ソフトバンクと米Sceye(スカイ)は9月2日、成層圏を飛ぶ「空飛ぶ基地局」HAPSから地上のスマートフォンに電波を届け、音声通話や動画視聴ができることを日本上空で確認したと発表した。日本上空を飛ぶHAPSによる通信試験の成功は国内初だという。
今回使ったのはSceyeの機体で、両社は「商用化に向けた試験サービス」と位置づける。両社は2027年以降の国内商用化を目指す。HAPS上でデータを処理するエッジコンピューティングの検証にも、世界で初めて成功したとしている。
今回飛んだのは、空気より軽く、浮力を使って飛び続ける飛行船型のHAPSだ。8月9日午後10時(日本時間)に米ニューメキシコ州ロズウェルを飛び立ち、約13日間かけて太平洋を横断、1万5000km以上を飛んで8月23日午前7時11分に日本上空へ到達した。その後は高知県・室戸岬沖の上空にとどまり、ソフトバンクのコアネットワークとつないで試験した。
高知県室戸市周辺を試験エリアに選んだのは、南海トラフ地震などの大規模災害を想定したためだ。成層圏の風向きや風速を踏まえて機体を運用し、指定したエリア内で、最も狭いときで半径5km以内に位置を保ち続けたという。試験を終えた機体は米国へ向けて太平洋上を飛行中で、9月2日時点も連続飛行の性能確認を続けている。
通信試験では、HAPSに載せた4G LTE相当の基地局を、地上のゲートウェイ経由でソフトバンクのコアネットワークにつないだ。音声通話やテキストメッセージの送受信、SNSアプリの利用に加え、ビデオ通話や動画視聴といった大容量のデータ通信も安定して行えた。地上の基地局との電波干渉を抑えながら、地上ネットワークと同等の通信性能を出せたとしている。ただし、通信速度の具体的な数値は示していない。
災害時の使い方も確かめた。緊急地震速報や津波警報を配信する緊急速報メールのシステムが動作したほか、海上保安庁の協力で、音声通話による118番への緊急通報も確認した。
地上だけでなく、上空への通信も試した。HAPSの通信を介してドローンを遠隔制御し、自動飛行させたところ、飛行制御や位置情報の送信、映像伝送が安定してできた。ソフトバンクは、HAPSでドローンなど上空のモビリティにも通信を提供する「3次元通信ネットワーク」の構築を目指しており、災害時の被害状況の確認や物資輸送、離島・洋上の監視、インフラ点検などへの応用を見込む。
世界初とするエッジコンピューティングの検証では、機体にモバイルコアと処理用のウェブサーバーを搭載し、スマホからの通信を地上ネットワークを経由せずにHAPS内で処理して返した。応答時間は往復平均68ミリ秒で、インターネットを経由してクラウドで処理する場合に比べ、遅延を40%以上減らせたという。ロボットなどをAIが動かす「フィジカルAI」やリアルタイムの映像解析のように、広いエリアと低遅延の両方が求められる用途を想定する。
ソフトバンクの宮川潤一社長は、今回の成功を「HAPSの商用化に向けた重要な一歩」とコメントした。Sceye創業者のミッケル・ヴェスターガード・フランドセンCEOは「技術そのものを実証する段階から、HAPSを商用サービスとして実現するためのインフラを構築する段階へと進んでいる」と述べている。
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