iPad mini(A20 Pro)。使用しているのは、ストレージ512GBモデル。カラーはミッドナイト
11月6日に発売される、新しいiPad miniのレビューをお届けする。
iPad miniとしては久々に、ボディデザインを大幅に変更したモデルとなり、薄く・軽くなったことが特徴だ。
ディスプレイがOLED(有機EL)となり、スピーカーシステムが一新されたのも、AV用途としては気になるところ。
手元にはiPad mini(2021年モデル、第6世代)がある。現行製品である2024年モデルと同じボディデザインだ。これと新機種を比較していこう。
薄さ・軽さの変化は劇的
まずはサイズ比較から。
今回のモデルでは縦横比が若干変わった。画面サイズが8.3インチから8.5インチへと大型化し、画面の解像度も1,488×2,266ピクセルから、1,512×2,316ピクセルへと変更されている。
ただ、そのことはさほど大きなことではない。ボディの表面積的にいうとそこまで変化はしていないし、並べて比べないと、画面サイズの変更も「そういえば大きくなったかな?」くらいのものだ。フレームが細くなり、その分画面サイズが拡大しているわけだが、この点が購入を決定する要素になるとは言えない。
左が旧モデル、右が新モデル
表裏で比較してもサイズ感はさほど変わっていない
フレーム部を接写。新モデルではかなり薄くなり、その分ディスプレイが大型化
しかし、軽さと薄さはそうではない。
今回はセルラーモデルを使っているが、重量は297gから263gになり、34g軽くなった。これは十分に体感できる。厚みも、6.3mmから5.4mmへと変わった。14%程度薄くなった計算で、こちらもわかりやすい。
左が新型。0.9mmの違いで大きく違う。中央はApple Pencilの充電端子
上部。上が新型。Touch IDなどの配置は変わっていないが薄さはかなり変わった
下部、USB-Cインターフェースは同じだが、スピーカー穴がなくなっている
薄さと軽さがセットになったことで、新しいiPad miniはかなり持ちやすくなった。重量的には“重いスマホ”である「iPhone Duo」(254g)や「iPhone 18 Pro Max」(249g)にかなり近いレベルだ。
そうなると、「iPhone Duoとどちらがいいのか」という話も出てきそうだ。
画面サイズだけで言えば確かに、両者はかなり近い。
上がiPhone Duoで、下がiPad mini(A20 Pro)。表示領域は意外とそこまで差がない
本質的な話をすれば、iPhone Duoは「iPhone」、iPad miniは「iPad」なので、できることはかなり異なる。iPhone Duoはスマホとしての用途を優先しており、iPhone用アプリを(もちろん)そのまま使える。通話も可能だ。一方で、iPadに比べると周辺機器や外部ディスプレイ、複数アプリの同時使用などに制限がある。
それに、iPhone Duoは折り畳んでいつでも取り出せる。
iPhone Duoは折り畳めるのでかなり小さくなる
その上で、価格の問題もある。サイズは近いが、意外なほど「違う」製品であり、当然、選ぶ人も分かれてくる。
発色はOLED採用で大幅に改善
それらを踏まえ、今回の大きな変化点の1つである「ディスプレイ」の話をしよう。
これまでのiPad miniは液晶を採用してきたが、今回からOLEDになった。iPhoneはすべてOLEDだし、同タイミングで発表になった新MacBook ProもOLEDを採用した。アップルが改めて、価格重視のモデル以外ではOLEDを採用していく路線が明確になってきた。
前掲のiPhone Duoとの比較画像でもわかるが、発色傾向は、iPhone Duoと新iPad miniでかなり似通っている。写真本来の色味にも近い。
上が新しいiPad miniで、下が旧型。発色傾向が大きく異なる
参考に、iPhone Duoと旧型のiPad mini。新しいiPad miniとiPhone Duoの発色傾向が似ているのがわかる
これに比べると、液晶モデルは少し色が黄色に寄っている。経年劣化もあるとは思うが、以前からこの発色傾向であることは間違いない。輝度も少し低く、「画質が悪いわけではないが、iPadの中でも中庸」なイメージだ。
それが、新しいiPad miniではかなり印象が変わった。色温度が高めに振れている感じはあるものの、見栄えは良く、好印象だ。
一方で、iPad miniは60Hz駆動のディスプレイで、最大120Hz駆動の「ProMotion」ではない。反応速度は申し分ないのだが、スクロール時には、120Hz採用のiPhoneなどとは異なり、若干“ヌルヌルさ”が足りない。とはいえ、サイズやコストを考えたとき、120Hzが必須かというと「そこまでではない」という感触もある。
写真からお気づきかもしれないが、今回借りているモデルは、表面にマット仕上げを施した「ナノテクスチャー」モデルだ。iPad ProやMacBook Pro、iMacには採用されていたが、iPad miniでは初めて採用された。
旧モデルでの反射と比較すると、その価値もよくわかるだろう。マット仕上げということで色純度は若干落ちるのだが、極端に大きなものではない。
ナノテクスチャーを使った新iPad mini。反射がほぼ気にならない
同じ角度・同じ照明で旧モデルを撮影すると、中央などに派手な反射が見える
iPhone Duoでも採用されたが、それともまた加工が異なっており、反射防止の度合いはiPhone Duoの方が上だ。一方で、発色への影響は、iPad mini向けの方が小さい。
あくまでオプション設定であり、価格は17,000円高くなる。反射防止と色純度と価格、どれを重視するかで選ぶべきものだ。
なお、カメラの位置は今回から短辺の側ではなく長辺の側に移動した。横長に置いてビデオ会議などを自然に使えるように、という考え方だ。他のiPadではその方向で設計変更済みなので、iPad miniがようやく追いついた……と考えると分かりやすい。
穴がなくなって防水に。音は画面から
今回の製品は防水・防塵性が高くなった。iPadとしては初めて、IP67等級の防水・防塵性能を謳っている。IP67だと「最大水深1mで最大30分間」の防水であり、プールサイドやお風呂で飛沫がかかる程度なら問題ない。
これを実現するため、本体からはスピーカー穴やSIMカードスロットが排除された。唯一残ったのはUSB-C端子だけだ。今回からeSIMのみに対応する。
スマホではスピーカー穴を設けつつ防水に対応している製品も多いのだが、iPad miniはそうしなかった。
スピーカー穴がないならどう音を出すのか?
答えは「ディスプレイ面の振動」だ。画面から音を出す「Acoustic Display」という構造が採用された。音は画面を通って表に出てくる。だからスピーカーの穴はなくなった……というわけだ。
結果として音質はどうなったか?
これが悪くない。
本体から音を鳴らすという性質上、外部スピーカーのような「ものすごく良い音」を期待するのは難しい。しかし、旧モデルのスピーカーよりもかなり好ましい。
特に重要なのは、音量を大きくしなくても素直な特性の音質が得られることだ。そのため、まさに「パーソナルな感覚」で楽しめる。また、旧モデルでは音場が少し中央から偏っていたのだが、それも是正された。
ただしその性質上、音が出ているときにはボディや画面が若干振動する。手に持って楽しんでいる場合、この振動が気になる人もいそうだ。
A20 Proの優秀さが光る。もはや「iPad Pro」級の性能
最後に性能の話をしよう。
今回、本当の意味で「劇的に変わった」のは性能である。
プロセッサーとしては、iPhone DuoやiPhone 18 Proシリーズと同じ「A20 Pro」が採用されている。メインメモリーの量も同じ「12GB」だ。
今回比較した2021年モデルは「A15 Bionic」(メモリー4GB)、2024年モデルでも「A17 Pro」(メモリー8GB)だった。
そこから見ると大幅な進化だ。筆者は普段、「13インチiPad Pro(M4、2024年発売)」をコンテンツ視聴などに使っている。これも含め、性能を比較したグラフが以下のものだ。
Geekbench 7でのCPUベンチマークテスト
Geekbench 7でのGPUベンチマークテスト
Geekbench AIでの、Neural Engineのベンチマークテスト
CPU性能では流石にM4の方が上だが、それでも差はすでに小さい。もはやMacとも、ハイエンドiPadとも並ぶような性能になってしまった。それだけA20 Proの性能が良いということでもあり、今年のiPhoneの性能が良い、ということでもあるのだが。
なお、今回テストしているのは512GBモデルで、これのみCPUのコア数が6。128GB・256GBモデルは5コアなので、CPU性能は少し下がる可能性がある。
また、AI処理用のNeural Engineも、512GBのみ「デュアルコア」だ。そのため、128GBモデルなどでは、性能が4割程度落ちる可能性が高い。
プロ級の性能になったが悩ましい高価格化
A20 Pro搭載のiPad miniは、性能・画質・薄さ・軽さともに申し分ない。iPad miniとしては最高のモデルと言っていいだろう。
一方で、今回、価格は2024年モデルに対して2万円高くなり、119,800円からとなった。
iPad miniに安価なiPadを期待している層にとって、この価格は厳しいかもしれない。
だが、プロ向けのiPadとしては文句なしの性能だ。iPad mini自体の方向性が、昔からは変わってきている、とも言える。
現在iPad miniは、意外なほど「プロ」が使っている。航空会社や病院での専用端末として、映画・ドラマの撮影現場で、シナリオや撮影フローを管理する道具として定着しているのが実情だ。アップルとしても、そうした市場を強く意識しているのは間違いない。
僚誌・Impress Watchの連載でも解説したが、今回、MacBook Proのイベントに合わせてiPad miniが発表されたことには、相応の意味があるのではないか。それは「iPad miniもまた、プロが使う道具である」という定義かもしれない。
価格についてはメモリー高騰と円安の影響もあるが、こうした変化もまた、今回の新iPad miniの特徴と言えそうだ。
