本稿は、トラヴィス・ノーサップが執筆したIGNの提言記事だ。は『Phantom Blade Zero』を含むアクションRPGをこよなく愛している。彼の書いた『Phantom Blade Zero』のレビューはこちらから読める。
私はソウルライクやシビアなアクションゲームを、呆れるほどプレイしている。意図的に高難度に作られたこうした難関に挑むのはおおむね楽しんでいるものの、ここ数年、次第に苛立ちが募っているものがある。それは個人的に「ヘタクソ税」と呼ぶようになったものだ。
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ヘタクソ税とは具体的に何なのか。実にさまざまな形がある。倒そうとしているボスの根城まで、1分近く歩いて戻らされること。ボスの第1形態を倒すたびに、さらにおぞましい怪物へと変貌する、ひどく鬱陶しいスキップ不可のカットシーンを見せられること。あるいは挑戦に失敗するたび、苛立ってこめかみを揉むことになる、昔ながらの30秒ロード画面。つまりヘタクソ税とは、腕のないヘタクソらしくやられてしまったあとに、ゲーム側から(意図的であれ、そうでないにせよ)課されるわずらわしい手順のことだ。ボス戦の攻略法を覚え、腕を上げるためにすでに何時間も費やしているのに、そのうえ不必要に時間まで奪っていく要素を指す。
だが『Phantom Blade Zero』は、現代のボス戦の多くがプレイヤーに無理やり飲ませてくる苦い薬も、ほんの少し砂糖を加えれば飲みやすくできることを示している。『お砂糖ひとさじで』を歌ったメリー・ポピンズも、さぞ誇らしく思うことだろう。
ただ、誤解しないでほしい。私はフロム・ソフトウェアのゲームでボコボコにされるのが大好きだ。恐ろしい新たな敵の攻撃パターンを覚え、何度も死にながら少しずつ自信をつけ、最後には敵を完膚なきまでに叩きのめす。このループは驚くほど魅力的だ。だが、腕を磨いている最中にうんざりするような形で時間を無駄にさせられるのは、まったく歓迎できない。これまで以上に多くのものが私たちの気を引こうと競い合っている時代に、こうした手間をプレイヤーに強いるのは、そもそも妙な選択だ。まして、繰り返し失敗することを前提に設計したゲームに、そんな要素を盛り込むのはとりわけ不可解である。
ここで、ヘタクソ税のなかでも特に腹立たしいもののひとつ、「ボス戦にチェックポイントがまったくないこと」を取り上げたい。今では、ボス戦のどの形態のどの時点で死んでも最初からやり直しになるのが、一般的どころか、ほぼ当然のこととして受け入れられている。つまりプレイヤーは誰もが、まだ手強さの残る後半の形態よりも、さほど盛り上がらない序盤の形態を何度もやり直すために、はるかに多くの時間を費やす羽目になる。苦労の末にようやくたどり着いたボスとの決戦に胸を躍らせていたのに、20分後には、何度もやられている第2形態を30秒ほど楽しむためだけに、第1形態を10回目も作業のように繰り返していて苛立つ――そんなことが何度あったか数えきれない。
退屈なボス戦のチェックポイント設計に貴重な時間を何時間も奪われるのは、仕方のない代償として受け入れられてきた
たとえば、『Lies of P』を初めてプレイしたときの、非常にカッコよくて手ごわいボス戦のことを今でも鮮明に覚えている。そいつの第1形態はひどくテンポが遅く、本来なら見せ場になるはずの戦いが、ひどく苛立たしいものになってしまっていた。そして第1形態を何十回と繰り返すうちに、何度も続けてノーダメージで突破できるほどになった。そこを抜けるのにかかる3分間は、まるでオートパイロットに切り替わったかのようだった。ようやくこのボスの最終形態を突破した頃には、第1形態の繰り返しに時間の半分以上を費やしたことにすっかり腹を立てていて、苦労して勝ち取った勝利さえ楽しめなかった。
このしきたりは驚くほど広く定着しており、こうしたうんざりする足止めのせいでどれほど時間を無駄にしているか、ほとんどの人は気づいてすらいないのではないかと思う。実際、このゲームデザインの考え方は私のなかにもすっかり染みつき、当たり前のものになっていた。そのため、『Phantom Blade Zero』をプレイする最近まで、この問題が自分にとってどれほど厄介なものになっていたのか、思いもしなかった。過去10年間でこの形式を採用していないゲームは、片手で数えられるほどしかない。そのなかで特に目立つのが『ファイナルファンタジーXVI』だが、同作はプレイヤーに手ごたえのある挑戦を提供することを、それほど重視していない。『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』には、アクセシビリティ設定として一部のボス戦でチェックポイントを有効にする選択肢が用意されている。何度も壁に頭を打ちつけるような思いをしたくない人には興味深い選択肢だろう。だが、私が話しているのは、手強い戦いを求めながらも、時間を無駄にされたくないだけの、もっと限られた層のプレイヤーだ。私のようなプレイヤーにとって、退屈なボス戦のチェックポイント設計に貴重な時間を何時間も奪われるのは、長いことゲームを遊ぶうえで仕方のない代償として受け入れられてきた。
『Phantom Blade Zero』は、「ボス戦とはこういうものだ」という思い込みを打ち砕いた。開発のS-Gameによるこの見事なアクションRPGが優れているのは、一級品の戦闘を見せつける、最高にカッコよくて手ごわいボス戦が満載だからというだけではない。失敗しても勢いを削がれないのだ。目玉となるボス戦にすぐ戻れるようにすることで、無駄な水増し要素を大幅に削ぎ落としている。そのおかげで、ゲーム全体のテンポも大きく向上している。ボス戦のたびに本来の倍の時間をかける代わりに、各戦闘を驚くほどスムーズに攻略し、次の難関へより早く進める。率直に言って、その過程をもっと楽しめるのだ。本作の初回プレイに費やした50時間は、実に新鮮な体験だった。ボス戦をこのように扱うゲームがもっと増えないことに、ますます苛立ちを覚えるほどに。
「でもトラヴィス、ボス戦にチェックポイントを追加したら難易度が損なわれてしまうじゃないか。僕らは難しいゲームが好きなんだ」と言うかもしれない。
たしかに難しさ自体がよいものだという点には、私も同意する! だが、複数ある形態変化で戦闘時間を水増しすることが難易度を上げる唯一の手段で、その結果、腕前と同じくらい忍耐力まで試す戦いになってしまうのなら、魅力的なボス戦とは言えない。この種の難しさが苛立たしいのは、あまりにも露骨に作為的だからだ。数回挑めばほぼ覚えてしまう序盤のフェーズでは、たいていまったく手応えを感じない。本当の試練は、同じガード、パリィ、回避の一連の動きをうんざりするほど繰り返すという、シーシュポスの苦行のような作業に耐え続けることなのだ。
前段階の形態をやり直さずに済む仕組みがあれば、開発者も遠慮なく、意地の悪さの限りを尽くして後半のフェーズを過酷にできる。そんなゲームがあったら素晴らしいと思わないだろうか。攻撃の半分が即死攻撃というボス戦を想像してみてほしい。挑戦に失敗しても、失うのはほんの数秒だけ。だから、まったく気にならない。ボスの戦い方を覚えるというごく当たり前の過程で、失敗のたびに前半のやり直しを強制させられるのではなく、失敗しても再挑戦までの手間がほとんどない。そんな世界で遊びたい。
『Phantom Blade Zero』は、この点を考えるうえでうってつけの例だ。一撃で倒される攻撃のように理不尽だと感じる死に方をしても、すぐに戦闘へ戻れるので、驚くほど簡単に気持ちを切り替えられた。ボス戦にチェックポイントを設けるという本作の方針のおかげで、あきれるほど強力な攻撃を繰り出す敵にも、苛立ちをあまり感じずに済んだ。この仕組みがあれば、S-Gameはボス戦の演出や展開をもっと大胆に試せる。チェックポイントのないゲームでは、死ぬたびに5分以上かかるとわかっているため、まず採用できないような仕掛けも可能になるのだ。『Phantom Blade Zero』では、死んでも再び戦闘に戻るまで30秒とかからないことが多い。だから、雷の槍を操る、とんでもなく強い戦士に串刺しにされ、はるか上空まで吹っ飛ばされたときも、私はその負けっぷりをむしろ楽しみ、すぐに戦いへ戻れた。開発者には、ボス戦でもっと思い切った試みをしてほしい。チェックポイントは、それを可能にする非常に強力な手段だ。繰り返しをなくしてプレイヤーを解放するだけでなく、開発者の創造性も解き放つ。
たとえ、ボス戦を最初からやり直させる仕様は残すべきだと思うとしても、この余計なヘタクソ税への対処法は、ほかにもあるはずだ。たとえば、第1形態をノーダメージで突破できたならば、次からはスキップさせてくれてもいいのではないか。あるいは、10回連続で勝ったら、ようやくチェックポイントを解放してくれるとか。いっそ、回復アイテムを半分取り上げたっていい! こちらは失った時間を少し取り戻したいだけだ。難易度を上げたって一向に構わない。
ボス戦を最初からやり直させるのは、実際以上に手強く感じさせるための、かなり安直な手段だという結論に至った
すべての開発者が今すぐ一律にボス戦へチェックポイントを導入すべきだと言いたいわけではない。けれども、『Phantom Blade Zero』をプレイして、これほど多くのゲームが当たり前のようにチェックポイントを設けていない現状は、本当にそれでいいのかと考えるようになった。『ELDEN RING』では、それまでのフロム・ソフトウェア作品と比べて、ボス戦までに戻る道のりが大幅に短くなっていた。それでも(ボス戦中の)チェックポイントはないため、形態以降前のボスとの戦闘を何度もやり直すことに多くの時間を費やした。一度たどり着いたあとは、マレニアの恐ろしく手強い第2形態とすぐに戦えるようになっていたとしても、彼女を倒したときの達成感は変わらなかっただろうか。私は変わらなかったと思う。
こうしてボス戦を最初からやり直させるのは、実際以上に手強く感じさせるための、かなり安直な手段だという結論に至った。『Phantom Blade Zero』をクリアする人々が出てくれば、同じことに気づく人もきっといるだろう。それまで私は、剣を手に次の凶悪なボスに備えながら、ヘタクソ税との孤独な戦いを続けることにする。
