2026年9月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  

    2019年、ファーウェイでは「天才少年」採用プロジェクトを発足し、高度人材を採用し続けてきた。当時採用された若手たちが、いま中国で存在感を増している。2019年、ファーウェイでは「天才少年」採用プロジェクトを発足し、高度人材を採用し続けてきた。当時採用された若手たちが、いま中国で存在感を増している。REUTERS/Jason Lee

    不動産開発の霞が関キャピタルが、2027年春入社の新卒社員を対象に導入した「トップタレント採用」が話題を集めている。起業やAI開発、研究、アートなどで突出した実績を持つ学生を、初任給月100万円、初年度年収約1400万円で採用する。同枠には約1300人の応募があり、すでに約10人が内定しているという。

    このニュースで思い出したのが、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が2019年に始めた「天才少年」採用プロジェクトだ。米政府の規制によって存亡の危機に直面していた同社は生き残りをかけ、年収数千万円という破格の報酬で世界から理系トップ人材を集めた。

    その「天才少年」が最近、中国で再び脚光を浴びている。彼らの一部が今、中国で最も熱いテック分野の一つであるフィジカルAIの有力な担い手になっているからだ。

    新卒年収はCランクでも2000万円超天才少年プロジェクトはファーウェイの創業者である任正非CEOの肝いりで始まった。天才少年プロジェクトはファーウェイの創業者である任正非CEOの肝いりで始まった。Reuter

    ファーウェイの「天才少年」は、現在も採用が続く若手人材向けの制度だ。

    ファーウェイCEO、戦いに勝つために「世界から天才少年集める」 | Business Insider Japan

    ファーウェイCEO、戦いに勝つために「世界から天才少年集める」 | Business Insider Japan

    2022年に世界に向けて公表された募集要項によると、学歴や出身校は不問で、報酬は通常の5倍以上。「価値の高い研究成果・論文・特許」「トップレベルの研究室・選抜チーム出身」「国際トップレベルの大会での入賞」などの実績があれば採用プロセスで加点される。「天才少年」として採用された人材には、「世界レベルの挑みがいのあるテーマ」「優れた指導者」「グローバルな視野とプラットフォーム、リソース」が提供される。

    2019年に流出した内部文書などによると、初期の採用者の年俸は次の3ランクに分かれていた。

    Aランク:182万~201万元(1元=23.3円で計算、約4250万~4690万円)
    Bランク:140.5万~156.5万元(約3280万~3650万円)
    Cランク:89.6万~100.8万元(約2090万~2350万円)

    プロジェクトの名称は「天才少年」だが、実際に採用されているのは、AIやコンピューター科学、通信などで突出した研究成果を持つ若手研究者やエンジニアで、多くが博士号取得者だ。新卒が多いが、転職組も対象としている(日本の第二新卒に近い)。

    同社は2022年3月末の決算発表会で、2020~21年に採用した新卒約2万6000人のうち、300人超が「天才少年」枠だったと明らかにしている。

    9人で資金調達1800億円

    中国でヒト型ロボットやフィジカルAI企業が台頭する中、「天才少年」が最近再び注目されている。資本と技術が集まる有力企業を掘り下げていくと、その背後にファーウェイがかつて選抜した「天才少年」たちが度々登場するからだ。

    中国のテックメディア「智東西」が2026年7月に公開情報を集計したところ、ファーウェイを離れてフィジカルAI分野の企業を創業したり、技術トップとして参画した元「天才少年」は少なくとも9人。彼らが関わる企業の資金調達額は、公表されているだけで合計約77億元(約1800億円)に達する。

    8月に北京で開かれたヒト型ロボットの運動会に出場したAgibotのヒューマノイド。8月に北京で開かれたヒト型ロボットの運動会に出場したAgibotのヒューマノイド。Reuter

    その中で最も世間に知られた存在が、ファーウェイ入社前からAIや電子工作の動画をネットで発信し、インフルエンサー「稚暉君」として活動してきた彭志輝氏だろう。

    彭氏は2020年、最高ランクの年俸201万元(約4690万円)で「天才少年」としてファーウェイに入社し、AI半導体「昇騰(Ascend)」関連の業務に携わった。2021年には休日を使って自ら設計・製作した「自動運転自転車」をネットで公開。倒れずに自立し、障害物を避けて走る自転車は大きな話題を呼んだ。

    2022年末にファーウェイを退職し、翌年、ロボット企業「智元机器人(Agibot)」を共同創業した。同社は現在、宇樹科技(Unitree、ユニツリー)と並ぶ中国の有力フィジカルAI企業の一角に成長している。2026年6月には累計1万5000台目となるロボットが量産ラインから出荷された。資金調達だけでなく、すでに万台単位の量産・実装段階に入っている企業だ。

    自動運転からヒト型ロボットへ

    ファーウェイは「天才少年」プロジェクトを始めたのと同じ2019年、新たな成長領域として自動車関連の事業部も立ち上げた。

    ファーウェイ、スマホブランドと“離婚”し冬ごもり。次世代自動車で再起期す | Business Insider Japan

    ファーウェイ、スマホブランドと“離婚”し冬ごもり。次世代自動車で再起期す | Business Insider Japan

    2020年にファーウェイの自動車部門に入社したのが、香港科技大学で博士号を取得した丁文超氏だ。

    丁氏はファーウェイの第1世代自動運転システムの中核エンジニアとして開発に携わり、2023年に退職。復旦大学に移ってヒト型ロボット(ヒューマノイド)を研究した後、2025年にファーウェイの元同僚らとフィジカルAIスタートアップ「它石智航(TARS)」を共同創業し、車輪型の産業用ロボットや二足歩行の汎用ロボットを開発している。

    同社は2026年4月、Pre-Aラウンドで4億5500万ドル(1ドル=156円で計算、約710億円)を調達し、中国のフィジカルAI分野で単一ラウンドとして過去最高額を記録した。同ラウンド時点の評価額は約130億元(約3030億円)と報じられ、創業間もないながら、すでに中国のフィジカルAI投資を象徴する企業の一つになっている。

    ファーウェイの自動車ビジネスは着実に成長している。ファーウェイの自動車ビジネスは着実に成長している。Reuter

    「天才少年」として同じく2020年にファーウェイの自動車部門に入社した黄青虬氏は、LiDARの認識アルゴリズムを皮切りに、自動運転のAI責任者を務めた。

    2025年に退職し、同年、ファーウェイの同僚らと汎用ロボットを開発する「墨奇智能(Morphi)」を共同創業した。同社は、創業から1年弱でアリババやテンセントなどが参加する総額10億元超(約230億円超)のエンジェルラウンドを完了。投資後の評価額は70億元超(約1630億円超)に達している。

    選考辞退から創業、ユニコーンに

    ファーウェイのAI研究機関「ノアの方舟研究所」出身の李銀川氏と周凱文氏らが立ち上げたのが、家庭向けロボットの「頭脳」に当たる意思決定システムを開発する「諾因智能(Knowin)」だ。

    李氏は同研究所で生成AI・大規模モデルの責任者などを務めた後、2025年に退職し、同年6月に諾因智能を創業した。周氏も「天才少年」として同研究所に入り、AIエージェントなどの研究に携わった後、香港中文大学を経て同社に合流した。

    諾因智能は2026年8月、5億元(約120億円)の資金調達を発表した。まだ製品の本格量産前ではあるものの、家庭用ロボットの商用化を見据えた段階に進んでいる。

    Share.

    Comments are closed.