かつて『婦人画報』では毎月いけばな特集がありました。作品制作をお願いしたのは、昭和、平成に活躍された各流派のお家元や作家の方々です。この連載では、いまでは大変貴重になった各流派の季節の作品を、小誌バックナンバーから特別に掲載してご覧いただきます。
12月は、「椿」。日本ツバキ協会の会長を務めていた母、初代安達曈子さんも訪れた山口・萩。二代主宰が萩の笠山椿群生林を巡り、思い出を辿ります。解説は、当時の婦人画報いけばな編集者・星野眞理子さん。今月のいけばな展情報(2026年11月19日〜11月24日開催)は記事の最後にお知らせします。
・・・
■この続きはログインするとお読みいただけます
安達曈子作品1●花材:椿(ツバキ)(光源氏、春の舞、月の都) 花器:食籠
安達曈子作品2●花材:椿(薮椿)、小菊(コギク) 花器:経筒安達曈子作品3●花材:椿(月の輪)、小菊(コギク) 花器:さざれ石
■この記事をプレゼントできます!
その他の有料会員限定記事はこちら
Katsuo Takashima
安達曈子作品1●花材:椿(ツバキ)(光源氏、春の舞、月の都) 花器:食籠
椿の群生林で思う始祖からの三代
太古から日本に自生していた照葉樹林を代表する椿は、縄文時代から生活に深く結びついていました。江戸時代の園芸ブームは、華やかな品種の椿を次々に誕生させ、絵巻物「百椿図」がまとめられます。戦後、この「百椿図」を骨董店で入手したのが、安達流の花の始祖、祖父の安達潮花です。潮花は盛花など新しい時代のいけばなを提案する花道家であり、椿の収集家としても知られていました。椿に囲まれて育った初代安達曈子も椿の作品を多く残し、日本ツバキ協会の会長も務めています。
日本ツバキ協会が主催する椿サミットの開催地として、初代も訪れた萩の笠山椿群生林を巡った二代主宰は、その美しさと感動をいけるために黄檗寺院の東光寺を訪ねます。東光寺は国の指定史跡となっている萩藩主毛利家墓所があり、五百数基の石灯籠が並んでいます。
上は初代が愛用していた食籠に、群生林で見た椿の力強さにやさしい色彩を添えることで、母への手向けとした作品です。
下は東光寺の脇床。「日本に自生し、古より身近であった原種の薮椿。枝は葉の美しさを意識しながら、始祖の形見である経筒にいけることで、三代の思いを託しました」と二代主宰は語ります。
Katsuo Takashima
安達曈子作品2●花材:椿(薮椿)、小菊(コギク) 花器:経筒
Katsuo Takashima
安達曈子作品3●花材:椿(月の輪)、小菊(コギク) 花器:さざれ石
母が残してくれた思い出と私の椿旅
椿は18世紀に初めてヨーロッパに紹介され、学名はカメリア・ジャポニカと命名されています。今日の園芸種は世界で五千ともいわれ、花の大きさや咲き方、枝振りもさまざまです。
上は、宿の庭で偶然に出会った二輪の椿、赤と白の斑が美しい大輪の一重です。二輪が呼応するように、向かい合う表情で花の魅力を強調した作品で、毛利家の墓所での撮影です。
冬に咲く椿は、霜や風雨から守ろうとする何枚もの葉が花を隠します。葉と花のバランスを考え、葉の汚れを一枚一枚丁寧に拭く二代主宰。
2005年に、初代と一緒に開催した日本橋三越本店での「椿物語展」の記憶がよみがえります。会場を埋め尽くす椿の手入れで毎朝大変でしたが、その楽しかったこと。「母が残してくれた大切な思い出です。いけばなは一期一会。特に椿は、いつも新鮮な気持ちで対峙しています」と二代主宰は語ってくださいました。

Katsuo Takashima
【今月の作家】二代安達曈子
あだちとうこ●始祖、安達潮花の生家、広島の浄念寺に生まれ、1990年、小学5年生で初代主宰の養女として上京。東京農業大学地域環境科学部卒。2005年、副主宰に就任し、企画展「椿物語展」を東京・日本橋三越本店で初代とともに開催。2006年、初代逝去により二代主宰に就任。
【今月の流派】花芸安達流
かげいあだちりゅう●1917年、安達潮花によって創流された安達式挿花が前身で、1973年「自然の心を生ける」をモットーに安達曈子が創流。1981年に安達式挿花を統合。基本形式は直立態、傾斜態、平面態、下垂態、複合態の五つの様式に分類され、体系的に習得できるシステム。2006年、初代急逝後は、副主宰であった養女の安達育が、二代目安達曈子を襲名、現在に至る。
花芸安達流
いけばな作品の初出:『婦人画報』2016年3月号(撮影=高嶋克郎)
11月のいけばな展情報(2026年11月19日〜11月24日開催)
龍生派140周年記念展
「いけばな古今東西(ここんとうざい)」
ryuseiha
「植物の貌2025」より 自由花大作:吉村華洲(龍生派家元)
吉村華芸(かうん)によって明治時代に創流された龍生派の、140周年を記念するいけばな展が、11月19日(木)から11月24日(火)まで開催されます。会場は昨年同様、渋谷駅直結の渋谷ストリームホール。4代家元・吉村華洲氏の大作も含め、3期に分けて約400点の作品が展示されます。タイトルは『いけばな古今東西』。植物を生かす表現の可能性をその長い歩みの中で探究してきた龍生派は、古典様式も伝承していますが、枝や花が持つ表情を自分の目で捉えて作品化する「個性を表現するいけばな」を提唱。いけばなの新しい魅力が発見できる展覧会です。
日程/2026年11月19日(木)~24日(火)
場所/渋谷ストリームホール 4、5、6階
東京都渋谷区渋谷3-21-3
Google mapで確認
時間/10時~18時(20、22、24日は16時30分まで)※入場は閉場の30分前まで
入場料/1,700円(前売り1,300円) 高校生以下無料
主催/龍生派家元吉村華洲+龍生派本部
問い合わせ/龍生華道会 tel.03-3268-1241
展覧会特設サイト
〇選りすぐりの記事を毎週お届け。『婦人画報』メールマガジン(無料)ご登録はこちら
〇この記事をプレゼントできます!詳細はこちら
