2026年9月
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    32bitフロート録音・HDMI Sync対応4chフィールドレコーダーTASCAM FR-AV4は単なるマルチチャンネル音声レコーダー以上に現場で活躍してくれる。ソニーFXシリーズなどと組み合わせて使用したときに、音声入力を増やし、かつHDMIからスルーアウトさせてNINJAなどのレコーダーで映像とマルチチャンネル音声を同時記録する、音声スタッフのいない少人数の映像制作での効率的な方法を紹介する。

    レポート●TAKASHI TERADA

    TASCAM FR-AV4 
    4chフィールドレコーダー  

    32ビットフロート録音・HDMI Sync対応4chフィールドレコーダー/ミキサー/タイムコードジェネレーター。4チャンネル+ステレオミックスの合計6トラック録音に対応。さらに、4入力2出力のオーディオミキサーを内蔵し、クリアな音声を送ることができる。

    162,800円(税込)ティアックストア販売価格

    TASCAM FR-AV4を実際に運用してみると、32bitフロート録音やHDMI Syncによるタイムコード同期、さらにマルチチャンネル音声をHDMI経由でNINJAへ同時収録できるなどの多彩な機能が、現場で安定して運用できるよう設計されていることがわかる。これは単純に「マイクの本数を増やせる」以上の価値があると思う。

    筆者は音楽制作も行う。そこでは楽器を個別に録音し、ミックス時に定位や奥行きを設計することで、臨場感だけでなく世界観も表現する。映像にはさまざまな制約があり単純には比較できないが、撮影者が感じた感情を伝えることも、音の役割だと考えている。

    ワンマンや少人数の現場でも有機的な音を増やしたい

    例えばイベント会場での企業インタビュー。ガンマイクだけでも録音できるが、どこか平面的だ。そこでピンマイクに加え、モノラルマイク2本を左右に配置したらどうだろう。距離や角度を変えることで、企業の言葉だけでなく、会場の広さや熱気まで持ち帰れるかもしれない。

    料理人の撮影なら、声とアンビエンスに加え、もう1本のガンマイクで料理人の作業音を拾うのはどうだろう。有機的な音はドキュメンタリーをよりリッチな映像に仕上げるだろう。

    こうした音の表現を、少人数の現場でも安全に実現できるのがFR-AV4の魅力だ。今回はその実力を確かめるため、ソニーFX3、TASCAM FR-AV4、ATOMOS NINJA TX、ゼンハイザーMKH416、TASCAM DR-10L Proを組み合わせて運用してみた。

    FX3、FR-AV4、NINJA TXをHDMI接続

    仕組みはシンプルだ。通常のFX3+NINJA TXという構成の間にFR-AV4を加えることで、MKH416をFR-AV4本体へ32bitフロートで収録しながら、その音声をHDMI経由でNINJA TXにも記録できる。音声原版とバックアップを確保しつつ、使えるマイクの幅も広げられるというわけだ。

    なお、NINJA TX内の音声同士は同期不要だが、FR-AV4本体の32bitフロート素材を後から使う場合は、FX3のTime Code出力を「入」、FR-AV4のTIMECODE→MASTERを「HDMI」、NINJAのタイムコードソースも「HDMI」に設定しておく。

    ※DR-10L ProはFR-AV4のTC OUTからタイムコードを受けてLTCジャムシンクで自走が可能

    今回の接続は上の通り。FR-AV4とカメラをHDMI接続するだけで、映像と音声の高精度なクロック同期が可能。カメラの操作に連動して録音が開始・停止される。FR-AV4で収録した4チャンネル+ステレオミックスは本体録音しつつ、4K映像信号とともにパススルー出力をしてモニターレコーダーで記録できるので、撮影現場でモニタリングしながら映像とマルチオーディオを同時収録できる。

    HDMIに送る音声を割り当てる

    今回は、1–2chをTHRU(スルー)としてFX3のカメラ音声、3–4chにFR-AV4のCH1–2(CH1はMKH416、CH2は空)、5–6chにFR-AV4のCH3–4(空)、7–8chにFR-AV4のMASTERステレオミックスを設定。NINJA TXでは1–2chにFX3の音声が、3chにMKH416が、7–8chにFR-AV4のMASTER音声が収録される。4chと5–6chは、対応する入力を使っていないので今回は無音となる。こうして各音声を独立したチャンネルとして残しておけば、ポストプロダクションでカメラ音、ガンマイク、各入力を個別に調整できる。一方で、収録時のMASTERミックスに問題がなければ、7–8chのミックス音をそのまま使うこともできる。

    編集の自由度とスピードを両立できるのが、このルーティングの利点だ。

    覚えておくべきこと

    実際に使う際に注意したいのが、FR-AV4の細かな設定だ。

    今回の構成で、FR-AV4のHOME/MIXER画面でレベルを確認できるのは、CH1へ直接入力したMKH416だ。FX3からHDMI入力されたカメラ音声は、FR-AV4の入力メーターには表示されない(ただし、本体のMONITORボタンを押し、画面右側のHDMIからHDMI1–2を選択すれば、FX3の音声をヘッドホンで確認することはできる)。

    もうひとつ注意したいのがサンプリング周波数だ。TCマスターに設定した場合、カメラのサンプリングレートに依存する。FX3の場合は48kHzなので今回はメニューのREC SETTINGSで SAMPLING RATEを48kHzに設定した。サンプリング周波数が不一致の場合は、HDMI接続時に表示されるHDMIアイコンが赤色に点灯する。実際に使う際は、FX3の音声や映像がFR-AV4を介してNINJAに送られているかを確認しよう。

    FR-AV4の設定

    HDMIに送る音声を割り当てる画面。FR-AV4の液晶パネルを見ながら設定。

    HOME/MIXER画面。レベルメーターで確認できるのは、XLRに入力したガンマイクの音。

    サンプリングレートはFX3の仕様に合わせて48kHzに設定した。

    NINJA側の設定

    FR-AV4の割り当てをもとに、CH1–2(FX3)とCH3–4(3ch:MKH416、4ch:無音)、CH7-8(FR-AV4のステレオミックス)のRECアイコンを有効にする(有効にしないとメーターが振れていても収録されない)。これでマルチトラック音声を映像とともに収録することができる。

    スマホアプリで制御、確認が可能

    スマホアプリのTASCAM RECORDER CONNECTは、スマートフォンやタブレットから最大5台までの対応レコーダー(DR-10L Pro、FR-AV2、FR-AV4)をワイヤレスで同時に操作・管理できる。接続には別途、FR-AV4にAK-BT2、DR-10L ProにAK-BT1が必要。また、REC-LINK機能により、アプリに接続されたFR-AV4やDR-10L Proから録音を開始・停止すると、リンク設定されたすべてのレコーダーが連動して録音を開始・停止する。なお、レコーダーごとに連動の有効・無効を設定できる。

    まとめ

    映像制作、とりわけ少人数の現場では、「できるかどうか」より「安全にできるかどうか」で選択肢を諦めることがある。FR-AV4は、そうした「やりたいけれど、やらなかった音」を現実的な選択肢に戻してくれるレコーダーだ。効率化のためだけの機材ではない。効率化によって生まれた余裕を、表現に使える機材なのだと思う。

    欲しかったのは、レコーダー以上のレコーダー。使い終えた今、そのタイトルがいちばんしっくりきている。

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