全員が渋滞予測を見て、混む時間を避けたら【1万台のシミュレーション】
朝、あなたは渋滞予測を見ます。9時台は混む、と出ています。
だから1時間早く出ることにしました。
――もし、1万人の全員が、同じことをしたら。
パソコンの中に1万台が通る道を作って、確かめました。
答えは「渋滞は消えませんでした。移動して、大きくなりました」。
ただし、誰も間違ってはいませんでした。
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■ 目次
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00:00 渋滞予測、見ますよね
00:41 この街のしくみ
01:56 あなただけが、予測を見たら
02:56 全員が見たら
04:25 渋滞は、移動して大きくなった
05:15 誰が損をしたのか
06:41 取る相手が、いなくなる
08:17 今回わかったこと
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■ 今回の条件でわかったこと
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① あなただけが予測を見ると、大きく得をします
47.27分が31.60分へ。15.66分も速くなりました。
400回ためして、損をした回は1回もありません(0%)。
② 全員が予測を見ると、街ぜんたいは10.58分遅くなりました
47.54分が58.12分へ。40通りの街すべてで遅くなっています。
※①の47.27分と②の47.54分は測り方が違うので、引き算しないでください。
①は「その1人だけの平均」、②は「街1万台の平均」です。
③ 渋滞は消えず、移動して大きくなりました
9時台に出た車は3,884台から0台へ。誰も9時台に出なくなりました。
それでも行列は7.2kmから14.8kmへ、2.1倍にのびています。
いちばん混む時刻が、09:45から08:30へ移っただけでした。
④ 予測は外れます。しかも大きく
全員が動いたあとの実際の待ち時間は、予測と平均27.50分ちがいました。
予測は「昨日の実績」です。昨日の話をもとに、今日、全員が動くからです。
⑤ 「1分待ち」と言われて、55.1分待った人がいました
背番号6153番。本来は9時22分に出るはずが、予測を見て8時22分に出発。
予測は「1分待ち」。実際は55.1分待ち、所要85.1分。
予測が無ければ59.6分でした。予測を信じたぶん、25.5分損しています。
同じ目に遭った人は、10万人あたり18,775人。珍しい人ではありません。
⑥ それでも、誰も予測を見るのをやめません
半分が予測を見る街では――
予測を見た人 42.28分/予測を見なかった人 53.99分。
同じ街の中では、予測を見た人のほうが11.70分も速いままです。
だから、やめる理由がありません。
⑦ 予測を見た人が速くなれた理由
予測を見なかった人が、元の時間に残っていたからでした。
全員が見ると、その差がなくなります。
4台に1台が見る -1.96分(街ぜんたいは速くなる)
半分が見る +0.59分
4台に3台が見る +5.08分
全員が見る +10.58分
※マイナスは、予測が無かった日より速いという意味です。
⑧ 30日つづけると、混む時刻が毎日ずれていきます
100通りの街で調べて、前の日と同じ時刻になった日は1日もありませんでした。
そして、およそ10日でひとまわりします。
※ぴったり10日で戻る街は、10のうち4つでした(100通り中39通り)。
「10日周期」と言い切れるほど、きれいには戻りません。
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■ 実験の条件(前提)
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【道】
・1本だけ。途中に1か所、みんなが少しずつ速度を落とす場所があります
(上り坂やトンネルの入口。国内で渋滞の最大の原因とされている形です)
・すいていれば30分で着きます(時速100kmなら、およそ50km)
・2車線ありますが、その1か所を1時間に通れるのは3,000台
(1車線あたり1,500台。国内の実測に近い水準)
・行列の長さは、1台7.5m(車の長さ+車間)を2車線に並べて計算しています
【車】
・1万台
・本来出発したい時刻は6:00〜11:59。9:00にいちばん集中します
(集中の強さは、8時〜10時に出たい人が7割になる強さ)
・追い越しはありません。先に来た車から順に通ります
【渋滞予測】
・内容は「昨日の実績」です(きのうは9時が混みました、と出す)
・15分きざみで出ます(「9時15分〜9時30分は◯分」)
・発表は1分単位に丸められます(現実の渋滞予測と同じ)
【予測を見た人の動き方】
・ずらせるのは前後1時間までです
(「夜中3時に出ればいい」とならないための枠です)
・自分の時間帯がいちばん良いなら、動きません
・動く人は、空いている時間帯の中から3分の幅でばらけて選びます
・「予測を見ない人」には、見られない人・見ても動けない人
(始業時刻が決まっている、子どもを送る、など)が含まれます
※事故も、天気も、抜け道もありません。
この道しかなく、乗る・乗らないの選択もありません。
【試した回数】
・街ぜんたいの比較:条件ごとに40通りの街
・あなた1人だけの比較:400回
・日ごとに混む時刻が動くかの確認:100通りの街×30日
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■ 結果の数値
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【誰も予測を見ない世界】
・平均所要時間 47.54分
・いちばん長い行列 7.2km(1,910台)
・9時台に出た台数 3,884台
・いちばん多く出る時刻 08:45
・いちばん混む時刻 09:45
・いちばん待つ人の待ち時間 38.0分
【あなただけが予測を見る(400回)】
・見ないとき 47.27分 → 見たとき 31.60分
・速くなった分 +15.66分(幅 +14.40〜+16.93)
・損をした回 0%/速くなった回 77%
・(参考)実際に動いた人だけで見ると +20.28分
・まわりの25%も見ている +13.41分(損をした回 0%)
・まわりの50%も見ている +12.46分(損をした回 14%)
・まわりの全員が見ている +9.11分(損をした回 34%)
・★30日つづけると -2.26分(初日は得。続けると損になります)
【全員が予測を見る(40通りの街)】
・平均所要時間 58.12分
・誰も見ない世界との差 +10.58分(幅 +10.41〜+10.74)
・いちばん長い行列 14.8km(3,950台)= 7.2kmの2.1倍
・9時台に出た台数 0台
・いちばん混む時刻 08:30
・前へずらした台数 6,147台/後ろへずらした台数 1,789台
・動かなかった台数 2,063台(21%)
・前へずらした人は、全員が「いちばん混む時刻より前」に出ています(例外0台)
・予測と実際の食い違い 27.50分
・★30日つづけると +13.90分(初日の+10.58分より悪化します)
【半分が予測を見る(40通りの街)】
・予測が無かった日 47.54分
・街ぜんたい 48.14分(+0.59分・幅 +0.41〜+0.77)
・予測を見た人 42.28分(-5.26分)
・予測を見なかった人 53.99分(+6.44分)
・同じ街の中で、予測を見たほうが速い分 +11.70分
【予測を見る人を増やす(40通りの街・初日)】
・4台に1台が見る -1.96分(幅 -2.10〜-1.82)
・半分が見る +0.59分(幅 +0.41〜+0.77)
・4台に3台が見る +5.08分(幅 +4.89〜+5.26)
・全員が見る +10.58分(幅 +10.41〜+10.74)
【1台を追いかける(背番号6153番)】
・本来の出発希望時刻 09:22 → 実際の出発 08:22(60分早めた)
・予測で言われた待ち時間 1分/実際に待った時間 55.1分(食い違い +54.1分)
・所要時間 85.1分/予測が無かったら 59.6分(+25.5分)
・同じ目に遭った人 18,775人/10万人
【30日つづける】
・前の日と同じ時刻になった日:100通りの街すべてで0日
・ぴったり同じ日数で戻る街:100通り中39通り(10日が38、13日が1)
・高さのくり返しの強さ:まんなか0.97(100通りすべて0.8超)
・動画で見せている街:100通りのうち、動いた日の割合と時刻の種類数が
まんなかに近いものを選んでいます(30日で8種類の時刻に現れます)
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■ この結果が言える範囲(ご注意)
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・これは、上に書いた条件でのシミュレーションの結果です。
・1万台・道が1本だけの、架空の実験です。
事故も、天気も、抜け道もありません。
・実在のどこかの道路や渋滞予測を再現したものではありません。
・★実際の渋滞予測を、見なくてよいという話ではありません。
この実験の中でも、予測を見た人のほうが、
予測を見なかった人より速いままでした(42.28分と53.99分)。
・★そして、みんなが毎朝、予測をそのまま信じる世界の話です。
現実の人は、外れた予測を覚えて、次からは違う動き方をします。
・遅くなったのは「街ぜんたいの平均」です。個人が遅くなったのではありません。
・「およそ10日でひとまわり」の「およそ」は外せません。
ぴったり戻るのは100通りのうち39通りです。
・距離(およそ50km)は、モデルに入っている値ではありません。
入っているのは「すいていれば30分」で、時速100kmとして換算したものです。
・混雑の集中の強さ(9時に集まる度合い)に実測の裏づけはありません。
仮定として扱い、強さを振って確かめています。
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■ 参考にしたモデル
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行列の計算は、待ち行列の教科書でいう D/D/1
(来る時刻も、通すのにかかる時間も決まっている、通れるところが1つ)です。
交通の分野では bottleneck model として知られ、
「決まった時刻に集中してやってくると、どれだけ待つか」を調べる標準的な形です。
W. S. Vickrey, “Congestion Theory and Transport Investment”,
American Economic Review 59(2), 1969.
※シミュレーションのプログラム・図表・映像は、
すべて本プロジェクトで作成しています。
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■ 音楽・素材
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BGM(YouTube オーディオ ライブラリ)
・Floating Lanterns – The Mini Vandals
・Pulsar – The Grey Room / Density & Time
・Turn In The Sun – Simon Herody
実写素材:動画AC
・高架下の渋滞(動画AC 184349)
・夜のインターチェンジ(動画AC 164500)
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もしもの実験室では、「世界の条件を変えたら何が起きるのか」を
パソコンの中のシミュレーションで確かめていきます。
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