「Audacity」v4.0.0
定番サウンドエディター「Audacity」が9月3日(日本時間)、v4.0.0へ更新された。2021年3月以来、約5年半ぶりのメジャーアップデートとなる。
「Audacity」は、クロスプラットフォーム(Windows/Mac/Linux)で動作するオープンソースの音声波形編集ソフト。四半世紀以上にわたって開発が続けられている老舗のアプリで、WAVやMP3、FLAC、Oggといったすべての主要なオーディオ形式をサポート。スペクトログラムビューで周波数を視覚化できるほか、「VST3」などのサードパーティー製プラグインにも対応する。そのため世界的な人気を博しており、プロフェッショナルにも愛用者は多い。
近年もWindows版でARM64アーキテクチャーへの試験対応が行われたほか、マスターエフェクト、プロジェクトのクラウド保存、テンポの自動検出、「VST3」プラグインサポートといった改善が積極的に行われている。
「Audacity 4.0」の目玉は、アプリケーションのユーザーインターフェイスが「Qt」で全面的に作り直されたことだ。高DPI環境でもネイティブに描画されるようになったほか、ツールバーやパネルは、移動やドッキング、フロート、表示・非表示の切り替えを自由に行えるようになった。テーマはライト・ダーク・ハイコントラストの3種類。アクセントカラーやトラックの色、クリップのスタイルなども変更できる。アプリアイコンも新しくなった。
「Qt」で全面的に作り直されたユーザーインターフェイス
カスタマイズした画面は「ワークスペース」として保存することが可能で、手に馴染んだレイアウトで「Audacity」が使える。標準で「モダン」「クラシック」「ミュージック」の3つが用意されるので、そこから好みのものを選んでもよい。起動時に表示される新しいホーム画面には最近使ったプロジェクトがサムネイル付きでリストアップされるので、すぐに編集作業へとりかかれる。
また、クリップ編集モデルも刷新され、操作体系もわかりやすくなった。従来のセレクト、エンベロープ、ドロー、マルチツールといったツールモードは廃止され、代わりに状況(コンテキスト)に応じてツールが切り替わる。そのほかにも、クリップを直接つかんで編集できるようになるなどの改善が施された。
クリップを直接選択:クリップのヘッダーをクリックすると選択でき、[Shift]キーを押しながらで複数選択も可能まとめて編集:移動、トリミング、タイムストレッチが選択したすべてのクリップに適用されるグループ化:グループにまとめておけば、移動・コピー・貼り付け・複製でも一緒に扱われる自由な配置:モノラルとステレオのトラック間を移動できるほか、ほかのクリップに重ねると、重なった部分が置き換わる(従来は移動できなかった)分割の専用ツール:[S]キーを押す/押し続けてから波形やクリップヘッダーをクリック。分割して切り取り、分割して削除、無音部分で分割、分割して新規トラックへ、といったコマンドも用意賢くなった貼り付け:必要に応じてトラックを作成したり、チャンネル構成を合わせたり、OSのクリップボードから音声ファイルを貼り付けたりできる
再生・録音機能も全面的に強化されたが、注目は Windows版ビルドで「ASIO」がサポート されたことだ。これまではライセンスの都合から公式ビルドにASIOは含まれておらず、自分でビルドする必要があったが、それが不要となる。この点は派生アプリ「Tenacity」が先行していたが、追いついた格好だ。
なお、「Audacity 4.0」は「Audacity 3」のワークフローのほとんどを引き続きサポートするが、一部に仕様の変更がある。
プロジェクト形式は「.aup4」に。従来の「.aup3」プロジェクトも開けるが、「.aup4」へ変換され、「.aup3」へ保存し直すことはできない一部の「Audacity 3」機能は利用不能。開発チームは今後のリリースで追加していくとしている
・タイムトラック
・ノート/MIDIトラック
・ミキサー
・マクロマネージャーとスクリプティングパイプ
・「VAMP」「LADSPA」プラグインのホスティング
・速度を変えた再生(Play-at-speed)
このほか、一部の書き出し・レンダリング機能、アナライザー、エフェクトも未実装となっている。既存のユーザーは、今まで行っていた作業が「Audacity 4.0」でも引き続き行えるか十分評価したうえで、移行するとよいだろう。
また、Windows版にはx86_64版とARM64版が用意されているが、ARM64版には引き続き制限がある。Windows 11以降が必要で、「VST」「OpenVINO」などのプラグインは利用できず、ARM64版の「FFmpeg」も別途必要となる。
