Oracleは、米国時間10月25~28日にネバダ州ラスベガスで年次イベント「Oracle AI World」を開催した。イベントで数多くのAI関連の発表を行った同社だが、日本メディアのグループ取材に応じた日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、企業がAIを活用する上で、インフラからアプリまでのフルスタックにおいて最新化されていることが重要だとの自身の見解を強調した。

日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏
2026年のOracle AI Worldでは30件近くの新機能やサービスなどが発表された。アプリケーションスイート「Fusion Applications」ではエージェント型AIをさらに推進する機能の拡張や進化、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)ではパートナーハードウェアのサポートのさらなる拡大、OpenAIとの協業に基づくサイバーセキュリティ新基盤「Oracle AI Security Mesh」や「Oracle AI Workspace」の提供など大半がAI関連だった。
三澤氏によると、2027会計年度(2027年5月期)第1四半期時点(2026年6~8月)における同社の契約済み受注残は、前年比46%増の約106兆円に上り、その多くをAI関連が占める。イベントのセッションなどでは、OCIがOpenAIのフロンティアモデル「GPT 6 Astra」の学習環境や、MetaのAIエージェント「Muse」のサービス基盤に採用されていることも紹介された。Oracleは、今後3年間で受注残の約半分が売り上げに転換されると見込んでいる。こうしたことから直近の同社ビジネスでは、OpenAIのようなAI開発企業が大きな存在となっている様子が見て取れる。

イベント直近で話題になったAIモデルやサービスの基盤にOracleが関係している

イベント直近で話題になったAIモデルやサービスの基盤にOracleが関係している
企業のAI投資が盛り上がる一方で、ビジネスとしての投資対効果(ROI)を得られていないという課題感は強まっている。現状でAIの恩恵を享受しているのはAIを開発・提供する側だけ――そんな見方もできるだろう。ユーザー企業のAI活用の現在地と今後の見通しはどうか。
三澤氏は、企業のAI活用の本命が従業員個人の業務効率化などを目的にした生成AI(参照系AI)ではなく、業務プロセスに深く組み込まれた「基幹系AI」にあると度々主張してきた。この点をグループ取材で改めて尋ねると、同氏は「いま(基幹業務領域で)本当に膨大な推論を実行しているという企業の存在をほとんど知らない。基本的にそう(基幹系AIが主役に)あるべきだが、そうなっていないのはビジネスコンテキストと(AIの)行動規範のようなものがまだ不十分であり、それらが十分になれば本当の意味でエンタープライズ企業でのAI活用が増えてくるだろう」と答えた。
その見通しはどうか。三澤氏は、「企業は参照系AIに多くの投資をしているがそれでも限定的な範囲であり、企業のバックエンドで本格的にAIが活用されるようになれば、(企業規模を問わず)少なくとも1社当たりの投資が1億円になり、大企業なら数十億にもなるだろう。さまざまな企業がAIのワークロードに多額を投じる時期が近いうちに到来するだろう。まずその必要条件を満たしているのがFusionのようなプラットフォームになる。消費者のAI利用もまだ日常的とは言えないがいずれ身近になる。企業・個人を問わずAI利用がいずれ当たり前になり、それがいつになるかが市場の関心事だ。私は楽観的に見ている」と述べた。
Oracleは、FusionのAI機能を訴求する際に、共通のデータモデルを使用している点が強みの1つだと主張している。財務や会計、人事、サプライチェーンなどアプリケーションの用途が異なっても共通のデータモデルを使用していることで、AIエージェントが実務を自律的にこなす上で必要となるビジネスコンテキストを提供しやすく、AIエージェントの安全な実行に不可欠なガードレールやハーネス、ルール、ポリシーなど適用しやすいことを優位性に挙げている。
元々Fusionは、Oracleが1990年後半から2000年代にかけてデータベース事業に次ぐビジネス領域としてPeopleSoftやHyperionなどのビジネスアプリケーションベンダーを買収したことに始まり、2010年代に同社は、それらをクラウド/SaaS時代に向けたモダンなアプリケーションスイートとして再構築した経緯がある。その際に共通のデータモデルを採用した。
企業のAI活用では、まずAIが業務を適切に遂行するためのコンテキストを提供するオントロジーやグラフデータベースといったデータ基盤環境の整備が欠かせないとされる。これには分散化、サイロ化しているビジネスアプリケーションそれぞれのデータを集約、統合するプロセスを経るがそれだけでも多くの時間やコスト、リソースを必要とする。Fusionならそうした手間が少ない――Oracle流の売り文句に聞こえても、同社が20年以上かけて行ってきたFusionへの投資と開発が結果的に同社の競争優位性を主張する大きな根拠となっている。
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