2026年11月
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    2026年F1第19戦メキシコGPを経て、ドライバーたちからオーバーテイクは不可能との非難が相次いだ。ルイス・ハミルトン(フェラーリ)は「ここでは追い抜けない」と不満を示し、ランド・ノリス(マクラーレン)も「どれだけ前のマシンに接近しても、追い抜くことは事実上不可能だった」と訴えた。

    批判の矛先が向けられたのは、自らが駆るマシンやコースではなく、技術レギュレーションだ。これは、現行規則の下においてマシンの最高速度が“実質的”に355km/hに制限されている事に端を発する問題だった。

    決勝終盤、ハミルトンは首位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)を猛追。ノリスはシャルル・ルクレール(フェラーリ)にプレッシャーをかけ続けた。ともに、エルマノス・ロドリゲス・サーキットの名物であるターン1へと続く超ロングストレートで、スリップストリームとオーバーテイクモードを駆使したが、それでも追い抜きには至らず、それぞれ2位、5位でフィニッシュした。

    マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラも、「技術規則による制約が、このようなサーキットでの追い抜きを事実上不可能にしている」と指摘した。

    こうした状況だっただけに、終盤のリスタート後にウィリアムズのカルロス・サインツとアレックス・アルボンを相次いで攻略し、他車へのペナルティによって10位入賞を手にした平川亮(ハース)のオーバーテイクは印象的だった。

    メキシコGPでは、本来であれば追撃を助けるはずの電動アシストに関する規定が、逆に追撃の芽を奪っていた。

    355km/hで電動アシスト消失、追い抜きを阻む規則

    追う側には、所定の条件を満たすとオーバーテイクモードの使用が許可される。これは、電動アシスト面でアドバンテージを与えるものだ。ただ、たとえバッテリー残量に余裕があったとしても、好きなだけ出力を上げられるわけではない。技術規則によって、車速に応じて出力が制限されているためだ。

    通常時は、290km/hを超えると最大350kWの使用が許されている出力が減少し始め、345km/h以上で0kWになる。一方、オーバーテイクモードの場合は337.5km/hまで350kWを維持できるが、その先は速度が1km/h上がるごとに許容出力が20kW減っていき、355km/hで0kWになる。

    つまり、たとえオーバーテイクモードを使っていたとしても、355km/h以上では電動アシストを得られないということだ。355km/hを超えた瞬間、マシンはパワーユニット(PU)の総出力の約半分を失うと同時に、途方もなく厚い空気の壁にさらされることになる。

    そのため、それ以上の速度に達することは極めて困難だった。実際、22台中5台は最高速度が355km/h台にとどまった。最も高い速度を記録したピエール・ガスリー(アルピーヌ)でさえ、361.6km/hまでしか伸びなかった。

    さらに皮肉なことに、本来であればオーバーテイクの助けになるはずのスリップストリームは、マシンの加速を支えつつも、同時に電動側のアシスト量を削ってしまう。ハミルトンは、こうした点をレース後に厳しく批判した。

    「後ろを走っていて、スリップストリームによって少し余分なパワーを得られているのに、こんなことになるなんて馬鹿げている。オーバーテイクのためには、その先も加速できるようにあるべきだ」

    なぜメキシコで問題に? 超ロングストレートが露呈させた制約

    ほとんどのサーキットでは、出力制限が響くほどの高速に達することはない。だが、エルマノス・ロドリゲス・サーキットは、決勝レース中のF1史上最高速度記録を誇るサーキットだ。2016年に当時ウィリアムズに所属していたバルテリ・ボッタスは372.5km/hを記録した。

    エネルギー不足によって加速が鈍ったわけではない。ラップ終盤のスタジアムセクションを経て、各車はバッテリーに余裕を残したままメインストレートにアプローチしていた。にもかかわらず、約1,314mのメインストレートでは、その半分ほどでトップスピードが頭打ちになり始める状況が確認された。

    「エンジン自体はもっと速く走れるんだ。それなのに、こういう馬鹿げた出力制限がある。僕が思うに、おそらくF1の歴史上、最悪のエンジン出力特性の設定だと思う。これじゃあ良いレースにならない」とハミルトンは語った。

    2027年は速度連動の出力制限を原則撤廃へ

    ノリスもまた、「速度を超えないようにするリミッターがあるから、何もできなくなる。これじゃあレースが台無しだ。来シーズンに向けて、改善が必要なことだと思う」と訴えた。

    もっとも、10月19日発行の暫定版2027年技術規則では、最大出力制限に関するルールが変更されている。

    現行規則では、オーバーテイクモードの使用時と非作動時のいずれも最大出力が350kWに設定されているが、来季は両者で最大出力を分ける運用が採られる。決勝とスプリントでは、非作動時を最大300kW、オーバーテイクモード使用時を最大350kWとし、両者に50kWの差を設ける。

    原則として、車速に応じた電動出力制限は撤廃される。ただし、決勝およびスプリントでは、特定のセクターに制限区間が設けられる場合がある。

    この区間では引き続き、車速に応じた電動出力制限が課される。具体的には、310km/h未満では最大250kWに制限され、以降は車速に応じて低減されていき、345km/h以上で0kWとなる。

    2026年と2027年のF1におけるERS-Kの車速別出力特性を比較したグラフ。通常時、オーバーテイク時、指定セクターでの最大出力と高速域での出力低減copyright Formula1 Data

    2026年と2027年のF1におけるERS-Kの車速別出力特性を比較したグラフ。通常時、オーバーテイク時、指定セクターでの最大出力と高速域での出力低減

    F1メキシコGP特集

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