「世界一幸せな国」といわれるフィンランド。そこで暮らす人たちは、どんなふうに仕事をし、日々を過ごしているのでしょうか。現地で働く大石由弥さんが出会ったのは、日本で働く私たちにとって、少し意外な仕事との向き合い方でした。
書籍『幸せの国フィンランドに学ぶ「静かな人」の働き方』(SBクリエイティブ)は、Googleでの勤務やスイスでの海外勤務を経て、現在はフィンランドの企業で人事領域に携わる大石さんが、現地での仕事や暮らしを通して得た気づきや、人々との交流から学んだことをつづった一冊です。内向的で静かな人が自分らしく生き生きと働くためのヒントが詰まっています。本書から一部を抜粋・編集してお届けする前編【「世界一幸せな国」フィンランドで働く日本人が、「働きすぎないで」と上司に注意されて気づいたこと】では、期待に応えようと一生懸命に働いていた大石さんが、フィンランドの職場で上司から「働きすぎないで」と注意されたエピソードを紹介しました。では、フィンランドの職場では、どのようなことが大切にされているのでしょうか。後編では、彼らの働き方や、日本とは異なる仕事への考え方を紹介します。
フィンランドの「いい加減」
静かな人が強みを生かし、幸せに働くヒントは、「適当にやるタスクを、自分で決める」ということです。適当なんて、ずるいことのように聞こえますよね。でも最後まで読んでいただければ、これがむしろ前向きな工夫だとわかってもらえるはずです。
静かな人は責任感が強く、細かいことによく気がつきます。だから、目の前の仕事に100%のエネルギーを注ぎ込みます。それ自体は立派なことです。でも、すべてに全力を出していると、いつかキャパオーバーになります。ここに、静かな人が陥りやすい落とし穴があります。
フィンランドの人たちは、最初に「このくらいを目標にしよう」と決めても、締め切りが近づいて現実的でなかったとわかれば、その場で堂々と計画を調整します。延期するか、範囲を狭めるか、質を少し落とすか――私にはそれが、良い意味で力の抜けた「いい加減さ」に見えました。イメージは「良い加減な、いい加減」です。

背景には、時間の使い方があります。フィンランドでは有給休暇は年5週間ほど取り、夏には最低2週間まとめて休むため、1年を10か月ほどで回すつもりで働きます。そう考えると、全部を完璧にこなす余裕はそもそもありません。想像してみましょう。上司から突然「今年の仕事を、10か月で終わらせてくれ」と言われたら、全部を丁寧にやるのは無理だとすぐ気づきます。何を厚くして、何を薄くするか、自然と選ぶことになります。フィンランドの人はそれを毎年やっているから、力の配分がうまいわけです。
日本で働く私たちは、時間がたっぷりあるように錯覚しがちです。でも、あなたの時間も体力も、限られています。その前提に立つと、「これは、そこまで力をかけなくていい」という判断ができるようになります。
たとえば、フィンランドの人も、CEOの目に留まる仕事や、会社にとって大事な場面では、きちんと力を込めます。最初から全部を100%にしないから、大事な1つに120%を注げるのです。減らすのではなく、選ぶ――その感覚をつかむだけで、働き方はずいぶん変わります。
