委員会に向け、再度、同趣旨の提案を行った。
国際航路からの温室効果ガス排出に「炭素の価格付け(カーボンプライシング)を導入することを決めた2025年の国際海事機関(IMO)の委員会
(写真:IMOのホームページから)
■業界関係者からも懸念の声
2025年4月の原則合意に際しては日本船主協会が「制度は我が国海事産業界が一丸となって取り組むゼロエミッション燃料船の開発・普及を力強く後押しするものだ」と評価。「合意成立を歓迎する」との声明を出すなど関係業界の支持も得られていた。業界関係者からは、国際的カーボンプライシングの導入が遅れることへの懸念の声も出ている。
日本政府関係者は「交渉の詳しい内容について具体的なコメントはできないが、委員会での情勢の変化に対応し、強く反対する国にも配慮した修正や代替案の検討は必要だと判断した 」とコメントした。
この問題に詳しい英国ロンドン大学のトリスタン・スミス教授は「この行動によってIMOにおける日本の信頼性は危機に瀕している。これは日本の産業界の競争力や外交上の評判にかかわる問題で、日本は以前の立場に立ち返るべきだ」と指摘している。
国際船舶からの温室効果ガスの排出量は増加傾向にある。2025年には、ほぼ日本1国分と同じ約10億トン、世界全体の排出量の2%強を占めるまでになったという。
国際航空からの排出量削減については、国際民間航空機関(ICAO)の主導で、航空各社の排出量が一定の基準を超えた場合、排出枠の購入などによってオフセットをするなどの対策が進んでいるが、海運については国際的な削減ルールは決まっていない。
※この記事は、地球環境問題の解決を目指す独立したジャーナリズムと同じ目的を持つ多様な主体が協力して作り上げるプラットフォーム・ニュースルーム「PLANET-ing(プラネッティング)」が配信した記事「船舶の温室ガスへの課金、削除を提案 日本政府、米国の反対に配慮 IMO委員会の交渉で」(2026年10月16日発行)を、オルタナ編集部にて一部編集したものです。同ニュースルームからは、本文中に出てくるロンドン大学トリスタン・スミス教授からの寄稿もお読みいただけます。
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