2026年11月
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     SNS全盛の時代にあって、バズることはチャンスをつかむこと。恋愛リアリティーショー(恋リア)で「ワッサー」という言葉をはやらせた人がいる。そんな彼に「バズって人生変わりましたか?」と聞くと、返ってきた答えは――。(デジタル編集部 古和康行 敬称略)

    近藤アリー(10月中旬、町田市で)=古和康行撮影近藤アリー(10月中旬、町田市で)=古和康行撮影見知らぬ人から声をかけられて

     「アリー!」

     10月中旬の夜、小田急線町田駅前。指定された集合場所に彼は少し遅れてきた。前の撮影が押していたらしい。街中で写真を撮影しようと一緒に歩き始めると、すぐさま通行人にその名前を呼ばれていた。「お知り合いですか?」とたずねても、「いや、知らない人です」と照れくさそうに笑う。近藤アリー(30)は、Netflixの恋リア「ラヴ上等」シーズン2に参加したラッパーだ。

     ラヴ上等は元暴走族メンバーら「ヤンキー」が出演する恋リア。シーズン2は日本のNetflixの週間TOP10(シリーズ)で6週連続1位にもなった人気シリーズだ。ヤンキー同士が時にもめ、けんかをしながらも、愛を求めて共同生活をする様子を描いている。作中の「水はヤベェだろ」「イライラするわ、日本刀ある?」など、参加者の突飛な発言がバズって話題になることもたびたび。そんな作品にあって、シーズン2で流行語になったのが、アリーが作中で使った「ワッサー」だ。

    ラッパーとして地元でミュージックビデオも撮影している。取材の合間に街を案内してくれたラッパーとして地元でミュージックビデオも撮影している。取材の合間に街を案内してくれた

     元々、「ワッサー」はヒップホップカルチャーに親しみのある人なら聞いたことがある言葉だろう。英語で意味するWhat’s up?(最近どう?)を意味する、Wassup!をさらに砕けた言い方にしたものだ。

     アリー自身も「昔、良くしてもらっていた先輩たちがいて、『ワッサー』ってあいさつしていたんです。本当の意味とかよく分かっていなかったんですけど、一緒にいるうちに自分も使うようになって。地元の集まりで乾杯するときとか、先輩の会話も全部『ワッサー』でした」という。そんな「地元ノリ」の言葉は、ある日突然、大バズりをすることになる。

    恋リア仲間で流行する「ワッサー」

     アリーは地元・相模原市内の高校を卒業した後、自衛隊に入隊したが1年で除隊。その後は、夜の仕事をしながらラッパーとして活動していた。そんな最中、「インスタグラムでモデル募集を見た」ことがきっかけとなり、雑誌「men’s egg」のオーディションに合格し、さらに恋リア「ラヴ上等」シーズン2のオーディションに合格したことが、アリーの人生を大きく変えた。

     本気で恋愛をするために参加したが、「僕自身はヤンキーというわけでもないし、自分のキャラで挑もうと思っていました。もちろん、多くの人の目に触れるので、イモ引く(怖がって引き下がる)のはヤバい。だから、売られたケンカは買おうと思いましたけど、やっぱりおしゃべりキャラが出ちゃったからそんな感じにもならず……」

    取材に応じるアリー。ネックレスは「ファンからもらったもの」も取材に応じるアリー。ネックレスは「ファンからもらったもの」も

     そんな「おしゃべりキャラ」を決定づけたのが、同じシーズン2に参加した仲間の中で 流行した「ワッサー」だった。「1日目に気になる女の子への手紙を書くことになって、『ワッサー』って書いたんですよ。そこから女の子たちも『ワッサー』って使うようになって。そこから『ダッサー』『ワサダキマス』『トリプルワッサー』とかふざけて使っていたら、みんな使うようになっていったんです。自分がワッサーってやるとみんな喜んでくれるから、世間に広めたいというよりもメンバー同士で使ってくれたらいいな、という気持ちで使っていました」。

     だが、そこは地元の飲み屋やクラブではない。世界に配信される人気コンテンツは、その言葉を「バズワード」へと
    変貌(へんぼう)
    させた。 「『ワッサー』はそもそも、先輩たちが使っていた言葉でしたが、バズったことで、『アリーが作った』と思われるような形で広まってしまいました」

    バズりの功罪、賛否両論

     そして、2026年8月。シーズン2の配信が始まると、「街中で写真撮影を求められたり、俺が何かをすると喜んでくれたりする人が増えた」。彼の生活は大きく変わった。

     中でも驚いたのが「そんなに言っていたっけ?」とすら感じていた「ワッサー」という言葉の拡散力だ。作品の中で取り上げられたことで、「アリー=ワッサーの人」という印象が一気に広まっていく。著名人が「ワッサー」とSNSでつぶやいて話題を振りまいたと思えば、自身が作った両手のピースをつなげて「W」の文字にする「ワッサーポーズ」もSNSを中心に人気を博していく。

    出演した恋リアについて語るアリー出演した恋リアについて語るアリー

     「ワッサー」という言葉については、賛否両論が巻き起こった。「悪気なく使ったのですが、『アリーが作った』という認識で広まっていった。元から、ワッサーを使っていた先輩たちのことも怒らせてしまった」と打ち明ける。

     そんな中、9月には楽曲「ワッサー(feat.PAIN)」を発表。この曲を使ったショート動画がTikTokやYouTubeで投稿されるようになり、「ラヴ上等」の配信から2か月以上たち、新しいブームが起きようとしている。「『ワッサー』そのものは、みんなで盛り上がれる言葉です。だから、幅広い世代に楽しく使ってもらえるように今後も広めていきたいと考えています」と語った。

    「全部ひっくるめて…」

     あえてアリーに「(恋リアに)参加してよかったのか」と聞いてみると「全部ひっくるめて考えたら、出てよかった」という。

     「作品の影響力で、自分の望まないことも起きる。それでも、恋愛もできたし、多くの人に知ってもらったことのほうが人生にとってよっぽどポジティブです 」と明かす。

    ワッサーポーズをとるアリーワッサーポーズをとるアリー

     アリーは仕事が増えたものの、相模原市から生活の拠点を動かしていない。その理由は「都内で暮らせるほど成功していない。配信をするにしても、音楽をするにしても、田舎の方が音を出しやすいですし。家族も好きだし、都内で仕事があっても1時間くらいで行けるので」という。「これからが勝負です。消えないように、着実に成長して、みんなが喜んでくれる仕事をしていきたい」と話す。

     バズって変わること、変わらないこと。この時代の「チャンス」は、全てがキラキラ輝いているわけではない。時には痛みも伴う。それでも、手にしたい何かが「バズり」の先にあるのかもしれない。

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